ちひろは語る
俺は、LINEグループのヤクちゃんが苦手だった。(俺以外の奴も、苦手としている奴は多かった。)よく絡んでいたが、どうも話が合わない。だから話ずらかった。俺はヤクちゃんを避けるようになった。ヤクちゃんが話している時は浮上しないようにし、個チャでの会話も控えた。だが、あいつはしつこかった。
『最近グループに来ないけどどうしたの?』
『あまり話せてないね』
『時間合わないのかな?』
『グル通するんだけどちひろもしない?』
『ねぇ、今何してるの?』
少しずつエスカレートしてくるヤクちゃんに、俺はとうとうブチ切れた。
『あのさ、俺はお前が苦手なの。あまり話せてないじゃなくて話さないようにしてるの。俺は、お前を避けてんの。だからもう俺に関わんな。』
ヤクちゃんから返事が返ってくる事は無かった。
ブロ削するのが正しかったのかもしれない。でも俺は、ヤクちゃんに対して申し訳なさがあった。
ある日、ヤクちゃんからメッセージが届いていた。
『気づかなくてごめんなさい。きちんと会ってお話したいです。』
この他に、日時と場所が書かれてあった。
「気持ち悪い」
これを何気なくTLに載せてみた。(ヤクちゃんは非表示にしていたからバレない思った。)すると、予想外のコメントが次々と送られて来たのだ。
『何それ? 面白ぇ』
『会ってみろよ』
『もし可愛い女だったら紹介しろよなー』
口元が緩んだ。
『しゃーねーな。会ってやるよ』
どうせあいつだって本気なわけじゃないだろう。もしいたらすぐ逃げればいい。居なかったら近くのゲーセンで暇を潰そう。
……考えが甘かったと知るのは、もう少し先のことだった。
当日。俺は約束の場所へ20分も早く着いてしまった。仕方なく携帯をいじっていると、後から背中をつつかれた。
「あの、ちひろさんですか?」
どんな声だったかは覚えていない。だが、男ではなかった気がする。
「そうだけど……?!」
俺はその後気を失った。
「これが、俺の知っているヤクちゃんだ」




