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ちひろ復活
私達が廃墟へ戻ると、ゆずと麻那が身を寄せ合っていた。ゆずは涙を浮かべ、麻那はゆずの肩に手を置いている。
「戻ったよ」
私が言うと、ゆずは涙を拭いほっとした表情を見せた。
「由佳、雄輔!」
そしてちひろを見て、再び涙を浮かべた。
「ちひろ…… 無事で良かった」
「ありがとう」
ちひろは大きな目を細め、優しく笑った。
「あの、巧さんと奏さんは?」
麻那が首を傾げる。
「奏が転んでな。足を捻ったみたいなんだ。だから、遅れて来るだろう」
雄輔が説明する。
「そうなんですか」
そう言う麻那は暗く見えた。だか、すぐにいつもの様子に戻った。
ヤクちゃんの第一被害者であるちひろが無事加わり、場が少しだけ明るくなった気がした。
「おい!」
突然、大きな声が聞こえた。見ると、奏が息を切らして立っている。目は充血し、服には土と枯葉が付いていた。
「奏、大丈夫だったか?」
雄輔の問を無視し、奏はちひろの前に立つ。そして、整った顔を崩し叫んだ。
「兄さんが殺された。絶対ヤクちゃんだ。お前はそいつの事少しは知ってんだろ。何でもいいから教えろよ!!!」