へいわなむら
あけましておめでとうございます今年もよろしくお願いします!!
pixivのほうに今年の年賀状あげましたので是非
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その後、トントン拍子に話が決まり、いつの間にか俺がこの村、ラスエイルに住むのは確定事項になった。
マリアの話では、なんでも大きな事件があったらしくこの村には男手が足りないのだとか。
村の男たちの殆どは腕や足などに大きな怪我を負ってしまい、農作業に割く人員が足りないという話を聞いたので、
俺の謎能力を使って怪我の治療を行ったところ、尋常じゃない驚きとと共に村の一員に迎えられた。
村に来た時に立ち込めていたたくさんのシミはどうもこれが原因だったようで、全ての治療を終えたのちには村はスッカリ綺麗になっていた。
ここまでの経過から俺の謎能力についてまとめてみた。
どうやら怪我や病気の治療ができるらしく、
さらには、怪我人や病人のいるところが分かったりもするようだ。
俺の感覚的には、病気や怪我を治している、というよりは、在るべきモノを在るべき場所に戻している、という感覚なので
もしかするとこの能力はもう少し使い方に幅があるのかもしれない。
村の一員となって安定した食料の供給と安全な寝床を確保することができた俺は、村の農作業などを手伝う傍ら、
怪我人の治療や医者のようなことをしつつ、この世界の常識についてマリアから教えてもらっていた。
この世界の常識には驚かされっぱなしだったが、とりわけ驚いたのはグルの事である。
この世界には、[魔物]と分類される人間を害する生き物がいるそうなのだが、グル、フリグォンはその中でもとりわけ気性が荒く、
また高い身体能力を持つため特に危険視されているのだそうだ。
……あんなに人懐っこいのに。
そして、最大の朗報は魔法の存在である。
といっても、俺がイメージするような魔法――巨大な火の玉を出したり、雷を落としたり、といった魔法――はおとぎ話の中のみの
存在のようで、実際に用いられる魔法というのは、大気中に存在する仮想のエネルギー――マナというらしい――を体内に取り入れ、
操作することによって、身体能力を強化する身体活用術のような位置づけのようだ。
……やっぱり、俺の能力は魔法とかじゃなさそうだなあ。
俺がラスエイルに迎えられてから、はや2週間。
ようやく村の空気にも慣れてきた、そんなときに事件は起こったのだった。
「主様~」
と、良くわからない代名詞で俺を呼ぶのは、例の変態少女シロアムである。
病気の治療後、カッコつけながら去ったつもりの俺だったが、
結局この村に住むことになった今では、一緒にいることが多くなった。
「どうした、シロアム」
言葉を投げながら、声のした方へと振り向くと駆け寄ってきたシロアムがナチュラルに俺の腕に彼女の腕をからめた。
「~♪」
心なしか、頬をうっすらと桃色に染めたシロアムはやけに上機嫌だった。
「シロアム、今日は妙に上機嫌だなあ……」
見たままの感想を素直に口にすると、シロアムは嬉しそうな顔でこちらを見上げ口をひらいた。
「わかりますか、主様。実はこのシロアム、ただ今張形をいれながら歩いております…」
ぽっ、と頬を染めるシロアム。
「ああ、なるほど……」
って、え―――
えええ、それはまずい。
張形って、あの張形?
いや、ほかに何があるというのか……
まて、おちつけ、まだあわてるような時間じゃない
先ずは、実際に入っているのかどうかを冷静に確認するところから―――
シロアムのあんまりと言えばあんまりな発言に頭が真っ白になった俺を見たシロアムは嬉しそうに言った。
「冗談でございます主様。主様は変態の癖に、女性が絡むと途端に初心になるのですね」
うう……だって童貞だもの……。
「そんなところがとてもそそります……ボソッ」
そう呟いて、口元の涎を拭うジェスチャーをするシロアム。
見なかったことにした。
えらい少女を助けちゃったなあ……
と、少し後悔をしながら歩く昼下がり。
のどかな空気を割いて一つの怒号が響き渡った。
「魔物だァッ!!魔物がでたぞっ!!血濡れ狼だああああっ!!」