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一人語り  作者: 二階堂曉
21/22

「魔導人形は明日を目指す」

活気ある交易所でオークションが開かれていた。客層は成金商人、貴族、裏社会のフィクサーなど幅広く参加していた。


「ただいまの商品、ハーフエルフの少女推定58歳を購入されたのは14番のお客様になります!」14番の札を持った小太りの商人が舌舐めずりをしながら笑みを浮かべる。彼の視線の先には全裸にされ鎖に繋がれた耳の長い緑色の髪をした可憐な少女が居た。少女の目は虚ろで目元は泣き腫らした跡が残っていた。


落札されると少女は黒いスーツを着た二人組の男に担がれ連れて行かれた。


「続きましては世界で最も希少な種族にして今回の目玉商品」司会の男がためにためて言い放つ。


「世にも奇妙な魔導生物、魔導人形(マジック・ドール)です!」男が言うと等身大のガラスケースが運び込まれる。中には純白のゴシックロリータのドレスを着た美しい少女が座っていた。髪は艷やかな黒髪で瞳の色は左右で紅と灰色と違い、肌も人間の物と変わらない質感を見せていた。


「ただの人間じゃないのか?」「魔導人形の証拠を見せろ!」客達が騒ぎ始める。


「紳士淑女の皆様お静かに、今から彼女が魔導人形だと証明してみせましょう」司会がケースの少女に何か伝える、すると少女の顔が強張りドレスの胸元を開ける。


少女の胸部には丸い機械が埋め込まれていた。その機械は少女が呼吸をする度に複雑な歯車の機構が動き蒸気を上げていた。


「何だあれは、本物か?」「あれ、どうなっているんだ?あの機械が心臓なのか?」さっきまで騒ぎを起こしていた客達も目の前の奇怪な少女の姿を見て静まり変える。


「皆様納得頂けたでしょうか?それではスタートは1000から始まります。」司会が競りを始めると一斉に札が上がる。


「1500!」「2000!」「5000!」値段がドンドン吊り上がっていく。


「本当に良いのですか?次入荷されるのは何時になるか分からない程の商品ですよ!」司会が盛り上げる中客達も白熱する。


「5億出そう」桁違いの額が飛び出し周りの客達がざわめく。「5億だと!?」「正気か!?」客達の視線の先には黒いスーツを着た中性的な少年が居た。


「君が5億だすだって?」「冗談は止せよ小僧!」客達が一斉に嘲笑する。それでも少年は動じず真っ直ぐに少女の元へと歩いて行く。


「迎えに来たよ、エリアーデ」少年が呟くとさっきまで怯えていた少女が邪悪な笑みを浮かべる。


「遅えじゃねえかよ、危うく売り飛ばされる所だったぜ」エリアーデは立ち上がると手足に架せられた鎖を引き千切る。そして特殊ガラスで守られたケースを殴りつける。ケースのガラスが飛び散り客達に降り注ぐ。


「な、何故だ!防御魔法を3重に練り込んだ特別製何だぞ!」司会の男が慌てふためく。


「よっと、こんな動きづれえ服脱いでいいか?」少女が顔を歪めながら言い放つ。


「駄目だ、淑女たるもの常に恥じらいを持たないと」


エリアーデがウンザリした顔をしながら長いスカートを引き裂く。「これなら問題ねえだろ?」陶器の様に白い足を露わにして少年に笑い掛ける。


「全く君って奴は」少年は呆れた顔で首を振る。


「何だ!何故出てきているんだ!」「直ぐに捕まえろ!今ならそのまま連れされるぞ!」何人かの客達が興奮気味に近づいてくる。


「囲まれているよエリアーデ?」


「お前がチンタラしてるからだろう?まあ獲物の方から来てくれるのは好都合だけどな」二人は背中合わせになると目の前から来る者達と対峙する。


「ルベン使うか?」エリアーデが手枷から鎖を千切って渡す。「有り難く使わせてもらうよ」ルベンは鎖を受け取ると鞭の様にしならせ目の前の男の胴を薙ぎ払う。


それを合図にしてエリアーデも飛びかかる、手枷の金属で相手の顔を殴る。殴られた男の顔は下顎が無くなり盛大に血を吹き出す。そして崩れ落ちる男の身体を掴むと観客席に投げ込む。途端に観客席から阿鼻叫喚が起き一斉に出口へと走って行く、だが扉が開かずますます悲鳴が起きる。


「逃げられないですよ?皆さんここで死ぬんですから」


見ると血と肉片のベットリと着いた鎖をジャラジャラと音を立てながらルベンが歩いて来る。


「豚共がお前等は俺達の獲物何だよ!せいぜい神様にこれまでの悪行を懺悔するんだな!ギャハハハハ!」純白のドレスを真っ赤に染め上げたエリアーデが手に持っていた司会の首を客の群れに投げつける。首が当たった瞬間、パン!と言う破裂音がなり周囲の客達の身体が爆ぜる。


「それじゃあ皆さん、来世でお会いしましょう。」ルベンが冷たい笑みを浮かべた後鎖を振り抜いていく。鎖は横一線に薙ぎ払われ当落線上に居た人間の身体をバラバラにしていく。


「随分と派手に暴れてるな」舞台の方から声が聞こえた。見るとそこには紅いマントを羽織った軍人風の男が立っていた。


「全く俺が育てた兵隊は誰も役に立たねえな」男は足下に転がる黒服の男の頭を踏み潰す。


「あんた、他の雑魚よりは楽しめそうだな」エリアーデが客の頭を握り潰しながら嬉々として言う。


「エリアーデ、あの御人は中々の手練れの様ですよ。身体から私達と同じ臭いがしますからね」


ルベンも鎖を振り回し残りの客を始末した後向き直す。


「そんなおっかねえ顔で見るなよ?俺は金で雇われただけの哀れなおっさんだぜ?見逃してくれよ」男が手を挙げ降参のポーズを取る。


「ああ言ってるぜ、どうする?」エリアーデが間合いを取りながらルベンの指示を待つ。


「目を見れば分かる、彼は嘘をついている」ルベンが冷たい表情で鎖を腕に巻く。


「バレちまったか、やっぱり同業者は欺けないな」男が深く溜息をつく、するとそれを合図にしたようにエリアーデが客席の椅子を引き千切り男に投げつける。


男は横っ飛びに避けエリアーデの元へと近付く。


「私を忘れないでくださいよ」男の脇をルベンが殴る。


「惜しかったな坊や、いや、失礼したなお嬢ちゃん」


男がルベンの腕を引き寄せそのままの勢いに乗せて殴り飛ばす。ルベンの身体がとんで行くのを見た後横から殴りかかるエリアーデの拳打を躱す。


「ルベン!生きてるか!?」エリアーデが男と距離を取り言う。


「肋骨を数本やられましたが平気です」ルベンが血を吐きながら上着を脱ぐ。


「そっちの方が似合うぜお嬢ちゃん、どうだい?今夜3人で俺の部屋で楽しまないか?」男が手を広げながら軽口を叩く。


「てめえは右手とよろしくやってろよ!」エリアーデが再び突撃する。蹴り、拳打、足払い、様々なバリエーションを織り交ぜながら男を攻撃するが男は涼しい顔で全てを受け流す。


「お嬢ちゃん、センスは認めるが動きがバラバラだぜ?俺が手取り足取り教えようか?」男がエリアーデの拳打を右手で受け流しガラ空きになった腹部に掌底を放つ。


エリアーデの身体がくの字に曲がった瞬間、男の正面に鞭の様にしなった鎖が横一線に跳んでくる。


男は咄嗟に右手で庇うが触れた瞬間、バキバキと骨が軋み肉が爆ぜる。そして男の顔面を削る。


「言った筈ですよ私を忘れないでくださいと」


男の身体がよろめく。


「ゲホ、ガハ、殺ったかルベン?」エリアーデが体勢を立て直しながら言う。


「こいつは効いたぜ、せっかくの2枚目が台無しになっちまったぜ」男が肉が爆ぜた顔を歪めながら笑みを浮かべる。


「それならもっと良い男にしてやるよ」エリアーデがそう言うと胸に着いた機械を触る、すると機械が真っ赤に輝き蒸気を上げる。


「エリアーデ、オーバーヒートする前に決着をつけるんですよ!」ルベンが叫ぶとエリアーデと男が向かい合う。


「死ぬまでやり合おうぜ?」


「レディーの誘いには乗らないとな」


二人はお互い笑い声を上げると再び殴りあう。


男はさっきの様に受け流しの構えに入る、だがエリアーデの拳打はさっきまでとは比べ物にならない程上がっていた。受け流す為に触れるよりも先にエリアーデの拳が男の顔面を捉える。


右、左、上、下、斜め、腹、首、正面、エリアーデの拳打が当たる度に男の顔が焼けていく。


「あばよ、名も知らねえ同業者さん!」


エリアーデの拳が男の顔面を貫く、男の身体が燃え上がり決着が着いた。


エリアーデが余韻に浸っているとイキナリ水を頭からかけられる。ジュウーと音がしてエリアーデの身体から水蒸気が上がる。


「気持ち良いなぁ〜、ありがとうルベン」エリアーデが無邪気な笑顔で言う。


「君は相変わらず無茶だね、まあそこが君の長所何だけど」ルベンが脱ぎ捨てた上着をエリアーデに被せる。


「やっぱり着ないと駄目か?二人っきりの時は良いって言ってたじゃねえかよ」エリアーデが不満げに言う。


「駄目です、ドレスが燃え尽きて裸の状態で彷徨(うろつ)くなんて淑女にあるまじき失態です。それに貴方のありのままの姿を私以外に見せたくありません」ルベンが頬を染めながら顔をそらす。


「分かったよ、それよりも囚われている子達を助けなくちゃだろう?」エリアーデがルベンの手を引く。


「そうでしたね、今日も無事に終わりそうですし明日を目指して生きて行きましょうか」


二人は静まり帰った劇場を後にする。


「魔導人形は明日を目指す」完

魔導人形と呼ばれる種族は身体に魔導石を心臓部に埋め込んだ人間の事を指します。彼らは見た目は人間と変わらないですが胸にアンティーク時計の様な機構の機械が露出しています。この種族は普通の人間の身体とは異なり鋼鉄の硬さと獣の様な俊敏さを持ちます。


そして切り札として胸に着いた機械を回すと出力が上がり身体能力が爆発的に上がります。そのデメリットととして体温が数百度まで上がるので1分程しか使えません。


使用後は速やかに身体を冷却する必要があります。


もし1分を超えてしまうと身体が燃え上がりコアがオーバーヒートし周囲を巻き込み自爆します。


なので魔導人形達は明日を生き抜くのも難しい滅びゆく種族になります。

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