「マーダーズ•エンゲージ」
初めて人を殺したのは11歳の凍えるような寒い日、俺は長年虐待を行ってきた母親の男を殺した。
その日俺はいつもの様に母親に言われベランダに出されていた。外は大雪の中で俺は凍えて死にそうだった、家の中では母親と男がいつもの様に仲良くしていたがいきなり怒鳴り声が聞こえ二人共言い争いになっていた。
そして男は母親に手を上げた俺はそれを見て不思議と怒りが湧いてきた、いつも酷い扱いを受けているとは言え俺にとって家族と呼べるのは母親だけだった。
俺は駄目元でベランダの扉を横にスライドさせたするといつも鍵が掛けられ開かない筈の扉が今日は開いた。
俺は入っていくなり驚いた顔をした男に飛び付き噛み付いた、男は俺を引き離すと思い切り蹴飛ばした。
俺は台所に吹き飛ばされ胃の中の物を全て床にぶち撒けた。
男は怒り狂い母親を更に怒鳴り付け殴る、俺は咄嗟に置いてあった包丁を取り母親を殴るのに夢中な男の脇腹を刺した。
男は悶絶して俺を怒りに満ちた目で見るが俺は構わず何度も刺した、何度も、何度も、何度も男が完全に息絶えるまで俺は無我夢中で刺した。
ふと、我に返ると真っ赤に染まった畳の上でズタズタになった肉塊とそれを見て涙を流しながら激昂する母親が居た。
「まあ、これが俺の最初の殺人だよお陰で今じゃあ立派なシリアル・キラーだけどな」
「なるほど分かりました、話も終わりましたし私から降りてくれませんか?」
ある人気の無い雑居ビルの一室で一人の少年が黒いスーツの女を床に押さえ付けていた。
少年の手にはナイフが握られており今まさに女に手をかけようとしていた。
「駄目だよだってお姉さん俺を警察に突き出すだろ?だから俺はいつも顔を見られたら必ず殺すんだ」
少年は無邪気な笑顔で言った。
「本当に可愛い子ねでもその心配は無いわよ私は貴方をスカウトしに来たの」女が少年に答える。
「スカウト?なにそれ?」
「興味がありそうで良かったはひとまずどいてくれる?」
少年は女から離れると女は立ち上がりポケットから名刺を差し出す。
「マーダーズ•フィルム•ファクトリー?何これ?」少年は頭をかしげる。
「私が所属している会社でね、簡単に言うと映画の演者として貴方をスカウトしにきたの。」
「映画の演者?俺俳優志望じゃないんだけど」少年は気怠げに答える。
「私達の会社は特殊でね演者は全員殺人鬼に出てもらうんだ」
「殺人鬼?スナッフフィルムでも撮るのか?」
少年が聞く。
「まあ概ねそうだねだけど私達のはあんな低俗なものじゃなく、一つの作品として撮るんだ」女がそう言った後自分達の会社の作品を熱弁した。
「分かったよそれで俺は何をすればいいの?」
「貴方は好きに殺しをしてもらえればいいわ」
女は素っ気なく言った。
「そんな事で良いの?」
「ええ、監督の方針でねありのままの姿を撮りたいらしいの」
「それで?報酬はあるの?」俺は一番大事な事を聞いた。
「あるよ、報酬は自由だ君の望む物何でも用意するよ」女は嬉々として答える。
「分かったよ、それじゃあ俺は自由が欲しいもしそれが叶うなら協力するよ」
俺が答えると女はフッと笑いながら手を差し伸べる。
「契約成立だね今日から私が君のマネージャーの竜胆若菜だ」俺はその手を握り返して言った。
「ツカサ、姓は無い唯のツカサだ」そう言って俺はマーダーズ•フィルム•ファクトリーと契約をかわした。
一ヶ月後俺は廃墟の街にに送られていた。
その街は東南アジアの国の内戦により廃墟となった街だった、今回この街に送られるのは監督の新作の映画の撮影の為だった。
街に送られる数日前俺はマネージャーの竜胆に呼び出されていた。
待ち合わせの場所は会社の所有するビルだった俺はビルの受け付けの女に会社のライセンスカードを見せるとエレベーターに案内された。
受け付けがエレベーターの操作盤を弄るとエレベーターは存在しない筈の地下5階へと降りていった。
エレベーターの扉が開くと別の案内人に引き継がれ俺はその案内人と共に地下の廊下を歩いて行った。
「ここで皆様お待ちになっております」エレベーターを降りて5分後俺は一つの扉の前に案内された。
「どうも」俺は案内人に礼を言うと扉を開けた。
「やあ、迷わず来れたかい?」扉を開けると広い広間があり俺が入って来ると先に来ていた者達が一斉に俺を見てきた。皆俺と同じ雰囲気を纏った連中で一目で同業者だと分かった。
そして俺を見つけた竜胆が入り口まで迎えに来てくれていた。
「子供扱いするなよ、ここで何するんだ?」
「監督から新作映画の説明よ」
竜胆に促され俺は広間の奥にある舞台を見たするとそこにはまだ年若い女性が居た。
「あれが監督?随分若いしそれに女なのか?」俺が竜胆に耳打ちする。
「もしかして気難しそうな爺さんでも想像していたかい?あの方こそが我が社の社長兼、監督の梓さんだよ」竜胆の説明を受け俺は静かに舞台上の彼女を見る、そして監督である梓が挨拶をする。
「御機嫌よう私が諸君等の雇い主兼監督の梓だ以後宜しく」梓が舞台上で挨拶をすると一斉に広間がバカ騒ぎになる。
「アンタが俺達の雇い主だぁ?笑わせるなよお嬢ちゃん!」
「可愛い顔してるな、俺のコレクションにならないか?」
「ガキは家に帰りな!」
口々に周りの殺人鬼達が馬鹿にした様な言葉を投げかけるだが監督は笑顔を絶やさず大人しく聞いていた。
「いいのかよ?言われっぱなしだぜ?」俺は隣の竜胆に言ったが。
「大丈夫だよ見ててご覧」竜胆は涼し気な顔で言った。
「お嬢ちゃん、俺我慢出来ねえや、殺らせろよ!」
物騒な言葉を吐きながら大柄な男が舞台に上がる。
「君は確かレッド•ネック•ビリーだね?近くで見ると大きいね」
「俺を知ってんのかい?そいつは良い丁度暖かい首巻きが欲しかったんだよ、お前で作らせて貰うぜ!」
男がそう言いながら向かって行く。
「レッド•ネック•ビリー?誰だそれ?」
「知らないのかい?アメリカミシガン州史上最悪の殺人鬼と呼ばれた男だよ?」竜胆はそう言って事件の詳細を話す。
レッド•ネック•ビリーアメリカのミシガン州の都市ケープ•ファイアーの殺人鬼として名を馳せる、彼の被害者は若い女性が多く彼の被害者は分かっているだけで40人程だと言う。被害者の殺され方は多岐に渡るが一つだけ共通する事があり被害者は全員大腸と小腸が引き抜かれて持ち去られていたのだ。
警察は全力で手掛かりを捜しそしてある男を逮捕したその男の名はビリー•ローゼフ元軍人で数々の戦場に行った経験のある男だった、彼は元恋人へのストーカーと暴行の容疑で逮捕され家も家宅捜索が行われたそして彼の地下からおぞましい物が見つかる。
彼の家の地下には腐敗した人間の腸が大量に見つかりDNA検査の結果全て殺害された女性達と一致したのだ。
彼は取り調べ室で地下室の話をすると嬉々として語った。
「よく出来てるだろ?特にレイチェルの大腸はよく伸びて俺の首によく合うんだよ次はお前の恋人か嫁さんで作ってやるぜ?」その言葉を聞き取り調べの刑事達は絶句したと言う。その後彼は精神異常として罪に問われず精神病棟入りした。その余りにも残忍な犯行と犯人であるビリーを恐れ世間では彼の事ををレッド•ネック•ビリーと呼んだと言う。
「そんなヤバい奴もスカウトされたのかよ?」
「監督の方針でね残虐であればある程良いんだってさ」竜胆は呆れ顔で言った。
「残念だな君は良い演者になれるのに」監督がやれやれと呟く。
「俺はそんな下らねえ事に興味はねえんだよ!俺はただお前見たいなビッチの腸で首飾りを作れれば良いんだよ!」ビリーが叫び監督に掴みかかる。
次の瞬間ビリーの手は監督に届く前に宙を舞った。
「痛え!くそったれ!何だよ!」
「本当に残念だ君見たいな大根役者にはご退場願うよ」監督が手を上に上げえるとビリーの身体が真っ二つに裂け辺りに血の雨が降り注ぐ。
「テグスかワイヤーか?」
「良く見えたね、君以外にも何人か気付いてるみたいだけど」竜胆が数人を見ながら言う。
周りの殺人鬼達は訳も分からず騒ぎ出したが。
「これで分かっかな?私に手を出すのがどれ程無謀か」監督は全身血に染まったスーツのまま説明を行う。
「それでは説明を始めます、君達は東南アジアのゴーストタウンに送ります、そこで殺し合いをしてもらいます」監督は笑顔で恐ろしい事を言う。
「勿論殺し方は自由君達のありのままを見せて欲しいんだ、期限は3日間生きて帰って来たら望んだ報酬を払うよ何か質問はあるかな?」監督が言うと一人手を上げる。
「じゃあそこの君、確かレイチェル•バレンタインだったね」監督に促され一人の少女が質問する。
「望んだ報酬って言ったわよね?じゃあ貴方もそれに当てはまるの?」レイチェルの質問に場が静まり変える。
「勿論さ好きにして良いよ殺しても良いし、抱いても良いよ全部は君の望むがままさ」
「分かった楽しみにしてるよ」監督からの返答を受けレイチェルは広間の隅に戻る。
「他には無さそうだね因みに殺しの獲物は現地調達だ、出発は3日後それじゃあ皆楽しんでね」監督が舞台から降りて行くするとふと思い出したように舞台へと戻る。
「一番大事な事を言い忘れていたよ、今回の映画のタイトルは「マーダーズ•エンゲージ」殺人鬼達が出会った瞬間に殺し合うコンセプトにピッタリでしょ?それじゃあ当日に会おう」監督はそう言って舞台を後にした。
そして現在俺は街の近くの木にぶら下がっていた。
街への入り方は輸送機からのパラシュート降下だった、最初の一人が蹴落とされ10分置きに一人また一人と落とされていき、俺の番が来て落とされたパラシュートの開き方は前に竜胆に教わったていたので問題無かっのだが落ちた場所が悪く俺は木に引っ掛かり身動きが取れないでいた。
「しかしどうしようかなこの状況」俺が1人嘆いていると耳に付けられたインカムから声が聞こえた。
「ツカサ生きてる?まだ死んでない?」竜胆が気の抜けた声で聞いてくる。
「生きてるよ、まあ木に引っ掛かって身動き取れないけどな」俺が返すと竜胆が笑い声を上げる。
「情けないな君は、腰のナイフで切ったら良いだろう?」俺はその言葉を聞き腰に手を当てるすると腰のベルトにナイフが付けられていた。
俺はそれを取り出すとパラシュートの紐を切り下に落ちた。
「凄い音がしたけど無事かい?」
「ああ、何とかな」俺は立ち上がると周囲を確認する周りは木に囲まれており微かだが銃声の様な物が聞こえた。
「なあ、もしかしてこの場所って俺達以外にも居るのか?」
「良く気付いたね実はその街は地元のゲリラの駐屯地になってるんだよ」
「はあ!?ふざけんなよ!たかだかナイフ一本でゲリラとやりあえって言うのかよ?」
「残念だけど監督のリクエストでね戦場にこそ狂気が溢れてる、だからこそ良い絵が取れるらしくてね」
竜胆が淡々と答える。
「意味分かんねえよ!お前らやっぱイカれてんだろ?」
「そこは否定しないよ、それじゃあ目的を伝えるねやる事は簡単目に付くもの全部殺すんだ、まあ駄目元で誰かと組んでもいいとりあえず3日間生き残るんだ。報酬は生き残った後に支払われるよそれじゃあね」
竜胆は説明を終えると通信を切った。
俺は竜胆との会話を終えた後とりあえず川を探す事にした、川の下流を辿れば街が見えてくるそう思いジャングルの中を進んだ。
「どうやら街の方はパーティーの様だな」川を見つけ下流を辿って行くと街が見え出したのだが街は黒煙が上がっており仕切りに銃声が鳴り響いていた。
俺は用心しつつ下流を降りていって行った。
下流を下り街の下水施設の様な場所に着き俺は街に入った銃声は近くなり今度は悲鳴も木霊していた。
「こいつは酷えな、ゲロ吐きそうだ」街に入り通りに出ると軍服を着たゲリラらしき人間の死体が転がっていた、その状態は酷く背中から背骨が引き出されており近くの壁に打ち付けられていた。そしてその死体が軽く10体程放置されていた。
「君も殺人鬼かい?酷いよなこんな事するなんて」物陰から声がする俺は咄嗟に振り返るとその声の主の姿を見て笑った。
「何だよそれ?正義のヒーロー気取りか?」俺の目の前に現れた男は全裸であり全身昔の戦隊ヒーローのリーダーの様に真っ赤な色で染められていた。
「似合うかい?昔から憧れていたんだよ」男は俺に話かけながら距離を詰める。
「似合ってるよ!最高の死に装束だな」
「それはありがとう、、、」
俺達は軽く会話を交わすとお互いの獲物で切り付けあった。
「今のを躱すなんてやっぱりゲリラと殺るより君の様な同業者と殺り合う方が楽しいね!」男は手に持った武器を振りかざしてくる。
「良く出来てるなあんたのお手製かい?」
ナイフで受け止めながら相手の武器を褒めた。
「ありがとう!大変だったんだよ?良いサイズが無くてさ!」
男の持つ武器は人間の背骨を鋭利に研いだサーベルもどきだった、一見脆そうに見えるがリーチの長さと鋭利さでは俺のナイフよりも使い勝手が良さそうだった。
「始めて僕の作品を褒めてくれて嬉しいよ、僕はルシオ•フォン君は?」
「ツカサ、唯のツカサだ姓は無い」俺達は斬り合いながら挨拶を交わした。
斬り合うこと数分俺はルシオの武器に苦戦していた。リーチが長くそれに一番手こずったのは。
「これで終わりだ!」ルシオが横薙ぎに剣を振る俺は咄嗟に後ろに飛んで避けたのだが紙一重の瞬間ルシオの剣が鞭の様にしなり俺の腹を掠めた。
「そんな切り札があるのかよ」見ると剣の刀身がバラバラになり鞭の様にしなっていた。
「ワイヤーを通してギミックを付けたのさでもこれすら避けるなんて君は本当に素晴らしいな!」ルシオが嬉々として剣を鞭の様にしならせ斬りつけていく俺は必死に避けたが全てを防げず傷を負った、そして俺はルシオに追い詰められていた。
「ここまでの様だね、何か言い残す事はあるかい?」ルシオが俺を見下ろしながら言った。
「ありがとうよ楽しかったぜ」俺は笑みを浮かべてルシオに言った。
「こちらこそ楽しかったよ友よ!」ルシオが大きく振りかぶり横薙ぎに斬ろうとした瞬間、俺は口に含んだ者をルシオに噴き掛けた。
「グア!目が!目が!」ルシオがその場を転げ回る。
「ありがとうよこんなに近付いてくれてよ!」
俺はのたうち周るルシオを押さえつけ馬乗りになりそしてナイフで滅多刺しにした。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も!ルシオの心臓、腹、首、脇、人間の全ての急所に何度も突き刺した。気付くと俺の周りの景色は紅く染まり足元にはルシオだった物が転がっていた。
「またやり過ぎちまったな」俺はルシオから降りると近くの水桶を見たそこには昔始めて人を殺した俺の姿があった。
「切り札はお前だけじゃないんだぜ」俺は懐からある物を出した。それはジャングルを彷徨う中で捕まえた毒虫や毒キノコ、毒ガエルをすり潰して作ったお手製の毒だった。
これを口の中に仕込みルシオの顔に吹きかけたのだ。
「我ながらイカれた戦法だけど人はいつか死ぬからな」俺はそう言って顔を注いでいると。
「ツカサ、私ださっきの殺しは見事だったぞ!監督が生きて帰れたら特別ボーナスを出すらしい」
「お前らやっぱ見てんのか?」俺は周囲を確認しながら言った。
「勿論さそれでは引き続き頼んだぞ?」通信が切られ俺は顔を上げる。
「これが後3日間か、疲れるな」俺はルシオの獲物を手に取りながら言った。
「こいつは貰っていくぜ名前は、、、まあいいかじゃあなヒーロー」俺は一人呟きながら銃声と悲鳴、そして狂気に満ちた雄叫びが響く撮影場所へと歩いていった。
「マーダーズ•エンゲージ」 完
次回 終末世界に幸あれ




