「ジョン•ウェインによろしく」
2006年イラク、バグダッド、アメリカがイラクに大量破壊兵器があると主張し始めたイラク戦争から数年が経った。この国の大統領だったフセインも捕まり事実上この国はアメリカの傀儡になっていた。
「マイケル、標的が見えるか?」
「ああ、軽装の男3名建物の上から何か指示を送っているな、不味いぞ一人携帯電話を取出した!発砲許可を求める!」
「まて!様子見だ、まだアルファ隊の姿は視認してい無い筈だ」
「発砲許可を出してくれ去年も様子見で敵を見逃して、3人死んだ判断を誤らないでくれ」
「分かった発砲許可を出すだが確実に仕留めろ」
「了解、主よ我等をお守り下さい」俺は無線を切ると500メートル先の携帯電話を持った標的に向けて発砲した。
弾丸は男の心臓を貫いた、辺りに銃声が響き男達が騒ぎ出す俺は素早く薬莢を排出すると二人目に発砲する。今度は胸に命中する。
そして最後の男に照準を合わせて発砲、頭に命中し標的が沈黙した。
「こちらマイケル少尉、標的3名排除、他脅威無し進め」俺は無線を付けて連絡する。
「よくやった少尉、君のお陰で無事に通れる基地に帰投したら一杯奢らせてくれ!」
「ああ、楽しみだなオーバー」
俺は直ぐに薬莢を回収しライフルの三脚を片付け移動した。この国はイラク軍が敗れてから俺らアメリカ軍が治安維持を行っている。
今回もゲリラ化したイラク軍の残党の鎮圧の為に俺達が駆り出されていた。俺はチームが安全に通れる様後方から支援する狙撃兵だった。
今回も無事仲間達を基地に帰れる様に援護が出来た。
「マイケルお手柄だったな!今日も誰も負傷すること無く無事に帰れたよ」
「気にするなよサンチェス、それが俺の仕事だからな」基地のバーで俺は同僚のサンチェスと飲んでいた。
「そう言えばブラボー隊が例の奴に襲撃されたらしいぞ」サンチェスがグラスを煽りながら言った。
「ジョン•ウェインか?」俺がサンチェスに聞く。
「ああそうだ、今回も指揮官のコナーが撃たれたらしい、まああいつは運良く防弾チョッキを着ていたから無事らしいがな」サンチェスが笑いながら言った。
最近指揮官ばかりを狙ったスナイパーの噂が出回っていた。最初に遭遇したのは先遣隊で派遣された海兵隊員だった。そいつは暗闇の中から的確に命中させ、指揮官一人と3人の隊員を殺したのだ。
生き残りの隊員に聞くとそのスナイパーはカウボーイハットを被った男だったと言う。そこから俺達の間ではマカロニウェスタンの名優の名から取りジョン•ウェインと呼んでいた。
「それとお前にちょっとしたお土産だ」サンチェスはそう言うとポケットから紙切れを出した。
「何だこれ?ポスターか?」その紙にはライフルの絵が描かれており、アラビア語で何か文書が添えられていた。
「これはお尋ね者のポスターだよ」
「お尋ね者?誰だよ?」
「お前の事だよ!奴等お前に懸賞金を掛けてるんだよ」サンチェスが高笑いする。
「おい、おい笑えねよ俺の首に懸賞金だなんてゾッとするな」
「それだけお前は奴等に恐れられてるんだよ、じゃあな俺はこれくらいでお暇するぜ」サンチェスは立ち上がり宿舎へと帰って行く。
「悪趣味なもん寄越しやがって」俺はビールを飲み干すと宿舎へと戻った。
宿舎に戻ると俺は壁にマーカーで線を描いた。
「これでここに来て114人目か」俺は壁一杯に引かれた線を眺めながら言った。
本国のスナイパーズ•スクールを卒業して5年俺はイラクに派遣されてから殺した敵の数を記録していた。
端から見ればイカれているかも知れないが俺にとっては大事な儀式だった、俺の手で人の命が奪われていくその事実を風化させぬ様に俺は自分への戒めと覚悟として書き続けている。
マーカーを机に置くと置かれていた写真立てに目が行った。
そこには俺のスナイパーズ•スクール時代からの親友であるアリソンと俺が写って居た。
「お前が行方不明になってから2年か」俺は写真立てを持ちながら昔の事を思い出した。
アリソンとはスクールで知り合った、俺はフェニックスの出で、アリソンはルイジアナの出だった。
俺とアリソンは馬が合う奴同士であり良く一緒につるんでいた、スクールの卒業後も俺達は一緒にイラクへと派遣された、部隊は違ったがお互い任務に従事し基地へ帰投すると良く一緒にバーで夜を明かした。
そんなアリソンは2年前のバグダッド攻略戦の最中行方が分からなくなった、俺はあいつが生きていると信じており今でも任務中や基地に帰ってからも二人でよく使っていた通信チャンネルを解放していた。
だがここ2年返答が帰って来ることは無かった。
「相棒お前は本当に何処に行っちまったんだよ」俺は静かに写真立てを置くと眠りに着いた。
「マイケル、敵影は見えるか?」数日後俺はバグダッド近辺のゲリラの鎮圧に出ていた。
「敵影無し進んでも大丈夫だ」
俺はスコープ越しに周囲を探索して言った。
「よし進め!地雷や奇襲に気を付けろ」分隊長のサンチェスの指示で部隊が行軍を再開する。
「マイケル、今日も感謝するお前のお陰で俺達は今日も安全に進める。」
「なあにこれが俺の仕事さ、帰ったらまた飲みに行こうぜ」
「ああ良いぜ、とっておきのボトルがあってなそれを、、、」サンチェスがそう言い掛けた瞬間辺りに銃声が鳴り響く。
俺は直ぐに部隊をスコープで見るとサンチェスの身体が崩れ落ちるのを見た。
「サンチェス!サンチェス!クソ!返事をしろ!」
俺は必死に呼び掛けたが返事は無かった、だがその代わり懐かしい声が流れて来た。
「久しぶりだな相棒、俺を覚えているか?」俺は直ぐに無線を取って応答する。
「アリソンか?生きていたのか?」俺は震えた声で応答する。
「ああ、生きて居るぜ久しぶりに旧友に会えたんで連絡したのさ」
「お前がサンチェスを撃ったのか?」
「そうだ、挨拶代わりにな」俺はその返答を聞き怒りを込めていった。
「何故だ!?仲間だろ?それにお前なんで生きて居るのに帰って来なかった!」俺はアリソンを問い詰める。
「俺にはやらなくてはいけない事が出来たのさ」
「それがかつての仲間を撃つことか?」俺はアリソンに聞いた。
「ああ、俺はお前達をこの国から追い出すその為なら何だってするさ」
「まさか、お前が最近指揮官を殺してまわってるジョン•ウェインか?」
「そんな呼び名が付けられているのか?光栄だな」
アリソンは声を上げて笑う。
「今日はここで消えるよ、次会う時は殺してやるよ」
その言葉を最後に通信が切れた。
基地に帰りサンチェスは直ぐに病院に搬送された命は助かったが首を撃たれており半身不随になるとの事だった。
「サンチェス、仇は俺が取る必ずアリソンを殺す」俺は昏睡状態のサンチェスに誓った。
1週間後、俺は偵察任務で単身バグダッドに潜入していた。
「今日も現れないか」サンチェスが撃たれた翌日から俺は偵察任務を志願し一人奴を待ち続けていた、だが中々現れず早くも1週間が過ぎていた。
「そろそろ基地に帰投する期限だな」俺が一人で呟くと懐かしい通信チャンネルを傍受した。
俺は周波数を合わせると応答する。
「アリソンか?今この街にいるのか?」すると無線から返答が帰ってくる。
「また会ったな相棒次に会ったら殺すと言った筈だぞ?」
「その前にお前がこの2年何をしていたか聞いてもいいか?」俺の言葉にアリソンが少し沈黙した後笑い声が聞こえた。
「お前馬鹿か?今から殺し合いをするって時に呑気だな」アリソンは呆れた様子だったがそうだなと言った後話してくれた。
アリソンは2年前のバグダッド後略戦の時に敵の砲撃をくらい負傷した、アリソンは負傷した体で必死に仲間の元へと向かおとしたが傷が深く意識を失った。
次に目が覚めるとアリソンは地元の民間人に救われたと言う、彼等は言葉も分からないましてや自分達の土地を侵略しに来たアメリカ人のアリソンを救ってくれたのだ。
やがてアリソンは傷が回復し基地に帰ろうと思っていた、そして民間人に見送られながら去ろうとした際に突然の爆音と共にアリソンの身体は飛ばされた。
アリソンが目を覚ますと彼を手当てしてくれた民家は爆撃により崩壊し家族は吹き飛んでバラバラになっていた。
「俺はあの時からこの国からお前達アメリカ人を追い出すと決めた、何故俺達は罪の無い者達から奪わなければ行けないのか俺自身もその殺戮に手を貸していたと思うと狂いそうになるぜ」アリソンの独白を聞き俺は答えた。
「お前の気持ちはよく分かる、だがな今のお前は自分の罪を言い訳にして暴れてる酔っ払いと変わらねえ、だから相棒として俺はお前をここで止める。」
俺がそう答えるとアリソンは少し黙り、そして言った。
「分かったぜ相棒、お前を殺す、俺を殺せ!」
「ああ、殺してやるよ。それが俺からの最後の手向けだ」
俺はそう答えると無線を切った。
俺はスコープ越しに建物を見て回った、だがどの狙撃スポットにも奴の姿は無かった。
すると突然反射した光が見えた瞬間銃声が響いた。
間一髪弾は俺のこめかみを掠め着弾は免れた。
俺は直ぐに構え直したが姿は無かった。
次の一発でお互いの運命が決まる、俺は奴の思考を考えそしてある民家の屋根に照準を合わせた。
時間にして5分後その屋根の上にカウボーイ•ハットを被った男が現れた、俺は無線を付けてアリソンにメッセージを送った。
「じゃあな相棒、ジョン•ウェインによろしく!」
その言葉を聞き咄嗟にアリソンがこちらに銃口を向け、スコープが光った瞬間俺はその光目掛けて引き金を引いた。
「ターゲットダウン、これより帰投する」
俺はスコープ越しに崩れ落ちたアリソンを見ながら司令部へと報告した。
「敵は取ったぜサンチェス」
俺はそう言って薬莢を回収してその場を去った。
「ジョン•ウェインによろしく」完
次回 マーダーズ•エンゲージ




