五話「魔法学園に登校します!」⑤
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そしてチンプンカンプンな授業も終わり、マリアはお弁当片手に昼休みに繰り出していた。
結局、授業の事で手いっぱいでモフ丸たちの許可をもらうタイミングを見逃し今の時間……なれない勉強のせいで疲弊しきっていた彼女の足取りは重い。
「うーぬ」
彼女は悩んでいた、お昼をどこで食べるか悩んでいる訳ではなくちゃんと死亡フラグ回避に向けたアレコレを考えているようである。
「普通に落第したら悪役令嬢じゃなくてただの「お馬鹿令嬢」よね。あとサリー先輩とはゲームのシナリオを考えると仲良くなっちゃダメか……仲良くなれそうなだけに難しい」
振る舞い方に友人関係、悪役令嬢「マリア・シャンデラ」としての制約の多さにやりにくさを感じるマリアだった。
――ぐぎゅう
そんなことを考えていると彼女の腹の虫が暴れ出す。
「勉強しすぎてお腹空いちゃった。モフ丸たちとお昼にしよっと、そんで忘れずに職員室でモンスターを連れ歩く許可を……うん?」
そんな折りである。
渡り廊下の向こう側に見える裏庭で数名の一年生たちの姿が目に飛び込んでくる。
どうやら上級生らしき集団に取り囲まれているようだ。
「同級生と先輩たち?」
どことなく怯えている一年生たちの前に一際態度の大きい女子がずいっと現れる。
「何が起きたのかしら?」
野次馬メンタルを標準搭載している主婦系女子高生マリアは耳をすませる。
興味津々の彼女にどうやら気が付いていないようで態度のデカい女子先輩は大きな声で一年生を威圧していた。
「よくまぁ下級貴族風情がこの学校に入れたわね」
「こ、この学校は貴族や一般人分け隔て無く……」
「そんな世間体を気にした建前を信じているの、バカじゃない!?」
聞く耳を持たない女子先輩はがなり声を上げて威圧を続けていた。
(あ~あれが小耳に挟んだ上級貴族と下級貴族のいざこざか)
ゲーム中盤でクローズアップされる問題の一つでサリーが生徒会の一員として悩んでいたり有力な情報を得るのに一苦労したりあまり良い思い出がない。
そんなことを思い出していたマリアはあることに気が付く。
(もしかしてこれ、悪役令嬢の勉強になるかも)
権力を振りかざしている&取り巻きも完備……
どこをどう見ても悪役令嬢な女子先輩。
彼女を参考に立ち回れば悪役令嬢の設定を守れるのではないかとマリアは思いついたのだった。
(学校で悪役令嬢としての設定を守るべく……ここで勉強させてもらいましょう)
覚悟を決めたマリアは渡り廊下の仕切りに身を隠しいざこざをつぶさに見つめている。
彼女が見ていることなど知らず上級貴族の先輩たちはおびえる新入生に詰め寄っていた。
「ところで、あなたの親は何をしているのかしら」
「わ、私の親は輸入業で財をなしております」
「へぇ、じゃあウチの名前知っている? プリム・ルンゲルって言うのだけれど」
「る、ルンゲル家!?」
よほどの家柄なのか囲まれている学生達は顔を見合わせて驚いていた。
「そういうこと、河川の運営は我が家が一切を取り仕切っているのよ。あなたの家の船だけを通れなくすることだってできるの」
「そ、そんな」
「わかった? 上級と下級の違いを、決して覆らない立場が私たちの間にはあるのよ」
取り巻きの上級貴族の学生達も同調する。
「そうだそうだ!」
「一緒に扱われるとウチの品位も下がるのよ!」
「大人しく荷物まとめて帰れ!」
「…………なにそれ」
その様子を大人しく見ているつもりだったマリア。
しかし聞くに耐えない内容に段々と怒りが収まらなくなっていく。
(なんか見たことある光景だと思ったら弟と友達がいじめられていた時と同じじゃない)
かつて弟とその友人が年上のガキ大将に因縁をつけられた時と同じ光景にマリアは憤る。
親が地主だか何かで偉そうにしていたガキ大将が弟たちの遊んでいた公園の遊具を独り占めしようとケンカを売ってきた……よくある「分別の付かない子供」の喧嘩である。
それを、もう大人といっても差し支えない十代の若者が恥ずかしげもなくやっていることに腹が立ったのだ。
(権力を振りかざしてやっていることが新入生へのいじめ? 許せる訳ないじゃない)
悪役令嬢の勉強。
マリアはそんなことなどすっかり忘れ、気がついた時には仕切を飛び越え彼らの前へと躍り出たのだった。
「え?」
「あ、あなたはシャンデラ家の……」
唐突な上級貴族の登場に驚く一同。
しかしプリム・ルンゲルと名乗った先輩だけはマリアを見てニヤリと笑った。
「今年入学のマリアさんね。その様子じゃあなたも低俗な連中と席を並べるのが我慢できないのかしら」
彼女の見解に上級貴族の学生達は納得の表情でマリアを迎えようとする。
一方、シャンデラ家は有名な上級貴族。
一緒になって詰められると囲まれていた一年生は更なる脅威に身構えた。
「……」
「え?」
しかしマリアは上級貴族の生徒達と一年生の間に入り同級生をかばう姿勢を見せる。
理外の行動に囲んでいた上級貴族の生徒たちは驚きを隠せない。
「あら? どういう風の吹き回し? あなたも上級貴族でしょ」
プリム先輩の問いにマリアは鋭い目つきで問い返した。
「あなた達と一緒にされるなんて冗談じゃないわ、ていうかあなた本当に貴族?」
「「「!?」」」
鮮烈なマリアの一言に上級貴族貴族の先輩たちは目を丸くして驚いていた。
※次回も明日19時頃投稿します
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