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五話「魔法学園に登校します!」④



 場面変わって魔法学園。


 初めて目の当たりにする煉瓦作りの荘厳な学び舎にマリアは唸る。



(なんかレトロな駅って感じね……あら?)


「わふぅ?」


「おやおや」



 マリアとモフ丸たちは妙な視線に気が付いた。


 どうやら学生たちがマリアたちの方を遠目から見ているようだ。


 不思議な視線を浴びた彼女はこう解釈する。



「さすが上級貴族のマリア・シャンデラ。すでに皆から一目を置かれているのね」


「さすが我が主、もうすでに学園の有名人だったとは」


「わっふん」



 自分を有名人……例えるなら「インハイに出場したことのある新入生」みたいなポジションと考えているマリア。尊敬するギンタローとよくわからず唸るモフ丸。


 実際はもぞもぞ蠢くでかい鞄から犬の鳴き声のような物が聞こえるからだとは知る由もなかった。


「さてまずは……」


 さすがにこのまま許可無くモフ丸たちを中に入れてはいけないとマリアはいったん馬屋の隅で二匹に待っていてもらうことにする。



「ゴメンね、許可もらうまでここで待機していて」


「わっふん!」


「心得ました、何かありましたらすぐに駆けつけます故に」



 マリアは「頼りにしているわよ」とウインクすると自分のクラスへとドタドタ駆けだしていった。



「モンスターテイマーとして学びたいとか言えばたぶん四六時中連れ回せるわよね……でも、まずは教室教室っと……」



 マリア・シャンデラの記憶の断片をたどり自分の教室に到着するマリア。

 これまた断片的にうっすら覚えているクラスメイトたちがいて何とももどかしい感覚に襲われる。



(うわ~顔は何となく覚えているけど名前を忘れた人ばっかりな感じ)



 まるで年一会うか会わないかの親戚の集いに飛び込んだ気分のマリアであった。


 ともかくマリア・シャンデラに友達がいたのかどうか確認するためマリアは隣の席の女子に声をかけてみる。



「おっはよう!」


「あ、おざます……」



 メチャクチャよそよそしかった。


 彼女だけでなく他のクラスメイトもどこかマリアに対してよそよそしい。



(え、なに!? 私そこまで友達いなかったっけ!? 高校デビュー失敗した!? ……もしかして)



 マリアはこう推察する。



(前世の記憶がよみがえりマリア・シャンデラとしての記憶は確かに薄れた。でもここまでしっかり思い出せないのって……そもそもマリアは同級生に興味がなかった!?)



 だからうっすらとしか思い出せないのではと考えたマリアは一生懸命過去を思い出そうとする。


 しかし、薄れた記憶を頑張ってたどってもマリア・シャンデラは幼少期からずーっと「同級生に興味がない」ことしか思い出せず自嘲気味に笑ってしまうくらいだった。



(そうだった。記憶が戻る前の私は同級生が疎ましいものとしか思っていなかった……自分で言っていてなんだけど可哀想ね)



 シャンデラ家のワガママお嬢様。


 疎むもの、露骨に媚を売るもの、そういった輩に辟易していたのだろうか。


 だからしがらみに囚われない動物が好きになったのかもしれない……



(モンスターテイマーに憧れた理由かしら……っと今はそれどころじゃないわ、悪役令嬢として設定を守りつつ学園生活を頑張らないと)



 これからの身の振り方が肝要と気を引き締めるマリア。


 そんなことを考えていると先生が現れた。


 久々のホームルームに少々緊張気味のマリアの耳に覚えのある声が聞こえる。



「――起立」


(あら? この声って?)



 凛とした声で号令がかけられマリアは声の方を振り向いた。


 振り向いた視線の先。


 折り目正しく制服を着こなすブロンドヘアーの眩しい美少女がそこにいた。


 思わず息を飲んでしまうような煌めく金髪碧眼、凛とした芯のある声音。


 マリアはすぐさまその人物に思い当たる。



(サリー先輩だ)



 ワルドナのメインキャラの一人「サリー・インプション」だった。


 ゲームを貸してくれた友人曰く「ゲームバランス崩壊上等」「スタッフに愛された万能キャラ」。


 後方支援の弓アタッカーだが回復にバフデバフ完備、そのため安全圏から自分の攻撃力を上げて敵をバッタバッタ撃ち殺すという……ゲーム初心者マリアも「もう先輩だけでいいんじゃない?」と思わせるくらいの強キャラである。



(そうだそうだ、マリア・シャンデラも主人公たちの先輩だからクラスメイトでもおかしくないのよね)


「あら? マリアさんどうかしましたか?」



 先生に声をかけられマリアは一人着席するのを忘れていたことに気が付く。



「あわわ! すんまっせん! ……っと、すみませんことですのよオホホ」



 キャラを忘れてしまったマリアはすぐさま貴族風の謝罪に切り替えて取り繕う。


 しかし全く貴族になっていないのはマリア自身も自覚があるのか頭を掻いて照れるしかない。



(油断したぁ……あれ?)


「ふふ」



 含み笑いをしながら笑いかけてくれるサリー。


 彼女の微笑みを見て恥ずかしさと可愛らしさにマリアはさらに照れ愛想笑いを返した。



(やっぱ美人だわサリー先輩。それに優しそうだし悪役令嬢の私でも仲良くしてくれそう……でもゲーム本編キャラに絡みすぎちゃダメよね、彼女に取り巻きやってもらう訳にもいかないし)



 本編メインストーリーにイレギュラーが起きぬよう、自分の死のタイミングや場面が狂わぬようにと自分に言い聞かせるマリア。


 そしてひしひしと伝わる自分に対する「畏怖」や「嫌悪」の眼差しに「やれやれ」と頬を掻く。



(好感度マイナスからの取り巻き役の友達作り、しかも一番仲良くなれそうなサリー先輩とは極力仲良くしちゃダメという制限付き。悪役令嬢って大変ね)



 しかし大変なのはそれだけではなかった――



「はい、じゃあこのまま世界史の授業に入ります。今日は我がリングラント王国の歴史と東にあるロクの国とナナホシ公国がなぜナナロク条約を結んだか。そしてあの有名なイズフィールドの新月無血革命の関わりについて――」


(え? 何がなに?)



 ホームルームが終わり、そのまま世界史の授業を始める先生。


 その口から出てくるのはあまりにも馴染みのない単語の嵐……




 ――小学生がいきなり高校の英語を習う感じになるから大変だと思うよ




(イシュタル、これ小学生が高校の英語を習うってレベルじゃないわよ……)



 ちなみに転生前の長谷川麻里亜もどちらかというと勉強は苦手なタイプである。


 今日、マリアに新たな難題「退学しないよう頑張る」という悪役令嬢のキャラを守る以前の問題が発生したのであった。


※次回も明日19時頃投稿します

※ブクマ・評価などをいただけますと助かります。励みになります。


 皆様に少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いいたします。 

 また、他の投稿作品も読んでいただけると幸いです。

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