03
「俺の名前、分かる?」
燐の問い掛けに、直登はゆっくりと頷いた。
常磐燐。充がメールで教えてくれた。
「常磐君、だよね」
「常磐で良いよ。なんなら燐でも」
そう言って笑う彼の顔は、やっぱりふわりと柔らかい。
「じゃあ……とき、わ?」
燐。いきなりそう呼ぶのは気が引けて、直登は小さく呟いた。
燐が可笑しそうに笑う。
「なんでクエスチョンマーク付き?」
まあいいけど、と笑いを抑えた。
「久遠直登君、でいいんだよな?」
「うん」
「何て呼べばいい?」
「…何でも、いいよ」
どうせもうすぐ俺はいなくなる。それまでの短い間くらい、何とでも呼ぶがいい。
「じゃあ、直登って呼ぶ。いい?」
何でもいいって言ってるのに。
確認するように聞いて来る燐に、小さく頷いた。
「あ、そうそう。これ」
そう、思い出したように燐が差し出したのは。
「…マリーゴールド?」
白と黄色のマリーゴールド。
直登は、首を傾げる。
「これ、俺に?」
「直登以外に誰がいるんだよ」
それもそうだな、と納得して、淡い色のその花を見つめた。
「本当はオレンジあたりにしたかったんだけどさ、季節外れだからこの色しかなかったんだ」
そう言って、残念そうに肩を竦める。
燐はそう言うけれど、直登はその淡い色が何とも気に入った。
「いや、凄く綺麗だ。…ありがとう」
きっとオレンジや赤い色をしたマリーゴールドも綺麗なのだろうけど、このくらいの方が馴染みやすい。
「マリーゴールドの花言葉、知ってる?」
突然の質問に、頭を振る。自慢じゃないが、花言葉なんて考えた事もない。
「生きる、友情」
生きる。友情。
その二言に、酷く涙が出そうになった。鼻の奥が、つんと痛む。
「じゃあ、今日は帰るか。また明日、もっとたくさん話しような」
ひらひらと手を振る燐につられて、直登も点滴の管が繋がる手を振った。
また明日。また明日、話をしよう。
マリーゴールドの花言葉は、生きる、友情。それともうひとつ。
可憐な愛情。




