39話 禁断の愛
ショコラから爆弾発言を聞いて、私はドキッとした。
だけれど、平静を装い、話しを促す。
「禁断の愛って?」
「なんと、シューク様とクリード様の愛なんてすぅ……」
そう言うショコラの顔は、すっごく楽しそう。
「あの……、詳しく教えてくれる?」
「もちろんですよ。クリード様が……、毎晩、シューク様の寝屋を訪れて、二人っきりで過ごしているんですって。キャッ、想像しただけで鼻血が出そうですぅ……」
「あの……、それって、クリード様がシューク様の呪いの治療をしているのではなくて?」
「まあ、そうなのですが……。でも、毎晩夜な夜なですよ。しかも二人っきりで……。だから、これって、呪いの治療を隠れ蓑にした禁断の愛なんですよ。ああ、麗しのイケメン二人の情事なんて……」
ショコラは噂をしっかり信じ込んでいる。
しかも、かなり話に尾ひれがついているみたい……。
実は私は、この話を聞いてすごく驚いた。
これが原作の強制力?って思った。
原作でも二人の愛は王城内で噂になっていて、そのことで二人の葛藤する場面が描かれていた。
クリード様は、シューク様の名誉を守るために、二人の間に距離を置こうと提案するのだけれど、シューク様は、それに反対して、今まで通りに俺の部屋に来れば良い、なんていうのよね。
でもまあ、現実は、噂のクリード様は変装した私なんだけど……。
私は支度が終わると王城に行き、いつものように神殿で祈りを捧げた。
祈りを捧げているのは私一人ではなく、神殿に勤める神官様も、時間が合えば一緒に祈っている。
「おや、殿下、どうしたのですか?」
神官様の声が聞こえたので、私は目を開けた。
シューク様が来たのかと思ったら、第二王子のフィナン様だった。
相変わらず、金髪に大きな青い瞳がとっても可愛らしい男の子だ。
「神官様、僕はお祈りに来たのです。あっ、よかったら、聖女様も一緒に祈ってください」
可愛い声でそう話すフィナン様の表情は、いつもより暗い。
「どうしたのですか?」
「実は……、最近、お母様の様子が変なんです。僕が話しかけても、ちゃんと答えてくれないことが多くて……。優しかったお母様が、なんだか冷たい感じになって……。もしかしたら、何かの病気じゃないかと思うのです」
「まあ、それは心配ですね。では、一緒にお母様の健康をお祈りいたしましょう」
こんなに可愛らしい息子に心配してもらえるなんて、側妃様も幸せね……なんて思っていたのだけれど、原因が何かわからないなんて、私も心配になってきた。
もし本当に病気なら、私の癒しの治療で治して差し上げるのだけれど、今のところ、そんな話は聞いていない。
フィナン様はしばらく一緒に祈った後、神殿を出て行った。
次に私は救護室で、騎士様の癒しの治療を始めた。
あざや打ち身の治療が多いのだけれど、たまには大きなケガもある。
今日はその日だったみたいで「大変です。足を骨折しました」と騎士様が担架に乗せられて運ばれて来た。
城壁を登る訓練中に、手綱が切れて落下してしまったのだそうだ。
以前の私なら、すごく時間がかかったと思うけれど、今の私は神聖力のパワーが違う。
あっという間に骨をつなぎ、腫れを癒した。
でも、用心してもらって、足に添え木をつけて、松葉杖をついて歩いてもらうことにした。
おそらく三日もあれば、普通に歩けるようになるだろう。
騎士様は私にすごく感謝してくれたけれど、家に帰ってから、私の方が騎士様のケガに感謝することになった。




