38話 大きな収穫
エクレーヌを侯爵邸に送り届けた後の帰り道、俺は何とも言えない高揚感にあふれていた。
エクレーヌの提案で始まった子ども食堂であったが、初めての試みで、どうなるのか実は不安でもあった。
だが、やってみれば、子どもたちの幸せそうな顔を見ることができて、自分自身も幸せな気持ちになった。
何よりエクレーヌが喜んでいる。
彼女の顔を見ていると幸福度が倍増する。
それに……、また彼女の新たな一面を見ることができた。
虐待されている子どもを見つけ出し、救った。
おそらく俺には、できなかったことだろう。
もう一つ、酔って暴言を吐くあの男に、毅然とした態度ではっきりと言った。
「子どもを虐待する親は、親と名乗る資格はありません」
あの言葉は俺の心に響き、じんときた。
子どもを守る法律は、我が国にはまだないが、これからの課題だと思った。
あの暴言男を子どもから引き離すために、無理やり父を表に出してしまったが、父もあの対処には賛同してくれるだろう。
しかし、あの男の傷害罪では、せいぜい拘留できても数日だけだ。
その後のことを考えると、早急に法改正が必要なのだろう。
まあ、いろいろあったが、何と言っても今日の大きな収穫は……
子どもたちの大合唱。
大声で叫んでくれた。
「聖女様が、王太子様のお妃様になればいい! 聖女様が王太子様のお妃様になればいい!」
ふふふっ、あの言葉がエクレーヌの心に残れば、洗脳されると言うことも考えられる。
彼女は真っ赤になっていたし、まんざらでもないのかもしれない。
クリードよりも、俺を選ぶ可能性が大……になるかも……?
彼女が俺の妃になれば、実に多くの民に祝福されるのだろう。
彼女が言ってたこの国の未来。
すべての子どもたちが笑って暮らせる国になれば、きっとこの国の未来は明るくなる。
俺はエクレーヌと一緒に、この国の未来を変えたい。
ああ、エクレーヌ、身も心も俺のものになってくれ……。
子ども食堂は、その後順調に軌道に乗り、私も時間があれば見に行くようにしているけれど、今のところ問題なく運営できている。
税金だけではなく、シューク様は篤志家から寄付金を募り、そのお陰で金銭的にも無理なく運営できているそうだ。
今度の貴族会議で、子どもを守る法律についても話し合うことになったと聞いた。
なんだかシューク様って、本当にすごい人だと思う。
良いと思ったことは、どんどん推し進めていくエネルギーに満ち溢れているって感じ。
私も、聖女のお仕事、今以上に頑張ろうって思う。
癒しの力も強くなって、騎士様のケガも、病院の患者さんの病気も、初めの頃に比べると格段に早く治せるようになった。
さあ、今日も張り切って仕事に行くぞって思っていたら、侍女のショコラが私の髪をとかしながら、嬉しそうな顔で話しかけてきた。
「お嬢様、今、王城で流行っている噂、ご存じですか?」
ショコラは男爵令嬢であるけれど、男爵家は裕福ではなく、姉は王城でメイドとして働いている。
だからか、二人の間でいろんな噂話に花が咲くらしい。
「噂って? どんな噂なの?」
「あら、お嬢様、知らないのですね? ふふっ」
私からマウントを取れたのがよっぽど嬉しかったのか、もったいぶりながら次の言葉を口にした。
「禁断の愛……ですよ。ふふっ」




