31話 聞いてみたい
シューク様が私を抱きたいと言ったとき、私は覚悟を決めた。
愛するシューク様となら、一線を越えてもいいと思った。
だから、抱いてくださいって言ったのだけれど……
シューク様は私を抱くとき、下穿きは穿いたまま。
最後まで脱がなかった。
でも、私は見てしまったから知っている。
下穿きの中で、彼の彼自身が大きく膨れ上がってそびえ立っていたことを・・・。
バックハグされたときも、実は硬くなった彼自身が、私の身体に当たっていた。
私は、この世界では十八歳の純情可憐な乙女と言うことになっているけれど、前世では二十五歳の立派な大人で社会人なのだ。
縁がなくて、二十五年間、男性経験がなく過ごしてきたけれど、マンガや小説、ネットのお陰で、知識量だけなら、経験者とさほど変わらないと思っている。
二人だけの密室で、目の前に美しい裸の女性がいて、あんなことやこんなことをして、しかもお互いに興奮しているのに、ことに及ばないのは、そうとうの自制心が必要なはずなのだ。
まず普通の男性なら、我慢するのは不可能だろう。
お風呂に入らないのかと聞いた時、一緒に入るともう我慢できなくなるから……なんて言ってたところをみると、シューク様はものすごく我慢をしているのだと思う。
男性のこの手の我慢は、生き地獄だと表現している人もいるほどだ。
だからシューク様も、かなり苦しい思いをしていると思う。
それなのに、一線を越えようとしないのは……
やっぱり、子どもができたら困るから?
王太子の血を引く子どもが、愛してもいない、結婚する気もない女性から生まれるのは避けたいから?
もし、それが理由なら、魔法士が作っている避妊薬を、私は飲んでもいいと思っているのに……。
それとも、一線を越えないことで、私のことを気遣ってくれているの?
どうして最後までしないのですか? と聞いてみたい気持ちはあるけれど、それを聞いてしまったら、やりたい女だと思われそうで、私にはハードルが高すぎる。
いつかシューク様の口から、理由を聞ける日が来るのだろうか……?
煩悩だらけの祈りの時間が終わり、私はいつものように騎士様の治療をして一日が終わった。
いつも通りの日常が三日続いた翌日に、ガトーさんが治療に来た。
私はガトーさんがシューク様だと知っているけれど、ガトーさんは、私が知っていることを知らない。
ボロを出さないように、知らないフリをし続けなくっちゃ。
「今日は腕を痛めまして……」
ガトーさんが申し訳なさそうに言う。
今更だけど、シューク様は演技が上手いのね。
ガトーさんを見ていて、とても王太子様だとは思えないもの……。
「では、服を脱いでください」
ガトーさんは慣れた手つきでササッと脱いだ。
見事なシックスパックが、私の目に飛び込んでた来た。
私は脇腹近くにあるホクロを目で探す。
あった……。
やっぱりガトーさんはシューク様なのだわ。
前回、服を脱げなかったのは、まだ身体に文様があったからなのね。
私はガトーさんの腕の青あざに向かって手をかざす。
騎士団長でソードマスターのシューク様が、こんなあざをつけるなんて考えられないから、きっと魔法士さんにお願いしてるのでしょうね。
「それでは治療を始めます」
神聖力の力も扱い方も、格段に上達した私は、あっという間にガトーさんのあざを治した。
「終わりました」
にこやかな笑顔で、治療が終わったことを告げた。
「ありがとうございます」
ガトーさんは、爽やかな笑顔で私を見つめた。
ああ、やっぱり私はこの人が好き……。
「今日は、聖女様にご報告があるのです」
私がうっとりと眺めていたら、ガトーさんが現実に引き戻した。




