表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブの聖女に転生したのですが、18禁BLの主人公を私が癒してもよろしいのですか?  作者: 矢間カオル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/53

16話 魔王

俺は、倒れた彼女を抱き上げ、馬車に運んで目が覚めるのを待った。

抱いている手と腕に、彼女の肉体の柔らかさと体温を感じ、鼻先は彼女の香りにくすぐられた。


あのとき我慢できずに、眠っている彼女のしっとりと湿った柔らかい唇に、そっとキスしたことは、誰にも言うまい。


彼女の目が覚めてからも、俺は抱いた手を離さなかった。


苦しい言い訳を、疑うことなく信じてしまう彼女が愛しくてたまらない。


下から俺を覗き見る瞳も、サンドイッチが持てなくてプルプル震える手も、もう、何もかもが愛しい。


サンドイッチを俺が食べさせているとき、真っ赤になって恥ずかしそうに咀嚼する口元を俺はじっと見ていた。

こんなに幸せな時を過ごせるなら、これからも毎回食事の度に、俺の手で食べさせてあげたいと思った。


食事がすんだ後に、俺の炎魔法で温めたお茶を渡したら、幸せそうな顔をして飲んでくれた。

俺の魔法が彼女を喜ばせたのだと思うと胸が熱くなった。


ふふっ、口元についた卵を、俺がぺろりと舐めたときの、彼女のあたふたとした姿は、今思い出しても可愛くて仕方がない。

俺は赤くなった顔を見られたくなくて、すぐに馬車を出たから気付かれなかったと思うが……。



あの後、ひき逃げした馬車の犯人を見つけ出したのだが、町の高利貸しの男だった。

牢屋にぶち込んで、多額の罰金を取り上げて、一部を子どもの母親に渡したが、残りの金は、貧民街の救済に使うとしよう。

彼女が提案した、子ども専用の食堂の資金に充てるのがちょうど良い。


子ども専用の食堂……、俺には考え付かなかった政策だった。

貧民街の状態を、彼女はよく把握していたのだな。


初めて行く貧民街であっただろうに、劣悪な環境にも鼻につく臭いにも、一切文句を言わずに、最後まで真剣に治療を続けていた。

俺はその横顔を見ていることしかできなかったが……


エクレーヌ、あなたは俺のこの気持ちに、気付くことはないのだろうな……。

俺はあなたの心を、俺のものにしたい。


だが、俺は知っているんだ。

エクレーヌ、あなたの心がクリードにあることを……。


俺が神殿の救護室に行くようになってから、彼女に何度も治療をしてもらった。

だけど、クリードが入って来た瞬間、いつも彼女はとても嬉しそうな顔でクリードを見つめるのだ。


真面目な彼女はすぐに気持ちを切り替えて、俺の治療に集中してくれたけれど、クリードを見るあの一瞬に、俺がどんな気持ちになったかなんて知らないのだろうな。


もしも、クリードが俺の親友じゃなかったら、きっと辺境警備にでも、追いやっていただろう。


彼女は何かとクリードを気にしている。

彼女の口からクリードの名前が出る度に、俺は嫉妬に駆られてしまう。


だから、クリードには、俺が救護室に行くから、お前の監視はもう必要ないと伝えた。


もし俺が、クリードに頼まず、最初から、ずっと俺だけが彼女を見守り続けていたら、彼女の気持ちは変わっていたのだろうか……。

俺は、あの時の決断を、今となっては後悔している。


だが、たとえ、クリードが俺の親友であっても、決してエクレーヌは渡さない。

絶対にだ。


俺は不幸にも竜の呪いにかかってしまった。

彼女は、クリードに俺の呪いを解く癒しの力が現れたと言ったそうだが、強引ではあったが、あの口づけで、彼女にもその力があるとわかったのだ。

俺はこの呪いを最大限利用させてもらう。


それが卑怯な手段だと分かっているが、エクレーヌ、あなたを手に入れることができるのなら、俺は魔王にだって、なってもいい……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ