11話 手には手を
私が自分の身体を支えられなくなったことに気付いてくれたのか、シューク様は私の腰に手を回し、グイッと引き寄せた。
お陰で倒れずに済んだけれど、身体はシューク様に密着してしまう。
シューク様の熱が、服越しに私に伝わってくる。
だけど、ますます身体の力が抜けていき……ふらりと倒れそうになって……
思わず私は倒れないように、自分からシューク様の首に手を回してしがみついてしまった。
お互いが身体に手を回し、身体をぎゅっと密着させたまま、むさぼり合うような激しいキス……
ああ、キスがこんなに気持ちが良いなんて……、私、知らなかった……
私が快感に酔っていたら……
―終ったよ―
私の身体が、治療が終わったことを告げた。
えっ?これって治療だったの?
いきなり現実に引き戻されて、私の方が驚いてしまった。
それと同時に、シューク様は何かを感じたのか、唇を離した。
私はまだ身体の力が入らなくて、シューク様にしがみついたまま。
シューク様は、そんな私をひょいと抱き上げた。
「えっ、ええ? お姫様抱っこ?」
「歩けないのなら仕方あるまい」
「あ、あのっ、で、でも……」
シューク様は、私を軽々と抱き上げて、高級な椅子に座らせてくれたのだ。
もう、何が何だかわからないまま、私は恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
シューク様は向かいの椅子に座って、私をじっと見つめているのが、俯いていてもわかった。
「エクレーヌ、すまなかった。そしてありがとう」
「えっ? そ、それは……?」
私はシューク様の言葉の意味がわからず、思わず顔を上げた。
シューク様は、私の顔を見て、理由を話しだした。
「クリードに聞いたのだ。あの場にいた騎士たちやあなたは、クリードが俺の手の呪いの文様を消したと思っているようだが、クリードが手を握る直前に、文様が消えたのだそうだ。そのままあなたに言われるままに、俺の手を握り続けたそうだが、クリードは、聖女のあなたが俺の手を握ったから、手の呪いが解けたのだと思っている」
「でも……、私は殿下の首の文様に手を当てて、神聖力を流し込もうとしましたが、それはできず、文様は消えませんでした」
「ああ、そのようだね。だから、俺は考えたんだ。手には手を、口には口ではないかと……」
その言葉に、私はハッとした。
キスの最中に身体の力がどんどん抜けていき、立っていられなくなってしまった。
そして最後に感じた ―終ったよ―
あれは、私の口から神聖力がシューク様の口に流れ込んでいた証だったのだ。
「あの……、そのお言葉通りだと思います」
私は恥ずかしさのあまり、また俯いてしまった。
だって、あのキスの最中、私は夢中になってしまって、神聖力の流れに気が付かず、治療だなんて思いもしなかったから……。
それに、初めてなのに、キスを気持ちいい……と感じてしまった……。
「あなたに黙ってキスしたのは、もし俺が口に出して頼んだら、きっとあなたは返事に困ってしまうと思ったからなんだ。だから、強行させてもらった」
確かにそうだと思う。
今から治療のためにキスしたいと言われたら、私はどんな顔をしただろう。
王太子だから断れないことは初めからわかっている。
だったら、あのいきなりのキスは、私的にもきっと良かったのだ……。
「俺に怒っているなら、顔をひっぱたいてくれ。拳で殴ってもいい」
「いえ、そんな……。初めてだったので驚いたのですが……」
シューク様のキスが気持ちよかったです、なんて、恥ずかしすぎて言えない……。
「殿下の呪いが解けて良かったです」
「ありがとう。そう言ってくれるのだな」
もう、これ以上キスの話は苦しいので、私は別のことを聞くことにした。
「あの……、竜の呪いの文様は、どこまで消えたのですか?」
「口の中は消えたな。それから、首から耳にかけても消えた」
顔を上げてよく見たら、首の文様が消えている。
あの時、直接手を当てても消えなかったのに……?
「あなたが俺の首にしがみついてくれただろう? おそらくその時だろう」
カッとまた私の顔が熱くなる。
だけど、ふと思った。
これは、本当はクリード様の役割だったはずなんだけど……。
原作の強制力は、どこへ行ってしまったのだろう?




