第78話 家令大ピンチ
(*´ω`*)おぱようございみゃふ!
「プリメリアのお陰で色々助かってるよ」
(万能型だから特化型程の強い適性は得られないが、夜目が利くってだけでも有り難いな。松明代わりの光魔法も嬉しい。上手く使える様にするにはまだまだ要訓練だけど)
試しにプリメリアとシてる最中に、意識して夜目⋯暗視効果を試してみた。薄ぼんやりとだがプリメリアの裸体を楽しめた。光属性の照明魔法は微妙だった。掌から光球を生み出したが、暫く明滅しただけで消えた。
(俺は魔力放出が苦手なのかもな。プリメリアへの防御結界魔法は唾液を媒介にして上手く行ったけど、何の魔術的繋がりも無いと体から離れるだけで効果が下がる)
しかし此れで、暗闇に依る視界不良時の即対応が可能となった。暗視効果で夜目を利かすも良し。光の玉で照明を放つも良し。
「そんな⋯助けて貰ったのは私だもん」
「何だ。可愛い奴だな」
プリメリアはクートに言われてデレデレし、猫の様にスリスリと頭を擦り付けて来る。軽くキスをしてやったり頭を撫でたりしてやるとプリメリアが蕩けた表情になって行く。親への愛情の飢え。取り巻きは居るが友達と呼べる存在の居ない孤独。狙った訳ではないが、クートは其の心の隙間にスルリと滑り込んだのであった。
「ねぇクート様。私、可愛い?」
「ああ、プリメリアは可愛いよ」
(顔だけはな。体はちと物足りない)
「えへへ、嬉しい」
馬車内でイチャイチャしながら屋敷へと向かう二人。プリメリアは完全にクートに堕ちていた。クートはオーガよりも美味しい食材を見つけて満足していた。馬車がプリメリアの自宅に辿り着いた。プリメリアは其のままクートを両親の居ない自宅の寝室に招く。メイドが御嬢様のズタボロの衣服とクートの存在に慌て、其れを知らされた家令が更に大慌てで駆け付ける。
(何だっ!?今日は皆で観劇する予定だったろうっ!?)
御機嫌取り兼監視役の貴族の子女達が見当たらない。明らかにカタギではない平民の男と帰って来る等予定外で予想外だ。こんな事が当主に知られたら彼の首が飛ぶ。場合に依っては物理的に。家令が御嬢様を咎める前にプリメリアが口を開く。
「家のダンジョンにオーガが出ましたわ。危うく殺されかけましたの。あのダンジョンの安全管理をパパに任されているのは貴方ではなかったかしら?」
「わっ!?そ、うえっ―――」
其れを聞いた家令はギクリとして青褪める。プリメリアが遊び感覚で潜る為、危険が無い様に定期的に冒険者を送り込んで調査や間引きを行っていたのは彼だ。オーガが出る筈が無い。馴染みの冒険者もFランクモンスターしか出ないFランクダンジョンだと言っていた筈だ。
「そ、そんな馬鹿な」
まさか―――
(俺がちょろまかしてる事がバレたのか―――!?)
家令が焦る。実は冒険者への報酬を徐々に減らしていたのだ。週一で行う様なモンスター討伐クエストを月三回にする。そして今は月一で行っていた。其の内に依頼する冒険者のランクもDからEへと落として行った。しかし帳簿上はキチンと討伐をしてる事になっている。彼は討伐を緩くする事で強いモンスターが生まれるメカニズム等知る由も無い。プリメリアが中抜きに気付いて責めているのだと理解する。オーガが出た事は信じていなかった。未だ此の時は。
(し、仕方無いだろっ!?お前がモンスター狩りなんて危ねぇ遊びしてっから!此方は適度に抜いてやってたんだぞっ!?)
モンスターの間引きは御嬢様が楽しめる余地を残さねばならない。なので此れは致し方無い事⋯と、虚実織り交ぜた言い訳により、浮いた金をプールしていた。自分の懐に。家令は兎にも角にも、男を寝室に連れ込もうとする御嬢様を止める事にする。しかし其れは阻まれる。
「はい、此れオーガの首です」
「ひいいいいいいいっ!?」
一抱えも有る角の生えた凶悪なモンスターの生首を放り投げられた家令がドテンと尻餅を付く。
「素敵」
「え、そう?」
(何処が?)
クートは知る由も無いが、家令がプリメリアを侮っていた事を本人は気付いていた。そして両親の監視役である事にも気付いていた。そんな生意気な家令に情けない悲鳴を上げさせ懲らしめてくれた。オーガを倒した事も有り、プリメリアにとっては正に救世主の様な存在に成りつつ有るクートであった。
「そうだわ。次からはクート様を指名します!私の為に討伐クエストをしてっ!」
(お、おい馬鹿っ!冒険者への顔繋ぎは俺の仕事だっ!)
「え?でも完全に殺しちゃ不味いんじゃ?」
「どっちでも良いわ。クート様がお家に来てくれるなら」
(やべぇっ!完全に女の顔になってるっ!まさかもうヤったのかっ!?其れだとマジでヤバいぞっ!)
家令が青褪める。仮面夫婦の有閑マダムの男遊びとは訳が違う。プリメリア御嬢様は主家との関係を更に盤石にする為の政治の道具だ。傷物にしたとあっては本当に命の危機に成り得る。
「まぁ良いけどさ」
(ゴブリンからいきなりオーガだもんな⋯調節すればコンスタントにDランクモンスターが狩れるのなら良いか)
ダンジョンの壁を閉ざして暫く放置しておけば、モンスター同士共食いをして、より強いモンスターが生まれるかも知れない。狭いし短いし面白味は余り無いが、暇潰しには成るかも知れない。後は新しいスキルを得た時の実験場としてなら最適かも知れない。
「殺り方を任せてくれるなら良いよ」
「やったぁ」
プリメリアはクートに抱き着く。
「じゃぁ、そう云う訳だから」
「は、い⋯」
プリメリアがクートと一緒に寝室に消えるのを黙って見送るしか出来ない家令。お嬢様を何処の馬の骨とも知れない男に惚れさせてしまった。此処は断固として止めねばならない。しかしそうした場合お嬢様の怒りを買い、ダンジョンのモンスター討伐クエスト用予算を中抜きしていた事を当主にバラされる。家令はプリメリアの要求を飲むしか無かった。立場的にはクートを叩き出す事も出来なくは無い。しかし物理的に―――
(オーガを単騎で仕留める様な冒険者にそんな真似出来るかっ!)
彼が関わった冒険者達も其れなりに強い。しかし其れはチームワークや経験、作戦、総合能力の強さだ。
オーガの首を落としてケロリとしている男等、彼の知己には一人も居ない。
「はは、終わった⋯」
プリメリアの両親は娘の婚約者探しの為に都に行っている。帰宅した時に、変な冒険者と娘が恋仲に成っていたと知ったら大激怒だろう。
(身の振り方を考えようかな)
血気盛ん、命知らずの冒険者とやり合うぐらいなら、仕事上の首が飛ぶ方がマシだと判断する。ちょろまかした金を元手にして何処か遠くに行くべきだろう。胸中が地獄と化してる家令を放置し、寝室に二人きりになるプリメリアとクート。ベッドの上でラブラブ光線全開でクートを見つめるプリメリア。彼女は自ら衣服を脱いでクートに甘え出す。そんな彼女を抱きながらクートが驚く。
(気の所為じゃないぞ?魔力が上がってる?)
プリメリアはどうやら感情の起伏によって魔力を活性化させる体質らしい。
(今のプリメリアならオーガも倒せたと思うな)
恋愛感情を攻撃性に転化させる術は思い付かないが、プリメリアの魔力総量や魔法の才はクートを軽く凌ぐ。嫉妬はしない。何故ならば⋯
(此の女を喰えば、俺はもっと強く成れる―――)
自分に惚れている女等もう、栄養価の高い食材に過ぎないのだから。
(*´ω`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!




