第61話 魔食晩餐
(*´ω`*)おぱようございみゃふ!
「ふふふ。固有スキルの恩恵が有るとは云え器用だな君は本当に。弱いが三属性同時使用か。ふふ、本当に素人かね?しかし此れで懸念は無くなったな。おっと?ショコラ」
「はいなぁ〜」
フラッペが満足気に頷きつつ相方に指示を出す。魔石が引っ付いたブラックファングボアの心臓を咥えたままのクートが倒れ伏したからだ。
「うっ⋯」
「んもぉ〜無茶しちゃ駄目よぉ〜?」
ショコラに抱き上げられるクート。体力も気力もまだまだ有る。魔力も十分以上に充実している。しかし膨大な魔力を使ったり喰らったりしたので体調と云うか、体内の魔力バランスを崩していた。例えるなら空腹で餓死寸前の所に腹一杯食べた様な物だ。普通なら死ぬ。だがクートならば生き残る。今は軽度の魔力酔いと云った所だろう。
「帰るぞ。ショコラ」
「はぁ〜いぃ〜。キュート君〜私の胸にお帰りなさいねぇ〜」
「⋯あの、おんぶでは」
力尽きてはいるが意識の有るクートが抗議する。ショコラはおんぶではなくお姫様抱っこをして来たからだ。
「駄目ですぅ〜此方のがキュート君を味わえるので〜」
「如何云う意味―――んぶっ!?」
お姫様抱っこされたクートの唇がショコラに吸われる。
「ぢゅるるるるるぅ〜⋯ぽんっ!ふへへ〜御馳走様ですぅ〜役得役得ぅ〜」
クートの顔や口はモンスターの血でベトベトなのに其れは気にならないらしい。モンスターの血も一般人ならば普通に毒だが、固有スキル防御結界魔法のショコラはパッシブスキルとしての魔法耐性がとても強い。モンスター食をするなら兎も角、クートの顔中の返り血をペロペロするぐらいは問題無い。
「キュート君〜べろべろべろ〜ぢゅぅぅぅ〜⋯」
「程々にしろよ?ショコラ」
「キュゥ⋯」
ショコラに好きなだけ唇を吸われダウンするクート。第一層と第二層のボス二連戦で疲労困憊の所、ショコラのディープベロチューが決め手となった。
(体が動かねぇ⋯情けねぇ⋯)
朦朧とする意識の中でクートが反省する。結局フラッペとショコラにおんぶに抱っこである。いくら強くなろうとも、格上の敵を撃破しようとも、倒した直後に倒れていたら意味が無い。自分一人で戦って勝ったとはとても言えない。
(完全に甘えちまった。甘やかされたな⋯)
フラッペの本来の目的は全く達成されていない。彼女の今回のクエスト目標は最新最深部でのモンスター狩りだ。浅層である第二層で引き返す等論外である。勿論長期目標達成を考えるならクートの強化はマストではある。今回一回の探索を捨ててクートに先行投資するのも合理的だ。だからと云ってクートの好きな様に戦わせてくれたのは完全にフラッペの厚意だ。魔法士ギルドに支払う仲介料、冒険者ギルドに支払う指名料等の金銭的な問題だけでない。話に聞くとダンジョン探索にも制限が有ると云う。次回探索まで一定期間日数を空けないといけないらしい。
「⋯ありがとう、フラッペ」
「いいさ、私の為だ」
ショコラの胸の中でクートが感謝を述べる。フラッペはチョコチョコ歩きながらクートを覗き込む。見た目は完全に幼女だから脳が混乱する。
「ところで体の調子はどうだい?」
「⋯⋯⋯」
「大丈夫か。まぁ無理せず眠り給え。疲労からの寝落ちだと緊急避難転送魔法は発動しない」
フラッペとショコラはボスフロアを退室し地上を目指す。立ちはだかる雑魚モンスターが一瞬でミンチになる。朧気ながら其の気配を感じるクート。今のクートにはフラッペが何をしたのかすら解らない。
「僭越ながら私が名付け親となろう」
軽やかにダンスを踊り、モンスターを殺戮して行く攻撃魔法使い。くるくる回りながらトンガリ帽子をクイッと上げる。
「モンスターの魔石の心臓を喰らい、糧とする者よ」
何時の間にか第一層階層ボスの部屋に辿り着いていた。階層ボスがリポップしている。逆走なのだがモンスター討伐数が影響しているのだろう。第一層のフロアボス達が待ち構えていた。
「祝福しよう」
スケルトンナイトが隊列を組み行進を開始する。ゴブリンメイジが其々の属性魔法を発動する。オークナイト達が大剣や斧やハルバートを持ち突撃して来る。レッドスライムが天井を這い回りながら襲い来る。
「君の固有スキルは食材鑑定」
勝敗は一瞬。ボスフロア内にひしめき合っていたモンスター達が閃光と共に爆裂四散する。肉体の有るモンスターは細かな肉片となり血華を咲かす。レッドスライムは急所ごと押し潰され天井の染みになる。スケルトンナイトは木っ端微塵となり其の仮初の生を終える。
「拡張スキルは魔石感知」
フラッペが歩きながら歌うように語る。今の攻撃すら魔法ではない。単に魔力を放っただけだ。巨人の一歩が町を踏み潰すが如く、単なる魔力放出だけの結果である。先程の閃光はフラッペの魔力が空気中の魔力とモンスターの魔力を強引に押し潰した時の魔力反応に過ぎない。彼女は今回まともな魔法を一つも使っていない。しかも弱体化する杖を装備したままだ。
(――⋯⋯⋯凄い)
今回のダンジョン探索で大幅なレベルアップを果たしたクートだが、俺は強いんだぜなんて調子に乗ったり出来ない。側には本物の強者がずっと居り、クートが好きなだけ冒険出来る様に見守ってくれていたからだ。
「問われたならばこう名乗れ」
振り返る合法ロリ魔法使いはとても頼もしく見える。圧倒的強者には嫉妬すら起きない。
「覚醒スキル名は」
彼女に認められてる事こそ、誇りに思う。
「魔食晩餐」
クートはフラッペのスキル攻撃魔法の圧倒的火力を目に焼き付けながら意識レベルを落として行く。
(魔食⋯晩餐⋯)
憧れは消えない。劣等感は消えない。食べても飢える腹の様に、心が満たされる事は無いだろう。しかし此の時は違った。圧倒的強者の庇護の下、己の限界まで力を振るい、更に其の力を成長させられた実感が有る。
強敵を単騎で撃破したからか、魔石の心臓を喰らって強くなったからか、強者に認められたからか⋯クートは戦闘後の殺戮衝動を抱く事も無く、安らいだ気持ちで眠りに堕ちた。
(*´ω`*)スキルの覚醒は誰でも出来まつ。ただ其れをするには発狂レベルの過程が必要になりまつね。そして覚醒してもデメリットもありまつ。最初のスキル鑑定のおいちゃんがもしもスキル鑑定を覚醒させてたらクートの才能も見抜けたでしょうが、日常生活でも常に他人のスキルが頭に流れ込んで来やす。そしてそんな精度だと何処かの国や機関に拐われて一生飼い殺ちにされまつ。




