第57話
(*´ω`*)おぱようございみゃふ!
「クート氏の激しい交尾を観察出来たのは良かったが」
「交尾て」
「ショコラの甘えた喘ぎ声を聴きながらモンスターを生かさず殺さず捕まえ続けていた私の苦労と苛立ちの落とし前は付けて貰いたいね」
「はい」
茶化す事無く素直に頷くクート。割とマジで目が座っていたからだ。フラッペが命じたとは云え、他人の性の営みを延々と見させられた所為だろう。普段はカラッとしてる筈のフラッペの言動に湿気と云うか湿度と云うか、少し色が混ざっている。余り此処を突っ込むのは藪蛇だろう。
「もっと条件が整っていれば私が抱いていたものを⋯」
悔しそうにするフラッペ。クートとは意識の有る状態でシてみたい。あんな獣の様な状態で貪られるのは趣味ではない。それで悔しがるのも理不尽な気もするが、ショコラとは付き合いは長い。最初は嫌がっていたがショコラは結局楽しんでいたし、事後我に返った後も勝手に自己完結していた。アレはそう云う女なのだ。
「ほら、ドロップした魔石は全て君の物だ」
「有り難う」
心臓を喰らえたのはゴブリンプリースト、ゴブリンメイジ、オークメイジ、オークプリーストの四体だ。オークナイトやゴブリンナイトの心臓は、クートが意識を失ってる内にダンジョンに吸収されてしまった。Dランクモンスターの魔石が六個。契約次第では雇用主であるフラッペや仲介した魔法士ギルド、冒険者ギルドへ引き渡さないといけない。だが今回はクートが貰って良い事になっている。
「さて、此処で止めるつもりだったが、どうする?」
ボス戦はクリアした。ボスフロアの扉の鍵は開いている。引き返せばキャンプ地が有る。進めば階下へ進む階段が有る筈だ。
「行く。進む」
「だと思ったよ」
フラッペが苦笑する。三人は其のまま第二層地下十一階へと進む。外観的には変化は無かった。ほんのり淡く光る壁や天井のお陰で視界は問題無い。モンスターも問題なかった。
「Eランクモンスターか」
「手伝うかい」
「大丈夫」
クートは迫り来るモンスターの群れに突っ込む。空中へチャクラムを投げ、飛び回るキングマーダーバットを数匹斬り裂く。チャクラムに括り付けた鋼糸を結んだナイフを反対方向へ投げる。其の鋼糸に引っ掛かって転ぶスケルトンソルジャーとホブゴブリン。
「ランクは上がっても知能は上がらないのか」
足元に張られた鋼糸に気付く素振りも無い。だから避けれない。クートはスケルトンソルジャーの頭蓋骨を踏み抜く。ホブゴブリンの頭に手斧を振り降ろす。
「遅い」
回り込もうと走り込んで来たブラックウルフにウルミを叩き付け、足元をチョロチョロするキングマーダーラットとキングマーダーラビットを蹴り殺す。床を這い回るキングマーダースネークの頭を踏み潰し、突進して来たデスファングボアの頭をチョッパーでかち割る。
「お前等はなんで此処に出て来るんかね?」
石造りのダンジョンに現れたサハギンチーフの顔を掴む。
(アレ出来そうだな⋯)
クートの固有スキル、食材鑑定が囁く。お魚は、しっかり焼いて、食べるべし。
「燃えろ」
「ギャキィィィィィィッ!?」
クートが掴むサハギンチーフの顔から煙が上がる。クートが手を離すと、顔面が焼け爛れたサハギンチーフが崩れ落ちる。
「火魔法、だと?」
クートが行った魔法行為にフラッペが目を瞠る。魔力は誰でも有る。魔法は誰でも使える。だが⋯
「何の修練も無しに魔法を使える者は固有スキルに魔法関連の物が必ず有る。クート氏の食材鑑定は感知系鑑定スキルだ。発現するなら感知魔法に成る筈⋯だが⋯」
クートの自己治癒力と魔法耐性が上がったのは解っていたし、其れ自体は特に珍しくも無かった。魔法の才が無くとも、熟練の戦士は鍛える内に体内魔力の操作を無意識に覚える。魔法士的常識、広義では魔法を使わない戦士達も、ある意味物理系魔法の使い手となる。其れとは違う。明らかに違う。
「モンスター食⋯」
クートは火魔法を使うゴブリンメイジの心臓を喰らい血を啜った。其れと無関係とは思えない。と云うかそれしか理由が見当たらない。
「火傷した」
クートは自分の掌を見つめる。食材を美味しく焼き上げる調理魔法―――『加熱』。
「もうちょっと火加減上手くしたいね」
生まれて初めて魔法攻撃で敵を仕留めた感動は無い。有るのはもっと上手く使いこなせないかと云う探究心のみ。
「冷えろ」
「!?」
クートの火傷の掌を冷気が覆う。食材の鮮度を保つ為の調理魔法―――『冷凍』。
「冷たっ!?今度は冷え過ぎだ」
クートは冷気を放つ掌を、此方に向かって来ていたモンスター共に向ける。
「飛ばんか」
オークメイジの様に氷の塊を飛ばす事は出来ない。しかし―――
「凍れ」
床に掌を付け念じる。すると掌を覆っていた冷気が床を走る。其の冷気を浴びたボスコボルト、オークソルジャー、レッドスライムが凍り付く。
「ま、そう上手くはいかないか」
吸血能力が有るとされるレッドスライムは全身を凍り付かせ動けなくなっていたので手斧で破壊した。しかしボスコボルトとオークソルジャーは足の動きをぎこちなくさせただけだった。軽い凍傷だろう。
「もっとこう、派手に格好良く⋯は、無理かぁ⋯」
クートが落胆する。出来る事が増えたのは喜ばしい事だ。しかし、此の程度の魔法ならほぼ使えないのと変わらない。値段は高いが魔道具を使った方が効率も良いだろう。モンスターの心臓に齧り付き血を啜ってまで得られるスキルが此の程度では、到底割に合わない。
「凄く損した気分」
「私からすると世紀の大発見なんだがね」
フラッペは静かに興奮していた。長年追い求めていた研究の⋯成功例が目の前に居るのだ。クートの固有スキルが関係しているので再現性は低いが、自分の研究が間違っていなかった事は証明出来る。
「クート氏。私と専属契約を結ばないか?」
「うーん⋯どうしよう」
「キュート君、責任、責任〜」
魔法士ギルド管理下ダンジョンは魅力的だ。フラッペとショコラが居れば安全にダンジョン攻略を楽しめる。だが⋯
「保留で」
「保留かね?」
「保留なのぉ〜⋯?」
落胆するフラッペやショコラから目を逸らす。
(ごめんね。でも―――)
クートはオークソルジャーの首を一撃で刎ねながら独りごちる。
「もっと生きた感じが欲しいんだよ」
彼の求めるギリギリで生きた実感は、過保護な女達に守られた状態では得る事の出来ない物だったからだ。
(*´ω`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!




