第59話
(*´ω`*)しゅらしゅらしゅしゅしゅ!
「来やがれ」
クートは両手を合掌し構える。イメージはレナ。レナの必殺の一突き。図らずも相手はあの時と同じファングボア系統。
「レナ、俺に力を貸してくれ」
「だからぁ誰よ其の女ぁ〜!?」
ショコラの間延びした叫びを聴き流しながら、クートが覚悟を決めた。
丁度其の頃―――⋯
「ん?誰か呼んだ?クート?」
「あたしが呼んだ」
レンダとリコの宿屋の前でレナとルカが対峙していた。丸二日姿を見せないクートを心配して宿屋まで来たのだ。他の冒険者がどのクエストを進行中とかは、クエストに拠っては開示されない。冒険者ギルド内のクエストであれば受付嬢の判断で当事者と仲の良い冒険者に世間話程度で語る事は許される。しかし今回クートが受けたのは魔法士ギルドからの指名クエスト。冒険者ギルドの受付ロビーで契約した為に他の人間にも見られている。だが、開示されるのは其処まで。クートが何処で、何時まで、どんなクエストを受けたかは不明だ。訊いても教えては貰えない。なので、周りへの聞き込みによりクートが魔法使いと共に拠点である宿屋へ向かった事までは把握した。其の先を調べる為に来たのだ。レナと、ルカが。そして出会う。出会ってしまう。
「レナだよね?同期⋯タメだし敬語要らないよね?Fランクのルカだよ。弓士だ」
「Eランクのレナだよ。宜しくね、ルカ。私は見ての通り槍使いさ」
ピリピリとした緊張感が二人の間に流れる。同期だが既にEランクに上がったレナ。そしてルカはある噂を聞いていた。レナがクートと二人合同でEランク昇格クエストをクリアした事を。ルカは裏切られた様な気持ちを抱いたが仕方無いとも理解していた。ルカは未だメリッサから単独でのモンスター討伐クエストの許可を貰えていない。メリッサ自身が小さな子持ちの為に討伐クエストNGである。其の為に師として同行出来ないからだ。そしてルカ自身が未だモンスターへの恐怖を克服出来ていない事も有る。しかし弓の腕前は上がっている。兎や鳥、普通の猪等を狩れている。其れでスラムの孤児院の皆に肉を食べさせられている。皆が母さんと慕う孤児院の経営者の女性も喜んでくれている。しかし、半面ルカが危険な冒険者を続けている事には難色を示している。此のまま普通の狩人で収まって欲しいと思われている。年下のチビ達もルカの事を心配している。しかしクートと一緒に居るには強くならないといけない。矛盾したジレンマが最近の彼女を苛んでいた。
「クートに何か用?」
「そっちこそクートの何?」
お互いの武器と相手への距離を測る。弓矢だと近過ぎる。槍だとやや遠い。ルカは何時でも矢を番える様に手を後ろへ。レナは槍の握りを緩める。柄の下の方を持てば射程距離を稼げるからだ。二人の間の緊張感が高まる。
「クー兄?」
其の時、宿屋の扉を開けて看板娘リコが出て来た。丁度宿泊客へ朝御飯を出してる所だったからだ。
「あ、ルカ姉、レナ姉。おはよう」
「おはようリコ」
「リコ、おはよう。クートは⋯」
「クートは何処?」
リコの闖入で本来の目的を思い出す二人。
「クー兄はまだ帰って来ないんだよ。たしかフラッペちゃんと一週間はもどらないんだって」
「一週間!?」
「い、一週間⋯?」
「フラッペちゃんて誰?」
聞き慣れない女の名前に反応する二人。他人に余り興味の無いレナと違い、メリッサから噂話等を聞いているルカが思い出す。
「確か魔法士ギルドの魔法使いだよね。ちょっと有名で⋯変人なんだって」
四十ぐらいの年齢らしいが見た目は年を取らないらしい。ルカの中でのフラッペちゃんが、実力も有る美少女魔法使いのイメージに成る。実際は美幼女であるのだが。
「変人⋯魔法士は変人が多いって聞くけど⋯」
「一週間かぁ⋯」
お互いに矛を⋯槍と弓を収める二人。クートに会えないのは残念だが、目安が解っただけ良いだろう。一週間なら後五日程で帰って来るからだ。
「うん。おでかけする前にクー兄に抱いてもらったんだ。帰って来たらまた一緒に寝るの」
顔を赤らめはにかむリコ。久しぶりに死んだ父親の事を思い出してしまったが、クートが慰めてくれた。優しく抱き締めておでこにキスをしてくれた。凄くぐっすりと眠れた。
「クー兄、優しくしてくれたんだよ」
「⋯ちょっと」
「⋯お話しよっか?」
帰宅しようと考えた二人が動きを止める。ルカとレナは宿に行き、朝の配膳を手伝った後、レンダから朝御飯を御馳走になったのだった。
「そうなんだ!二人ともクー兄と一緒に寝たことあるんだね?優しいよね、クー兄」
「う、うん」
「そ、そうだね」
リコの件はどうやら勘違いである事が判明してホッとしたものの、今度は違う意味でギクシャクし始める二人。
「あらあら、罪な男だね、クー坊も」
そんな若い二人を見て、宿の女将であるレンダは苦笑いをするのであった。
(*´ω`*)しゅらぁ〜ば!




