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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第42話

(*´ω`*)チョッパーの刃渡りは1メートルぐらいですかね?マグロの解体ショーとかで出る奴。

「重い」


 ズシリと重い⋯が―――


(手に馴染む)


 クートは新装備の具合いを確かめる。今居るフロアが広大なので軽く素振りもしてみる。


「ぬっ⋯」


 片手で振ると体が持ってかれる。此れを片手でプラプラさせていたフラッペが普通ではないのだ。


「仕方無いな。両手持ちか」


 クートはチョッパーを両手で握り込んで振り抜いてみる。ビュンッ!と風を斬る音が鳴る。気持ちが良い。


(早く使いたい)


 此れならゴブリンの首ぐらい簡単に落とせるだろう。オークの首は⋯難しいか?


(単純にパワー不足だな。此れを使う事に拘ると負ける)


 あくまで武器の一つとして使うのが良いだろう。見た目のインパクトは大きい。此れを大きく振り被り、わざと隙を見せて鋼糸の罠に引き込む。チョッパーを投げ付けて怯んだ相手の目をウルミで潰してナイフで急所を一突き。動かなくなった所で首を落とせば良い。此れで行こう。


「では〜下層へ向かう転送陣を〜〜〜⋯」


 ショコラが転送陣の起動準備に入る。其処にフラッペが待ったをかける。


「使わないっ!」

「えっ!?」

「使⋯えぇ〜?」


 ショコラとクートが驚く。まさかのダンジョン探索中止かとクートが落胆しかける。だがそれなら何故チョッパーを渡したのか?


「上から順番に一層一層クリアして行こうか」


 意外な申し出である。渡りに船だが疑問が残る。フラッペにメリットが皆無だ。馬車移動でも不満そうだったのだ。早く下層へ行きたいだろうに。如何なる理由であろうか?


「クート氏を見たい」

「!?」


 まさかの自分が理由だった。フラッペの顔を見る。彼女は真っ直ぐにクートの目を見つめており、ニンマリと笑顔を作る。


「ワクワクしてるのだろう?」


 其の通りだ。黙って頷く。


「自分の実力を試したいのだろう?」


 其の通りだ。口元がニヤける。


「一歩一歩進んで来た己の力が何処まで通じるのか試してみたくて仕方無いのだろう?」


 其の通りだ。手に力が籠もる。対モンスター用肉切り包丁チョッパーが震える。それを見たフラッペが満足そうに笑う。


「良いだろう。戦ってみよ若人よ。私は君を歓迎する。ようこそ魔法士ギルドへ」

「えぇ〜?キュート君魔法使えるのぉ〜?」

「クートです」


 使えない。魔法等使えな⋯


「使える」


 ⋯使える?


「此の探索で自分の可能性を模索してみろ。魔法が使える様になれば私のコネクションで口利きしてやる。初級魔法士なら直ぐだ」

「わわわぁ〜職権濫用ですよぉ〜⋯後ぉ〜話が飛躍し過ぎですからねぇ〜?魔法が使えるだけじゃぁ魔法士ギルドには入れないですから〜。功績かぁ〜研究成果かぁ〜論文かぁ〜上級魔法士以上の推薦状が必要ですぅ〜」

 

ショコラが間延びした声で説明してくれる。基本人手不足の冒険者ギルドと違い、良くも悪くも尖った連中が集う魔法士ギルド。ギルド会員に成るにはそれなりの手順が居るし、昇級試験も難しい。そもそも魔法使いに成るにはキチンとした教育が必要だ。誰の師事も無く魔法が使える人間は、其れこそ本当に才能の有る一握りの天才だけだ。魔法使いへ至る道は遠く、魔法士ギルドの門戸は固く閉ざされている。


「責任は私が⋯」


 フラッペは凹凸皆無のぺったんこの胸を逸らして告げる。


「取らないっ!」

「え?」

「此の場で一番地位の高いショコラ上級魔法士の責任とする。そしてショコラが推薦状を書け」

「えええ〜〜〜!?横暴だぁ〜〜〜!?」

「⋯あの、早く行きません?」


 話が違う方向へ行ってしまっている。クートは魔法士ギルドに入る入らないとかは其処まで別に興味は無い。其れより早くダンジョン探索をしたい。


「うむ。是非も無い。さぁ行こうか」

「えぇ〜?今の話題は放置ですかぁ〜」

「俺が殺して良いんですよね?」


 エンカウントしたモンスターは全て自分で仕留めたい。


(俺よりも強い人間に出しゃばられちゃ困る)


 フラッペは元よりショコラもクートより強い。防御結界魔法と云う固有スキルも使い方次第だろう。スキル食材鑑定ですら、知覚能力を底上げし、戦闘能力を向上させていた。防御に結界となれば即ち盾や鎧。盾でだって相手を殴り殺せる。鎧を着込んで体当たりすれば相手を潰せる。侮る理由等見当たらない。


「うむ。好きに殺り給え。上層でエンカウントするモンスターは食べ飽きた。素材は要らない。君の食材鑑定スキルの本領発揮は最下層に着いてからだな」

「キュート君てぇ〜もしかして危ない人ですかぁ〜?」

「クートです」


 モンスターを殺して良いと許可した途端に目を綺羅綺羅させ始めたクートを見てショコラが少し引いている。見た目は可愛らしいと思ったのに。流石はフラッペが連れて来ただけはある。

 そうして転送陣を使わずに階段を降りて下層へ向かう三人。ショコラはフラッペの真意を訊ねてみる。


「予定じゃぁ最新最深部を探索する筈じゃぁ〜?いったいどうしたんですぅ〜?」

「気が変わった」


 アッサリした答えであった。フラッペは目の前を歩くクートを見つめる。


「中々に興味深い人材だよ。元々はスキル食材鑑定を持つ新人が冒険者ギルドに入ったと聞いて、試しに使ってみようと思っただけなんだがね。思ったより面白い子だよ。だから見てみたい」


 善意ではなく興味本位である。クートの熱に当てられたとも言う。思い返せばフラッペも初級の頃は雑魚モンスターに追われて逃げ回っていた。死ぬ気で戦った。モンスター食が目的だったが倒すのにも一苦労だった。確かにあの頃は、戦い勝つ喜びが其処に有った。今は無い。只の作業だ。

 フラッペよりも強い者は居るが、其処と張り合いたい訳じゃない。だが強くなり、やれる事が増えて行く感覚は楽しかった。クートにも其れを味わわせたい。其の瞬間のクートを見たい。


「面白そうな子だから囲い込めば好き放題に出来るだろう」

「声出てますぅ〜」

「ふふふ、若い男を自分好みに育ててみたいとは思わないか?」

「ええ〜まぁ憧れますけどぉ〜」


 否定はしないショコラである。何方もまともな恋愛をせずに良い年になってしまった拗らせ処女である。同年代の成熟した男性ではなく、年下の可愛い男の子に目が向いてしまう。だから結婚は疎か恋人も出来ないのだが。


「ショコラもお零れに与れるぞ?クート氏は料理上手だ」

「そ、そんな事でぇ〜釣られませんからぁ〜」


 とは言いつつも、ショコラのぷるんとした唇の端から涎が滴り落ちる。クートはそう云えばそう云った固有スキルである。ショコラも料理は上手いが本職には負けるだろう。クートの手料理は中々に魅力的である。


「そして床上手だ」

「床上⋯?」


 キョトンとするショコラ。


「うむ。私も良く解らないがクート氏の噂にそう有る。きっと真実だろう」


 冒険者ギルドで根掘り葉掘りクートについて訊ねて得た情報である。


「着いた」


 階段を降りた。一歩踏み出し辺りを警戒するクート。目の前には早速モンスターが居る。殺す。殺せる。


「おお、早速か。殺ってみたまえ床上手クート氏」

「頑張って下さい〜床上手キュート君〜」

「なんて?⋯まぁ良いか」


 アラフォーアラサー凸凹魔法使いが何か言ってるが今は気にしてる余裕が無い。クートは一気に踏み込み接敵し⋯


「先ずは、試し斬りだな」


 そしてチョッパーを振り被った。

(*´ω`*)チョッパーチョッパーチョッパッパー

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