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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第3話

(*´ω`*)おぱようございみゃす!

「まだまだまだまだまだまだだっ!」


 ザクザクザクザクと薬草を刈り取る。

 町近辺の森の中。クートは冒険者となってから毎日、ひたすら薬草採取を続けている。

 クートと同時期に冒険者となった者達とチラホラ出会うが、特に挨拶も無く無関心を貫く。

 Gランク同士では未だパーティーを組む事が出来ず、単に競争相手でもあるからだ。

 そんな中、クートに近付いて来る者が居た。


「⋯⋯⋯ちょっと」

(まだだ。まだ足りない)

「ちょっとー」

(功績が足りない。でも生えて来るまで数日は掛かるし、そもそも一日の納品量は決まってる。他の群生地を探すと時間も手間も―――)

「ちょっとってばっ!」


 かなり至近距離から声を掛けられ、クートがビクリと震える。

 バッと立ち上がり声のした方を向く。


「誰?」

「やっとこっち向いた」


 目の前には同い年ぐらいの女の子が居た。髪は短くズボンを穿き、男の子の様な格好だが胸は膨らんでいるし体付きも丸い。恐らく同い年だろう。冒険者には成人しないと成れない。


「何か用?」

「アンタ一人で薬草取り過ぎだよ?」

「そうなのか?」


 確かに革袋は毎日パンパンだ。

 薬草採取は量と質が設定されており、毎日一定量しか納品出来ない。

 確かに手当たり次第採取しているが、取り過ぎると云う事も無い筈だが⋯


「もしかして縄張りとか有るのか?」


 今会話してる自分達二人の他にも、森の奥や草むらの方に小さい人影が見える。皆成人したばかりの少年少女達だろう。クートもそうだが、基本的に栄養が足りてない平民は皆小柄だ。


(やべっ。夢中で遣り過ぎたか?)


 故郷の田舎でも山菜や茸を取り過ぎると怒られた。


「ああ、もぉ。そうじゃなくて⋯」


 女の子は髪を手でぐしゃぐしゃしようとして⋯手が泥塗れなのを思い出し、頭の横でワキワキと動かす。


「もしかして⋯Fランク目指してるの?」

「え?目指してないのか?」


 Gランク⋯つまりは新人冒険者は兎に角昇格しなければ話にならない。

 モンスター討伐クエストもダンジョン探索クエストも受注出来ない。

 冒険者には下位ランク冒険者を保護する義務が有る。勿論自身の命より優先しろと云う程強力なものではないが。一応金銭も発生する。つまり、クートや目の前の女の子がモンスター討伐やダンジョン探索に勝手に向かった場合、先輩冒険者に捕まる可能性が有る。

 保護と云うより補導に近い。ランクに見合わぬクエストを勝手に行った者はペナルティを受けるし、そう云った無茶をする若者をギルドに引き渡せば一定の報酬が出る。

 なのでクートは今すぐモンスター討伐やダンジョン探索に向かいたい気持ちを抑え、ひたすら薬草採取に精を出していた訳だ。


「あたし達はさぁ、まぁスラムで暮らしてんだけど」


 女の子がチラリと他の者達に目を向ける。皆姿は見窄らしく、平民の中でも貧困層なのは解る。クートも似た様な格好だが。


「薬草は微妙に質の悪いんとか、微妙に量が足りんのを納品してんだ」

「え?なんで?」


 個人が一日で納品出来る量は決められている。緊急で大量に必要な場合は別枠でクエストが発生する場合も有るが、そんな時は新人以外も受注可能だ。

 量が決められている以上質を上げるしかない。刈り取る時に優しく扱ったり、なるべく直ぐに納品したりとかだ。後気持ち多目に納品してもいる。

 そうした気遣い、仕事への丁寧な姿勢も評価対象だ。評価基準は部外秘なのでクートは知る由も無いが、実際正確で丁寧な作業をする彼の評価は高い。

 後もう少しでFランクに昇格する。


「評価を上げない為だよ」


 女の子の答えにクートは混乱する。


「強制的にFランクになったら薬草採取が出来なくなる。だからってモンスター討伐やダンジョン探索なんて出来ねぇーもん」


 女の子が自分の体を示す。栄養の足りない痩せた体付き。少ない筋肉。腰にはナイフ一丁。

 ゴブリンにすら敗けるだろう。


(俺もか)


 クートは田舎でモンスターを倒した事は有るが、他の大人達も一緒だった。

 子供の中でも素早く力の強いクートがトドメを刺す事が有ったが、だからと云って自分一人だけで倒せたとは思っていない。

 考え込むクートに女の子は暫く視線を向けていたが溜め息を吐き出す。


「はぁ⋯まぁいいや。余計なお世話だったな」


 もしも困ってたりしたら仲間に入れてやろうと思っていた。食うに困って田舎から出て来て冒険者になる成人済みの者は居る。そして薬草採取に頑張り過ぎて強制昇格し、モンスター討伐クエストしか受けられない事に愕然とするのだ。

 余りに必死そうなクートを心配したのだが、クートは昇格を望んでいた。クートがモンスターに勝てそうには見えないが、其処まで口出しするのは野暮と云うものだろう。


「いや、待って」

「何?」


 クートは微笑む。


「心配してくれたんだろ?有り難う」

「うっ、そんなんじゃねぇー⋯よ」


 女の子はそっぽを向いて離れて行く。


「⋯ルカ」


 女の子⋯ルカがボソリと呟く。


「アンタは?」


 少し頬を赤くしたルカが訊いて来る。


「クート」

「そ。クートも気を付けてな」


 そう言ってスタスタと歩み去る。

 

「そうか。モンスターか⋯」


 ルカの心配は要らぬものでは有ったが、クートに新たな気付きをくれた。

 今のままでは冒険者として活躍出来ない。

 

「俺、このままじゃ駄目だな⋯」


 薬草採取に半日を使っている。

 食事は一日一回、後は眠るだけ。

 

「鍛えないと⋯素振りでもする⋯剣なんか無いしなぁ⋯」

 

 食べ物、武器、時間、経験―――全て足りない。


「腹減ったな」


 毎日やっている為に考え事をしながらでも薬草を摘み終えてしまった。

 帰路に就きながらふと思う。


「薬草って美味いのかな?」


 採取した薬草を一枚取り出し口に入れてみる。


「苦っ―――」


 食えた物ではなかった。

 しかし我慢して咀嚼する。

 昔高熱を出した時に姉に飲まされた薬に似ている。


「⋯ごくんっ⋯いや、怪我や病気って訳じゃなし、食っても意味無いよな⋯」


 余りの苦さに空腹を紛らわす事は出来た。


「はぁ、くそ。口に残るな。苦くて不味っ―――」


 ふと違和感に気付く。


「ん?」


 周りを見回す。


「見える⋯解る⋯」


 目に見える範囲で、薬草の生えている位置が解る。


「それだけじゃ、ねぇ」


 大木や茂みの向こう側の、見えない筈の位置に薬草が生えている事も⋯何故か解る。


「匂い?気配?」


 クートが知る由も無かったが、それは魔力感知。

 魔力は生物無生物問わず万物に宿る。

 便宜上魔法が使えない一般人を魔力無し等と云う事も有るが、本来の意味で魔力が無い者は存在しない。


「なんで?俺のスキルは食材のみで薬草鑑定なんかじゃ⋯いや待てよ?」


 鑑定系スキルには薬草鑑定や毒薬鑑定も有る。

 クートの食材鑑定では薬草は対象外の筈である。

 しかし、スキルとは人間が獲得した可能性を解り易くカテゴライズしただけに過ぎない。

 盾術スキルの冒険者が剣の勝負で剣術スキル持ちに勝利出来る様に、食材鑑定スキルが他のスキルを超える事も⋯有る。

 境界は曖昧で、人の可能性は無限大だ。


「⋯⋯⋯俺が、薬草を食べた⋯から?」


 いや、薬草を食べた事は有る。

 煎じた薬を飲んだ事も有る。

 だがこんな風にはならなかった。

 あの時と今の違いは何だろうか?

 答えは―――


「俺が、食材として、認識した、から?」


 ドクンドクンと心臓が脈打つ。  

 絶望した自分の固有スキル。

 冒険には役に立たない非戦闘スキル。

 もしかしたら此れは⋯


「いや、何にもならないか?だが、待てよ⋯」


 明日からは薬草採取に時間を取られないで済む。

 時間が余れば⋯鍛えれば良い。

 もしくは他の仕事をして金を稼げば良い。


「⋯よし」


 クートは自分に出来る事を一つずつやって行こうと改めて誓ったのだった。

(*´ω`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!

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