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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第10話

(*´∀`*)おぱようございみゃす!

「さて、今日も殺るか」


 クートは新品の革鎧をバシンと叩く。鉄の鎧の方が安全性が高いが、今のクートでは持て余すだろう。急所をガード出来る革鎧で十分である。そもそもお金に余裕が無い。

 革鎧の上から外套を羽織る。大人用で少しブカブカだが構わない。直ぐに身体は成長するだろう。してくれと思う。


「雨か」


 防水加工と云うか、撥水性の有る素材で出来ている物だ。革鎧より高かった。フードを被り森の奥へと進む。

 あれから順調にゴブリンを狩れている。討伐数は計三十四だ。

 一匹も出会わない日も有るが、薬草採取より割高なので食うには困らない。基本討伐数は十体が目安だが、魔石一個でも引き取ってはくれる。

 ゴブリンは狩っても狩っても湧いて出て来るので、狩り過ぎて他の冒険者の顰蹙を買う事も無い。

 

「ダンジョンはまだ早い、か⋯」


カヤルに言われた事を思い出す。


「クート君。危ない事はしないでね?ダンジョン潜ったりとか」

「はい、まだ早いですもんね」

「潜らないでね?」

「まだしませんよ」

「新しくFランクになった子が居るんだけど、君みたいに無茶しないと良いんだけどねぇ」

「あはは⋯」


 カヤルとはランチデートをした。カヤルの昼前休憩に合わせて一緒に食事をしただけだが。クートが料金を出すと云うと渋々奢らせてくれた。

 カヤルが心配してくれるのは有り難いが、冒険者がクエストをしなくては冒険者ギルドも困るだろうに。

 固有スキルの所為で自己評価が低いが、クートの評判は実は悪くない。

 食材鑑定スキルでゴブリンを三十も狩れれば一端のFランクだろう。勿論前衛としては期待されていない。あくまで後衛職としてだが。

 行く行くは何処かのクランの輜重部隊に入るにしても、冒険者なら自分の身ぐらい守れなければ話にならない。

 Fランクでは討伐可能なモンスター、探索可能なダンジョンが限られる。

 順当にEランクに上がれば何処かのパーティーから声が掛かるだろう。


「居ないな。雨だからかな?」


 フードの奥から目を細める。森の中は暗く不気味である。


「がぶっ⋯しゃぐしゃぐ⋯」


 パンと干し肉と林檎を齧る。味も食べ合わせも気にしない。取り敢えずのエネルギー補給だ。


「ん?」


 何か物音がする。気配もする。此れはゴブリンだ。


「見つけた」


 クートが走る。雨音で足音が紛れる。雨のお陰で匂いも紛れる。油断はしないし慎重には動くが、迷い無く気配のした方へ向かう。


「居た、見つけた」


 懐のナイフを握る。ゴブリンが背を向けている。否、背を向けていると云うより、地面に対して蹲る様な姿勢だ。何か食べているのだろうか?


(どうでも良いけど)


 クートは走り込む勢いのままナイフをゴブリンの首筋に突き入れる。最初の頃は安全確実に胴体を狙っていたが、今なら首を狙えるぐらいに経験を積んだ。

 ゴブリンは動脈を切られ出血し、慌てて此方を振り向く。遅い。クートはナイフを捻り空気を入れ傷口を開く。ゴブリンは悲鳴も上げずに絶命した。


「ん?」


 その時気付いた。ゴブリンの下に人間が居た。半裸の女の子だ。


「あ⋯うっ⋯ひっ⋯」


 上着を破かれズボンを破かれ、顔は殴られたのか出血して腫れていた。

 ガチガチと歯を鳴らして震えているのは雨に濡れているからではないだろう。


(困ったなぁ。まだ狩りたいのに)


 クートは困った。ゴブリンは鼻が良いので、雨の日は狩り時だと思ったのに。しかし考え直す。雨の日はゴブリンも外出を控えるだろう。実際今日も漸くエンカウントしたのが今の一匹だ。

 クートは倒したゴブリンの心臓部から魔石を取り出し、雨に晒して綺麗にする。

 其処で漸くゴブリンに押し倒されていた女の子をマジマジと見た。


「ルカ?」

「クー⋯ト?」


 フードを外して目を合わす。それは何時か話し掛けて来たGランク冒険者の少女だった。


「⋯うわっ!うわああああんっ!あたしっ!あたしっ!もぉ駄目だってっ!思っ―――」

「ルカ、大丈夫。もう大丈夫だから」


 見た感じ、最後の一線は越えられていない様だ。ズボンは破かれていたが下着は穿いている。クートは間一髪で間に合った様だ。

 抱き着いて泣きじゃくるルカの背中を撫でてやる。腰のポーチから薬草を取り出す。


「染みるけど我慢ね?」

「痛っ⋯うぅ」


 搾って滲み出た薬草の汁を顔に塗る。取り敢えず立ち上がらせて外套を着せる。


「こっちかな。有った有った」


 先程見つけた木の虚の所まで戻り、其処に二人で入る。雨脚が強まって来たが、間に合った様だ。


「⋯寒い⋯」


 持っていた食料を食べさせ様とするが首を振られる。体の震えが止まらない様だ。今度は雨に濡れて体力が消耗してるのも有るだろう。


(仕方無い)

「クート?」

「もっと寄って」


 革鎧を脱ぎ、羽織らせた外套に自分も入る。肌を合わせて体温を伝える。ビクリと震えたルカだったが、ギュッと抱き締めたら大人しくなった。


「⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


 雨の音を聴きながら二人で体を寄せ合う。人肌を感じて落ち着いたのかルカが喋り出した。


「あたしさ⋯スラムの孤児院に捨てられてたんだ」


 物心付いた頃から、皆で力を合わせてなんとか生きている事。成人になったので冒険者になってみた事。戦闘職⋯弓術のスキルを鑑定された事。


「弓術」


 クートの顔が一瞬固まる。劣等感を刺激されたからだ。しかし今のルカにそれに気付く余裕は無い。


「あぁ、昔から的当ては得意だったんだ。あたしお祭りとかで百発百中でね」


 しかし弓矢を買うお金も、訓練を受けられる余裕も無い。それで薬草採取を手を抜きながらこなしていたらしい。しかし、間違って薬草採取クエスト受注上限に達してしまった。

 彼女もクートに遅れて強制的にFランクに上がってしまっていたのだ。


「クートの話⋯聞いてさ」


 戦闘職でない新人冒険者が速攻でFランクとなり、順調にゴブリンを狩り続けている。それを聞いたルカも挑戦してみたのだ。モンスター討伐クエストに。

 そして今日、ゴブリンを一匹見つけて戦ってみた。

 弓矢等無い。手頃な石を投げ付けた。当たった。血が出た。しかしそれだけではゴブリンを倒せなかった。怒らせただけだった。


「そう云うものか」


 クートもその話を受けちょっと衝撃を受けていた。戦闘職スキルは皆万能だと思い込んでいた。

 武器も経験も足りなければ何も出来ないのだと漸く悟った。


「クート⋯」


 ルカが怯えた中に覚悟を秘めた瞳でクートを見つめる。


「お願い⋯」

「ルカ?」


 ルカは破かれた衣服を脱ぐ。最早ボロキレの様な物であったが、裸身を露わにする。


「クート⋯忘れさせてよ⋯」


 あのままだったら確実に犯されていた。巣穴に連れ去られたらゴブリンの子種で孕んでいただろう。そして死ぬまで犯され続けていた筈だ。

 その事を考えると発狂しそうになる。


「あたし⋯このままじゃぁ、帰れない⋯母さんに、皆に心配掛けちゃう⋯」


 母親代わりの孤児院の院長はルカが冒険者に成る事に反対していた。しかし今成人しているのはルカぐらいなのだ。働かない訳にはいかない。モンスター討伐も怖いがしなければならない。

 今此処で、今日の恐怖は乗り越えなければならないのだ。

 此のまま孤児院に帰ったら、部屋に引き籠もって外に出れなくなるだろう。


「クート⋯」

「ル―――」


 二人の唇が合わさる。その時ほんの一瞬だがルカの体の震えが止まる。ドクンと心臓が脈打つ。現実感が無いままにクートがルカを押し倒す。

 その心に有るのはルカへの優しさや思い遣り等ではない。性欲や劣情ですらない。有るのはドス黒い劣等感と身を焦がす様な優越感だけであった。

(*´∀`*)大穴ダークホースルカちゃん、一着万馬券でふ。

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