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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第98話 シェラザードの事情

(*´ω`*)シェラザードさんの独白が長くなっちゃった。

 シェラザードはクートを侮っていた。いや、相手が格下で自分が格上である以上、実力差を解らせて勝利せねばならなかった。だから最初の一撃は甘んじて受けたのだ。新人冒険者の体当たりぐらい受け止めて、甲冑組手の技にて絞め落とすプランだ。しかし実際は間合いに入られた時点で詰んでいた。予想よりもクートの動きが速く、読み切れなかったのも有るが、形振り構わず勝つつもりなら其れこそ話し掛けたりせずに不意打ちを仕掛けている。騎士道精神に反する為、彼の正当性を失う事に成っただろうが。


(くそっ⋯直ぐに回復出来そうにない⋯)


 其のボーナスタイムをクートは逃さなかったのだ。避けられる心配の無い初撃に、クートは未完成で不発に終わる可能性の有る奥の手をぶつけた。


(何をされたのか全く解らない―――騎士団長の使う体術に似ていたが、いや⋯)


 騎士団を辞めるまで一勝も出来なかった上司を思い出す。


「一応言っとく。今日勝ったからって、あんたより強いとかなんて思わないよ。もう一度やれば今度は負けるしね」

「謙虚だな⋯」

「事実さ」

(⋯⋯⋯真剣勝負の実戦なら再戦等は無い。そう云う事か)


 ゼロ距離から背中を合わせて発動する鉄山靠。必要なのは密着する程の間合い。此の条件を詰めるのが一番難しい技なのだ。もう一度やればクートが負けるだろう。近寄らせて貰えない筈だ。剣の間合いでは絶対に勝てない。しかし勝負は一期一会。クートが勝った。其れが全てだ。


「レベリアを、助けてくれ」


 其れでもしつこく食い下がるシェラザードを冷たく見下ろすクート。


「別に酷い目には遭わせないさ。何勘違いしてるのか知らないけど。俺は女を蔑ろにした事は無い」

「其れは⋯」


 其れは、そうなのだろう。クートと関係を持ったらしき女性達からはクートの嫌な話を聞かない。相当に床上手なのか、噂と違い女性を大事にしてるのだろうか?王侯貴族だけでなく、力の有る商人や冒険者、つまりは平民でも妻を複数持つ者達は居る。此の弱肉強食の世界では、女性側も力有る男を打算的に求める。例え一番に成れなくても、衣食住と金銭的な安心感を得られるならと重婚を望む者達は居る。


「其処に、愛は有るのか?」

「はぁ?⋯はぁ、はいはい愛してる愛してる。レベリアも愛してる。此れで良い?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

(一夫多妻⋯⋯私には馴染めない習慣だな)


 シェラザードは第一夫人の子供だった。しかし、父が本当に愛していたのは第二夫人だった。真の愛を得られず失意のまま母が死に、本当に愛する第二夫人と其の娘が実父と仲睦まじく暮らす姿を見ていられなかった。居場所が無いと感じ家を出た若きシェラザード。其の後は騎士団に入り剣に生きた。下働きをしていた今の妻と出会い恋仲に成った。プロポーズもした。勘当同然の自分には身分違いの恋等関係無いと思っていた。しかし、其処にある知らせが来た。爵位が上の娘と結婚し家を継げと云う無茶苦茶な話だった。何故だと憤る。自分は邪魔者だった筈。反面、もしかしたら自分は実は必要とされていたのかと希望を持つ。しかし、真相を知って心底落胆した。父と第二夫人がシェラザードを呼び戻そうとしたのは、可愛い愛娘に恋愛結婚させる為だった。娘に自分達の様な悲しい思いをさせない為に、息子に其の悲しい思いを押し付ける腹積もりだったのだ。断りの手紙を送った後、圧力が掛かり恋人と引き裂かれそうに成ったが、腹違いの妹が根回しをしてくれ、助けてくれた。腹違いの彼の妹だけは本当の家族だったのだ。そして駆け落ち同然で此の町へとやって来た。


「私に免じて、頼む」


 レベリアは未だ幼く、貴族令嬢としての気分が抜けていない。男を知った後にどんな風に成るか解らない。しかし望まぬ妊娠や結婚の可能性が有る行為をするにしては、クートは相応しくない。何れ貴族に返り咲くつもりなら綺麗な体で居た方が良い。此の国は未だ処女信仰が強い。未婚の貴族令嬢が乙女でない事は、平民には考えられない程のマイナスイメージに成る。


「はぁ、解りましたよ」


 クートが溜め息を吐き出し、遂には折れる。


「そ、そうかっ!有り難うっ!」


 シェラザードが喜色を浮かべるが、其れは長続きはしなかった。


「だけど条件が有る」

 

 クートがシェラザードの耳元で小声で呟く。シェラザードも小声で応える。


「聞こう」

「違う女を寄越せ。居るかい?アンタに嫁や娘や妹が」

「――――――――――」


 クートの言葉に凍り付き固まるシェラザード。嘘は、許されないだろう。


「⋯⋯⋯居る」

(何故私に妹が居ると?⋯まさか調べて?いや、しかし⋯)


 シェラザードが正直に答える。平民だが愛する妻。可愛く育っている娘。自分が野に下る事で家を継ぐ事に成ってしまった腹違いの妹。


「そのどれかと交換なら良いよ。全員とは言わない。一人には一人だ。じゃなきゃぁフェアじゃないしな」

「⋯⋯⋯⋯」


 此の提案は当てずっぽうでしかなかった。クートにも故郷に姉が居る。年上の女性への甘え方が上手いのは其れが大きい。シェラザードは妻子持ちなのは知っている。レベリアを異性として見ていない所から、故郷に妹でも居るんじゃぁないかと考えただけである。そして其れは大当たりであった。


「本当なら俺が選びたいけど、あんたに選ばせてやる。どれと交換する?嫁?娘?妹?弟とかなら要らないよ。女で頼む」

「ま、待て」

「待たない。早くしろ」


 クートが急かす。ギルド職員の介入が有れば今回の決闘が有耶無耶にされてしまうかも知れない。其れだけは許容出来ない。レベリアはもうクートの女なのだ。レベリアをどうしようがクートの自由なのだから。


「如何する?赤の他人と、自分の家族。どっちを選ぶ?俺はどっちでも良いぞ。あんたの家族なら良いスキルを持ってそうで美味そうだ」

「頼む⋯他の、他の条件を―――」

「なら此の話は終わりだ」


 他に女の知り合いも居るが、クートが其れでは納得しないだろう。シェラザードにとっての大切な女性でなければ意味が無いからだ。


(金や、其れ以外の物はどうだ?いや⋯)


 どれも効果は薄いだろう。救いを求めて周囲を見回す。野次馬達は面白そうに見てるだけで誰も助けには来てくれない。それにもう解散ムードだ。今は昼時で仕事に行く途中だった者も多い。余興や茶番が終わったのならもう用は無いのだろう。次々と人が居なくなって行く。


(誰か、レベリアを助けてくれっ⋯)


 誰も居ない。冷たいと思ったが、そもそもレベリアは嫌われている。進んで排斥したり吊るし上げたりはしないが、何時か痛い目に遭えば良いと思われている娘だった。其れが今日だっただけだ。以前も似たような事が有った。複数人相手に乱闘に成り掛けた時、シェラザードと他数人が割って入り事無きを得た。其の時勿論彼女をパーティーへと誘ったが断られた。恩を仇で返す様な彼女の振る舞いに怒る仲間達を宥めるのに苦心した。


(あの時、無理にでも仲間にしていればっ!)


 しかし其うは成らなかった。レベリアの目的は御家再興。シェラザードが懇意にしてるグループは実家や元実家とは縁を切った貴族、元貴族の冒険者達。思想が真逆なのだ。相容れる筈が無い。


(もう無理なのか?)

「無理だって。皆興味無いよ。俺やあんたや没落貴族令嬢の事なんか。飯食って酒飲んだら忘れるさ」


 縋る様に周囲を見回すシェラザードに、クートはやや同情して声を掛けた。

(*´ω`*)シェラさんもう出て来ないと思うけど。多分。クートと和解とかもしないでつね。心配してレベリアに話し掛けたりはしそうですけど、頭が残念なレベリアは、シェラザードを小言が多いオッサンとしか見てないです。可哀想に。夢に執着する事を止めろ諦めろと言う大人なんかうざいですからねー。

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