第96話 対シェラザード戦
(*´ω`*)クートは将棋で戦ってる最中に将棋盤を投げ付ける様な勝ち方をします。
クートがレベリアを辱めようとしてるのは明白だ。今のレベリアには意識が無い。健全な男女の営みと呼ぶには些か無理が有る。しかしお互い決闘の前に条件を話し合っていた。ギャラリーにも聞かせる様に大声で。
「へへ、あのエロガキも流石に今回は分が悪いな」
「どうかなぁ、あの貴族野郎もムカつくし、どっちが負けても楽しいなオイ」
「じゃぁ二人共ボコボコになって共倒れが一番だな」
「俺酒買ってくるかな。良い見世物だぜこりゃぁ」
ギャラリーが期待を膨らませ野次を飛ばし出す。静かに熱狂が広まりつつある中、クートの目は冷たく眼前の敵を睨み、底冷えする程の低い声音で言葉を紡ぐ。
「俺が勝った。俺が狩った。此れは、俺の獲物だ」
「女性は物じゃないぞ。困ったな。話が通じないな。仕方無い」
シェラザードが溜め息を吐き出しマントを外す。彼の装備が明らかに成る。革製の軽装鎧に腰に剣。見るからに剣術スキル持ちの剣士の出で立ちである。
「私が勝ったら彼女を返して貰おう」
「良いだろう」
クートが了承する。誰だと訊ねたが知ってはいた。元貴族の冒険者シェラザード。
(なら此奴も武器破壊術を使えるか。厄介だな)
「丁度良い。此奴じゃぁ物足り無かった所だぜ」
クートはレベリアを地面に寝かす。レベリアは良く眠っている。実は最近は空腹でやや寝不足だった。お腹いっぱい食べた事と、体を良く動かした事、後はクートに負けた精神的ショックでぐっすりと眠りに落ちていた。自分を巡って二人の男が激突する場面なのに非常に呑気である。
「くぅっ!何よあの女っ!私もシェラ様に助けに入って貰いたいっ!」
「えー妻子持ちじゃん?ナシナシ」
「⋯うーん、あの二人に取り合いされたい⋯かも?」
「え?そう云う話だっけ?」
レベリア戦よりも盛り上がりを見せるギャラリー達。酒場から酒とつまみを持って観戦にやって来る暇人も居る。女を喰いまくる女っ誑しの新人対元貴族の妻子持ち美形剣士。中々に好カードである。
「ふぅ。君の鼻の頭もへし折らないと成らないらしいな」
シェラザードがそう言って腰の剣を引き抜く。
「やってみな」
クートの闘争心に火が着く。折角手に入れた女を横から掻っ攫おうとして来る男。しかも戦闘職。
「其の剣で俺の武器を破壊するつもりか?」
レベリアよりも洗練された構えを取るシェラザードに問い掛けるクート。
「其れで戦意喪失してくれたら有り難いんだがな」
「お前の望み通りにはしない」
明らかにレベリアよりも強そうだ。今度はチョッパーも破壊される。其れでは割に合わない。食材鑑定持ちの本能としては、長く戦ってシェラザードのスキルを学べと言っている。此の相手を喰えと言っている。しかし、男としては違う。
「俺の女に手を出すな」
男の本能が叫ぶ。自分の女に手を出した敵は叩き潰せと。
「君の物ではあるまい。人は誰の所有物にも成らない」
「綺麗事だな、御貴族様」
レベリアとは取引が完了している。そしてクートが勝った。なので彼女との約定に依りレベリアを抱く権利を得ている。ちゃんとした決闘だ。そもそも⋯
(レベリアが負けてから口出しして来たのが気に食わねぇ)
他人に守られたい訳ではないが、クートが負ければ放置した筈だ。今レベリアの意識が無いのも有るだろう。レベリアのプライドの高さなら、シェラザードが手を差し伸べても払い除けた筈だ。気絶してる今が絶好のチャンスなのだろう。しかし、其れはクートにとっての悪手だ。
(敵だ。俺にとっての敵)
シェラザードは先輩冒険者だ。恐らくは剣術スキル持ちの戦闘職。劣等感は持つが敵意は持てない。尊敬すら出来る相手だ。しかし敵に回るなら話は別だ。
(―――ぶち殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す―――)
手槍の用意をする。合掌した両手を突き刺し加熱と冷凍を放ち爆裂させる技だ。隙も溜も大きく避けられると面倒臭いが、捨て身で特攻すれば躱し切れまい。そもそもシェラザードは受けの構えを取っている。初撃は譲ってくれるしい。随分と舐められている。ならば良い。魅せてやる。ブラックファングボアもオーガも此れで止めを刺した。クートの一番高火力の正に必殺技である。が―――
(⋯⋯⋯のは、流石に不味いか)
手槍は手加減出来る類の技ではない。此方もダメージを負うが確実に仕留める大技だ。
(しかし相手は格上。半端な攻撃にはカウンターが飛んで来る)
チョッパーやウルミ、手斧にチャクラム。どれも決め手に欠ける。鋼糸は搦手に使うのが基本で正面からの決闘には不向きだ。仕掛けた罠はレベリアに一度使ったし、もしもあの時に見られていたら通用すまい。
(熱衝撃拳は?いや、さっき見られてるか)
其れに半端な威力じゃ封殺される。しかし高威力の技だと殺してしまうかも知れない。打つ手が無い。奇襲や不意打ち、罠設置をする時間が無いとこうも不利に成るとは⋯
(―――⋯⋯⋯アレなら、行けるか?)
一つだけ有った。未完成ながら高威力且つ、決まれば即決着の決め技が。
(しかし出来るか?)
未完成なのは一度も人間に使った事が無いからだ。だがしかし⋯⋯⋯
「シェラザード」
「何かな?」
クートが問い掛けてもシェラザードは動じない。どの様な奇策を用い様とも完封する自信が有るのだろう。油断ではない。経験から来る確信だろう。
「間違っちゃいねぇよ。アンタは強い。レベリアよりも、俺よりも。俺はアンタみたいな戦闘職、剣術スキル持ちに憧れてた」
「其れは光栄だね」
お喋りしながらもシェラザードはクートから目を離さない。未だ弱く未熟だろうともレベリアは其れなりには強かった。全く懐いてくれなかったが、手の掛かる妹の様に感じていた。彼女の評判が下がる度に皆をフォローしていた。或いは実家に置いて来た妹と重ねていたのかも知れない。其の自覚も有る。完全なる自己満足だ。今回も何時もの様に助けるだけだ。以前も、レベリアの態度に怒った冒険者が彼女を襲ってやると豪語した。其の冒険者を呼び出し人知れず決闘にて解決した。
(今回も、同じだ。だが彼も未だ若い。上手く勝たねば⋯)
家族が居るシェラザードは、実力は有るが危険なクエストには赴かない。其れと比べ、魔法士ギルドともコネクションを持ち、ソロでガツガツとモンスター討伐を繰り返すクートは将来性が有る。彼を潰すのは彼自身の為だけでなく、自分の立場も危うくする事に成る。ギャラリーも見てる中、クートの評判も落とさず、自分の立場も危うくせず、レベリアの身の安全を確保せねばならない。
(最善策は武器破壊。次善策は甲冑組手に依る制圧。絞め落として意識を奪う)
シェラザードは剣を正眼で構え、クートがどの様な攻撃をして来ても対処出来る様にする。
「あんた等騎士様の弱点だな」
「何の事だ?」
「受けたり捌いたり攻撃に合わせた後の先を取るカウンター。其れが真骨頂か」
「騎士に成りたいのか?」
「いいや?全然。俺は只―――」
クートがふわりと動く。
「あんたの敗因を教えてやってるだけさ」
(*´ω`*)相手が舐めて手加減してくれてる内にボコボコにするのが必勝法。




