交差する舞台
白峰ちゃん大活躍!
赫弥たちとヴェルグが遭遇する数分前...
紅月は木々が鬱蒼と生い茂る森の中で走り回り、魔物と生徒を見つけ次第撃退し続けていた。
「もう一人見っけ!」
彼女の目の前二十数メートル先で魔物に襲われているA組生徒を見つけた。
倒した魔物は三体。救助した味方は七人。撃破数だけなら赫弥や燐に劣る。だが支援点数では、現時点で誰よりも上を走っていた。
「『血晶兵装』!」
紅い血が空中で結晶化し、一振りのハルバードへと形を変える。
一閃。魔物を両断した勢いのまま、紅月は軽やかに宙を舞う。
「桜庭さん、大丈夫?」
「セゼさん!ありがとう、平気よ!」
「ならよかったわ!」
返事を聞くや否や、紅月はもう次の気配を探して走り出していた。
向かう先には5~6匹ほどの魔物の気配。だがそれ以上に、頬をかすめた一陣の風が彼女の足を止めた。
(別にこれなら支援なんていらないかしら?)
「風織『烈風』!」
途端、強風が髪と森をなびかせ、目の前にいる術者の姿をあらわにする。
「やっぱり、セゼさんならこの授業の趣旨を理解してると思いました!」
祈るような体制から立ち上がり、白峰は紅月のほうを向く。
「でも結局、救援は余計なお世話だったわね、つむぎさん?」
「えへへ、そりゃまあ私、強いですから!」
(...反則よそれ...可愛いっ!)
「ン゛ンッ...まあその様子だとアナタも...」
「もちろんです!ちゃんと助けられる人は助けて、倒せる相手は倒してます!」
「ならここからは協力戦と行きましょう!赫弥とナナトの成績、抜かしてやるわよぉ!」
「おぉー!」
「二人ともカワイイしキレー!お名前は?どんなスキルが使えるの?」
直後、二人に見知らぬ声がかかる。
軽薄で、人懐っこい声。だが、その奥に潜む魔力だけは、底の見えないほど重かった。
(『血晶兵装』)(風織『迅』)
紅い結晶が紅月の手のひらで武器を成し、白峰の足元では風が渦を巻く。
「武具の傀儡」
途端、彼女たちの周りを大量のトランプが覆う。
一枚一枚が意思を持つように舞い、瞬く間に視界を真紅と黒で塗り潰していく。
「この目くらまし、私と相性悪いですよ?『旋風』!」
白峰を中心につむじ風が広がる。あたりに飛び交っているトランプはすべて風に運ばれ、二人の視界をより鮮明にする。
((いないッ...!))
そこに立っているはずの少女の姿は、跡形もなく消えていt
「同族同士仲良くしようよー♡」
吐息がかかるほど近くで、その少女は囁いた。いつの間に背後へ回ったのか。
彼女は紅月へ寄り添うように立ちながら、巨大なバトルアックスの刃を白峰へ向けていた。
紅月が忠告するよりも早く、白峰は前転の勢いで足を振り上げ斧を蹴り飛ばす。
宙でくるりと一回転。
逆さになったまま両腕を交差させ、獣が獲物へ飛びかかるような構えを取る。
「猫装『爪』!」
白峰の両腕が白い毛に包まれ、手にも猫の肉球と爪が広がる。
風を足場にもう一歩踏み込み、少女と切り違う。
一拍遅れて、少女の胴に斜め一文字の裂傷が走った。
「そっちの娘は吸血鬼のハーフ、こっちは獣人なんだぁ♡二人ともかわいいわけだぁ♡」
少女の体につけられた傷からは、血ではなく無数のトランプが零れ落ちたが、全てがひとりでに傷口へ吸い寄せられ、瞬く間に裂傷を縫い合わせる。
「そういうあなたもキレイじゃないですか?」
「そうね、この世のものじゃないくらいには...アナタ、お名前は?」
白峰の会話の切り出しをもとに紅月が問いかける。
少女はこの問いを待っていたといわんばかりに、嬉しそうにステップを踏み、舞台役者のように両腕を広げる。
「私はリゼット!魔王様直属『五骸』が一柱、宮廷道化師と舞台監督を任されてるんだ!」
「私は優しい道化師さんとは喧嘩したくないんだけどぉ...」
「一旦、学校に来てゆっくりお話っていうのは...?」
「うーん、それもいいんだけど、それだと私が王様に叱られちゃうからナシかなぁ...」
「「残念。」」
「私もだよー、折角お客さんが増えたのに、痛めつけなくちゃいけないんだもん♡『武具の傀儡』!」
一切笑顔を崩さず、リゼットは二人に切りかかる。
彼女らは二手に分かれ、リゼットを挟み込むように攻撃をぶつける。
血晶のハルバードを薙ぎ払い、その勢いのまま穂先が何度も喉元を貫きにかかる。
一方、白峰は風を纏って一直線。猫の手に風の刃をまといリゼットをひっかき続ける。
先刻リゼットが『武具の傀儡』を適応させた武器は剣と盾。盾で槍の穂先をわずかに流し、その反動だけで身体を半回転。細剣が風を裂き、白峰の喉元を正確になぞる。
「ッ!」
白峰は首を反らし紙一重でかわす。
だがその頃には細剣は消え、代わりにリゼットの両手には二丁の短銃。
二発。
乾いた音が森へ響く。
紅月は槍を回して弾き、白峰は風を爆ぜさせ軌道を逸らす。
「えぇ~、これも当たんない?」
短銃がトランプへ崩れる。今度は大鎌。さらに鎖鎌。そして双剣。
まるで武器の方が勝手にリゼットの手へ集まってくるようだった。
「いや、いくつ武器持ってんのよ!?というより...」
(問題はどの武器でも達人レベルの実力を発揮できていること...『アームズ・マリオネット』?武器に操られてるって言ったところかしら...)
白峰と紅月はリゼットから一度距離をとる。彼女らは少し息が上がっているのに対し、リゼットは平然そのものだ。
「そんなこと考えたところで...打開もできそうもないけど...」
「どうしましょうか...」
「これで終わりなわけないもんね♡そうだよねっ♡」
彼女はまだまだ遊び足りないとでもいうように、くるくると舞う。
「もちろん、ここで終わらせるわけにも...」
「いきませんから...」
だが二人とも自分たちだけでこの少女をなんとかできるとは、微塵も思っていなかった。
紅月はこの状況を打開できる一手を後方に感じ取る。一方白峰は教師陣への応援要請の一手を考える...
「...多分紅月さんのほうが、まだ現実的な気がします。」
「私何も言ってないけど?...まあ、白峰の考えも大体わかりはするけど...」
...数秒の沈黙が落ちる。
瞬間、紅月と白峰はほぼ同時に目を見開く。言葉を交わすことなく、二人は後方へ跳んだ。
二人がいた空間を、リゼットの武器が薙ぎ払う。
木々が裂け、土が抉れる。
「『紅血華』!」
「『疾風旋風』!」
「キャハハッ、二人とも強ーい!」
木々を抜けた先には、あたりを破壊しつくされた剝げた森。
抉れた大地の中央。彼女たちが宙を舞うその真横で、
赫弥、セセラギ、燐、そしてヴェルグの4人が殺意を交差させていた。
name 白峰 つむぎ
skill 風織
Height 156cm
Weight 45.2kg




