表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/70

31. 冬のやけ酒はほろ苦く

しばらく透子の部屋で過ごしていると、下の階が何やら賑やかだ。どうも、外出していた透子の父と弟?妹?が帰宅したようだ。


お母さんとはなし崩し的に面接になったけど、今度はちゃんと挨拶しないといけないな。頑固な親父さんだったら、どうしよう?娘はやらーん!みたいな


「そろそろ帰らないとだし、最後にお父さんにも挨拶してくるよ。」


「そうだね···ねえ、お正月は予定あるの?」


「特にないよ。日課のトレーニングくらいかな。」


「お正月もするんだ。じゃあ、一緒に初詣行かない?」


「いいな、それ。どこの神社がいいかな。いや、相談の前に挨拶しとこう。向こうも待ってるかもしれないし。」


「お父さんなんて放置でいいと思うけど。」


ちょっと膨れ面の俺のカノジョ可愛い。


「そうはいかないだろ。さ、行こう。」


俺達は階下に降りた。リビングにはお父さんらしき男性が椅子に座っている。透子の弟?妹?はどこだろう。


「はじめまして。真中涼太です。お邪魔してました。」


「ああ、丁度、話を聞き終わったとこだよ。透子の父だ。我が家へようこそ。」


「すみません、大晦日の慌ただしい時にお邪魔して。」


「構わんさ。最近は大晦日、正月と言っても、特に何もしてないからね。」


「そんなこと言って。私と透子がお掃除始めたら、外に逃げたくせに。」


「あーごほんごほん。ところで、もう帰るとこかい?」


「はい、そろそろお暇しようかと。」


「そうか、せっかくだし、ゆっくりしていってくれて構わんが。なんなら、晩御飯食べていったらどうだい?」


「えっと、よろしいのですか?お父さんもせっかくの休日ですから、ゆっくり家族団欒を楽しみたいのでは···」


「母さん、ホントに彼、中学生かい?」


「気持ちは分かるけど、透子の同級生よ。」


「最近の子はすごいなあ。透子もおマセさんだと思ってたが。ある意味、お似合いなのかもしれんなあ。」


「すみません、ちょっとお聞きしたいのですか、透子の弟さん?妹さん?はどちらに?」


「は?いや、ウチは透子だけだよ。」


「え、でも、下の子と一緒にお出かけされてたと···」


「ああ、母さんの言い回しなんだ。おいで、柊太。」


お父さんが足元から何かを抱き上げた。柴犬だ。


「この子の散歩に連れて行ってたんだよ。」


「へえ、可愛いですね。名前、トウタっていうんですね。」


「ああ、透子がつけたんだ。捻りがないだろ?」


「うるさいな。」


「いや、可愛い名前だと思います。透子のトウに太···あれ?」


「トウタ···リョウタ···ああ、そういうことだったのか。母さんビールくれ!」


結局、晩御飯も一緒にいただくことになった。


「まさか、可愛がってた犬の名前がカレシの名をもじったものだったとはなー お父さんも精一杯、ムスメを可愛がってきたつもりなんだけどなー」


「ほら、アナタ、いじけないの!それに、柊太を飼い始めたのは涼太君と付き合うもっと前ですよ。」


「そうなのか?ちなみに、透子はいつから涼太君を好きだったんだ?」


「小学3年生の頃から。」


「チクショーやっぱり、そうじゃねえかよチクショー」


「なんか、すみません。」


「いや、いいんだ。私には柊太がいるし。あれ、柊太はどこだ?」


「さっきから、俺が抱っこしてます。」


「チクショー 柊太もチクショー」


「面白いお父さんだな。」


「私は全然面白くない。」


「まあ、冗談はさておき。私には冷たいが大切な娘だ。どうか宜しく頼むよ。どうか、私の目の届かないとこでは代わりに守ってやってほしい。」


「はい、それは任せてください。」


「透子、いい彼氏さんだなあ。よかった、よかった···グー」


缶ビール1本で眠ってしまった···


「はあ···だから、会わせたくなかったのに。」


「いいお父さんじゃないか。」


「そう?しかし、こんなとこで寝ちゃってどうしよう。」


「寝室はどこだい?連れて行くよ。」


「そこの和室だけど、一人で大丈夫?」


「ああ、お父さん痩せてるし。」


俺はお父さんを抱き抱えて布団まで連れて行った。

気持ちよさそうにスヤスヤ眠っている。

透子は「私だってまだ抱っこされたことないのに···」と御立腹だ。


「すみません、すっかり長居して。」


「いえいえ、むしろウチの人がごめんなさいね。またいつでも来てね。」


「はい、ぜひ。じゃあ、透子。また後でメッセ送るから。」


「うん、気を付けて帰ってね。」


俺はやっと家路についた。

結局、これからどうするかについては何も話せなかったな。まあでも、お父さんもお母さんも話せる人だったし、交際をちゃんと認めてもらえたのはよかった。


帰宅した俺は早速、透子にメッセを送った。

今から、漣と詩音に俺達のことを報告しようと。



(涼太が入室しました)

(透子が入室しました)

(詩音が入室しました)

(漣が入室しました)


涼太「漣、久しぶり。今はオーストリアだっけ?」


漣「うん、ウィーンだよ。」


詩音「いいなあ、ヨーロッパ。いつか行ってみたい。」


透子「うんうん、パリやローマ、バルセロナもいいよね!」


涼太「俺は日本の温泉宿がいいけどなあ。」


漣「僕も温泉行きたいなあ。日本の景色がもう恋しいよ。」


詩音「ウィーンはやっぱり音楽関係で?」


漣「うん、合唱団の交流があってね。やっぱり、本場は違うよ。全然レベルが違って驚きの連続だよ。」


透子「この前の音楽祭でも圧倒されたけど、それよりも凄いって想像つかないなあ。」


涼太「そうだよな。あれ以上と言われてもなあ。」


漣「ネットでも聴けるけど、生の声は違うしね。」


詩音「やっぱり、いいなあ。漣、来年こそは是非行きたいから、よろしくね?」


漣「アハハ、頑張るよ。ところで、怪我の具合はどう?」


詩音「もう、殆ど大丈夫。年明けの稽古までには完治してると思う。」


涼太「最初から無理に動かさないで、ちゃんとリハビリしながらにするんだぞ?」


詩音「分かってる。それより、今日は何の用なの?」


透子「詩音ちゃん、実はね。私と涼太から報告があるんだ。」


漣「え、なになに?」


涼太「えーとだな、実は色々あって、俺達付き合うことになったんだ。」


詩音「そう、やっとなのね。」


透子「やっぱり、詩音ちゃんは気づいてた?」


詩音「そりゃあね、試合に来ても涼太しか見てないし、お弁当まで持ってくるし。分からないのは本人だけよ。」


透子「だよねー!気づかないの、おかしいよね!」


涼太「えーと、すまん···」


漣「というか、君たちまだ付き合ってなかったの?」


涼太「付き合うって決めたのは昨日だよ。」


透子「漣はわたし達がとっくに付き合ってると思ってたの?」


漣「それはそうだよ。あんなに大勢の人の前で手を繋いだり、腕を組んだりしてたら、誰だってそう思うんじゃない?」


詩音「それって、音楽祭でのこと?」


漣「そうだよ。」


詩音「そんなことしてたんだ。順番がおかしくない?」


透子「すみません···」


涼太「ちょっと待った。俺達、漣の前では手を繋いだりしてなかったぞ?何で漣が知ってるんだ?」


漣「ああ、あの会場の入口のホールにはカメラがあって、控室のモニターから見えるんだ。どのくらい観客が来てるかを目にして、やる気を出すためにね。2人は凄く目立ってたから、直ぐに分かったよ。」


涼太「えーと、つまり俺達はあの場にいた観客だけじゃなく、出演者全員の前でベタベタしていたと···」


透子「!!!」


漣「流石に全員ということはないと思うけど、かなりの人達には見られてたかもね···」


透子「ダメ···わたし、来年行けない···」


詩音「ええー!?」


涼太「1年経てば皆忘れてるって。それに、もう付き合っているんだから、恥しいことないだろ?」


漣「そうだよ、三木谷。目立つと言っても、美男美女のカップルとして目立ってたから、悪いことじゃないよ。」


詩音「うんうん、来年は私もメイクして行きたいから頑張って!」


透子「グスン···ありがと、頑張る」


涼太「三木谷はともかく、最近何かとハンサムとか美男子とか言われるけど、ホントに誰の話だよ?漣が言われるならわかるけどな」


漣「えっと···これは冗談か何かなのかな?」


詩音「この人は昔からこうです···」


透子「天然系無自覚なの···」


涼太「···?」


漣「三木谷は苦労しそうだね。クラスメイトには教えたのかい?」


透子「まだ、これから。先に二人に報告しとこうと思って」


涼太「ムダだったぽいけどな。」


詩音「そんなことないよ。おめでとうって言っておくわ。ずっと目の前でヤキモキされてたから、解決してよかった。今度からはイチャイチャされるんだろうけど、まだマシ。」


漣「詩音は辛辣だなあ。僕からもおめでとうと言わせてもらうよ。ちょっと妬けちゃうけどね。」


透子「それって、誰に?もしかして···」


漣「勿論、三木谷にだよ。涼太は僕にとっても大切な人だからね。彼を独り占めされるのは、ちょっと悔しいかな。ハハハ」


涼太「透子、安心しろ。漣が笑う時はコイツなりの冗談を言ってる時だ。」


透子「いや、シャレになってないから···」


詩音「激しく同意」


漣「涼太にはバレてたか。そういうことだから、安心していいからね。それにね、僕にだって気になっている異性はいるんだよ。」


涼太「ちょっと、待て。今日一番、いや、今年一番のビッグニュースだろ、それ?」


詩音「今年って、あと数時間しかないけどね」


透子「え〜、漣のような人が好きになるって、どんな人だろ?ただの美人さんってことはないよね?」


漣「僕はじゅうぶん美人だと思ってるけどね。好きになったのは顔よりも、何と言うか、生き様かな。その人は凄く格好良くてね。今では涼太に継ぐ憧れの人だよ。」


涼太「いや、そこに俺は要らないだろ。」


透子「ええ〜?私達の知ってる人かな?ヒント!」


漣「ごめん、それは言えない。もし分かっちゃったら、その人にも迷惑かもしれないからね。でも、いつかちゃんと言えたらと思ってるから、応援してくれたら嬉しい。」


涼太「勿論、必要だったらいつでも声かけてくれ。」


透子「うんうん」


詩音「応援でよければ、いくらでも。」


漣「ありがとう、早く日本に帰って皆に会いたいよ。涼太と三木谷、おめでとう。来年はきっと二人にとっていい年になるよ。詩音も、来年はもっと精進するから、僕と一緒に稽古してくれるかい?」


詩音「もちろんよ。でも、只でさえ忙しいんだから、無理しないでね。」


漣「詩音にそう言ってもらって嬉しいよ。じゃあ、僕はそろそろ。みんな、良い年を。」


涼太「良い年を。」


透子「良いお年を。」


(漣が退室しました)


涼太「なあ、今のって···?」


透子「そういうことだよね···」


詩音「どういうこと?」


涼太「あ〜まあ、漣も男の子だってことだな。」


詩音「当たり前でしょ」


透子「来年が楽しみだね!ってことで」


詩音「なんか、納得しない···」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ