第420話 アヴァロンのオークション
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『──さぁ、続きましては当オークションならではの目玉商品〈賢能宝珠〉の登場です!! まず初めにご紹介するスキルオーブの色は上から二番目の蒼色になります。取得できるスキルは、な、なんと【異空間収納庫】だッ!!』
オークション会場の盛り上がりに呼応するように、ステージの下から掌サイズの青白い球体が載せられた台が上がってくる。
青白い球体の内部では夜空に浮かぶ星のように光点が輝いており、その色は蒼。
司会者の言葉にあったスキルオーブの色とは、この光点の色を指している。
全部で六等級あるスキルオーブの色は、下から黒、白、黄、紅、蒼、紫の順に上がっていくため、蒼のスキルオーブは上から二番目というわけだ。
スキルオーブはドラウプニル商会にて販売されているが、全店舗のうちスキルオーブを取り扱っているのは、俺の領地である神迷宮都市アルヴァアインにあるドラウプニル商会本店、同じく領地の現在いる黄金都市アヴァロンのアヴァロン支店、あとはアークディア帝国の帝都エルデアスの帝都支店の三店舗のみだ。
ドラウプニル商会の店頭で販売しているのは上から三番目の紅級までで、一つ上の蒼級はこれらの三店舗をはじめとした一部の店舗に併設している強欲神像の子機によるガチャでしか入手出来ない。
これまではガチャで当てるしか蒼級スキルオーブは手に入らなかったが、今回からはアヴァロンのオークションでも獲得できるようにするつもりだ。
実際には他にも入手する手段はあるが、現在までにその方法で入手できた者がいないので除外する。
ちなみに、最上位である紫級スキルオーブのみは現時点で獲得手段は無い。
予定はあるが、その方法を明かすにはもう少し時間が掛かるだろう。
「使用すればスキルを永続的に取得できるとあって凄い入札額ね……」
アヴァロンのオークションの主催者専用の部屋で俺と共に会場を眺めているのは前世の学生時代の先輩であるセレナだ。
異界人にして前世の俺がいた世界からの〈転移者〉である彼女も今や二十七歳。
この世界で再会してから八年が経つが、漸く彼女も人族から上位種族へ進化を果たした。
去年の暮れに人族系上位種族の一つ天人族へ進化したことにより、セレナも長命種になったため外見も今の年齢で止まっている。
セレナは異界人なので正確なところは分からないが、再び容姿に加齢の影響が出始めるのは百年以上は後のはずだと教えた時のセレナは嬉しそうだったな。
婚約者である俺は変わらないのに自分だけ老けていくのを気にしていたので、あの反応も当然だろう。
今回はアヴァロンで開催される初めてのオークションとあって国内外から多くの人々が参加している。
主催者として俺も会場入りするため、その際のパートナーとして婚約者達の中からセレナを選んだ。
進化達成を祝ってという理由もあるが、貴族令嬢や王女など社会的身分の高い者も多い他の婚約者達と違い、Aランク冒険者の位に付随した名誉貴族の爵位しか持たないセレナだけを公の場で同伴させる機会は殆どない。
だが、俺の領内かつ俺自身が主催者を務めるアヴァロンのオークションは、そんなセレナを同伴できる数少ない場所だった。
別に注目を集めたいわけではないが、多くいる婚約者の中でも同郷のセレナは特別であり、どこかの機会で同伴者に選びたい気持ちがあった。
政治的な都合などから難しかった願いが漸く叶えられて俺は満足だ。
『おめでとうございます! 蒼級スキルオーブ【異空間収納庫】は七千万オウロでの落札ですッ!!』
「セレナ先輩なら買えそうですね」
「確かに買えるけど、気軽に使えるような額じゃないわね。リオンくんなら買えるでしょうけど」
セレナは進化のためにアルヴァアインの神造迷宮などでレベル上げをする傍ら、数年前にエドラーン幻遊国のカジノで稼いだ金を元手に中小規模の商会などに対して投資をしている。
ユニークスキルの力もあって投資は上手くいっており、婚約者達の中でも屈指の財力があった。
特に聞いてないし調べてもいないので正確な額までは知らないが、蒼級スキルオーブの一つや二つぐらいなら買えるだけの金があると推測している。
セレナの反応からも大体あっているようだ。
『次にご紹介する出品物も蒼級スキルオーブです。取得できるスキルは──』
その後も様々なアイテムが出品されていく。
アヴァロンのオークションでの出品者は俺、あるいはエクスヴェル公爵家のみであるため、何が出品されるかは当然ながら把握している。
土地も建物も出品物も俺の所有物なので、諸経費を除いた全額は俺の懐に入る。
スキルオーブのグループとその前の叙事級以下の魔導具のグループを合わせると、総額で数十億オウロの落札額を叩き出していた。
これはスキルオーブの後に出品される竜素材にも期待出来そうだ。
『天竜空域産〈炎竜の灼鱗〉は二千五百万オウロの落札ですッ!!』
『天竜空域産〈風竜の精血〉は三千四百万オウロの落札ですッ!!』
『天竜空域産〈真竜の鋭牙〉はなんと、二億三千万オウロでの落札になりましたッ!!』
こうして見ると、金はあるところにあるのだと改めて思う。
天竜空域で狩った竜達の素材は、スキルオーブと同様に今回のオークションの目玉商品だ。
質の良い竜素材とあって、主に大国の面々が落札していた。
竜や龍に対して並々ならぬ関心があるファロン龍煌国が最も落札数が多く、次点でアークディア帝国だった。
ファロン龍煌国用のVVIPルームにいる煌帝ラウと、アークディア帝国用のVVIPルームにいる皇帝ヴィルヘルムが毎度火花を散らしている──双方の部屋の位置の都合から、正面のガラス面越しに互いを視認できるため──のが印象的だった。
そんな大人達とは違って、アークディア帝国のVVIPルームにいるテオドールとヴィルヘルミナは飽きてきたのか、今日のオークション直前に初ダンジョン記念に俺がプレゼントした腕環型魔導具〈血晶闘環〉を嬉しそうに眺めていた。
二人がダンジョンで初めて倒した魔物〈闘晶角兎〉のドロップアイテムである〈闘晶角〉を使った魔導具であり、〈血神〉の力を使って素材の性質を少し弄ってある。
冠魔族として発現させた不死鬼族の血に対する高い親和性と、古竜人族の竜の力の双方を活かせる自信作だ。
〈血神〉の力まで使った所為で等級が高くなってしまったが、まぁ叙事級なら誤差の範囲だろう。
『皆様長らくお待たせしました。続いては本日最後の商品です! 記念すべき第一回アヴァロンオークションの最後を飾るのは、我らが領主にして今オークションの主催者、そして超越者間近であらせられる〈創造の勇者〉、エクスヴェル公爵閣下による天竜空域に棲まう竜王の素材を用いて製作された魔剣でございます!!』
無駄に仰々しい司会者の紹介に合わせてステージに一振りの魔剣が載せられた台が現れる。
現れた魔剣は全体的に白く、剣身には竜鱗模様が浮かんでいた。
その姿は先日ダンジョンで使った〈無垢なる命喰の霊剣〉に似ている。
まぁ、アルヴドラを意識して製作したので、似ているのは当たり前なのだが、こうして離れた場所から眺めるとより一層酷似して見えた。
『こちらの美しき魔剣の銘は〈侵し喰む竜王の覇剣〉。等級は此度のオークション最高位の伝説級ですッ!!』
今日一番の盛り上がりを見せる参加者達の歓声によってオークション会場が震えている。
魔剣の名称はアルヴドラの能力【白竜王ノ征域】から取っており、グウィバーに使われている素材である〈竜王〉の称号持ちの竜を討った時に発現した能力でもある。
記念すべき第一回アヴァロンオークションの最後を飾るには、スキルオーブと竜素材を超える価値のあるアイテムが必要だった。
竜王の素材はまだまだあるので、この程度の出費は痛くない。
今の俺にとっては自作可能な伝説級の魔剣だが、一般的には伝説級のアイテムは滅多にお目にかかれない代物だ。
使われているのが竜王素材となれば、その価値は更に鰻上りだろう。
『それでは、入札価格は強気の一億オウロからのスタートですッ!!』
さて、竜王素材製伝説級魔剣はどこまで上がるやら。
今回稼いだ金の使い道について考えつつ、ドンドン上がっていく入札額に心を躍らせた。




