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黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜  作者: 黒城白爵
第十五章

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第408話 血神 中編



 ◆◇◆◇◆◇



「──呑まれて死ね」



 血神(けっしん)のその言葉に従うように血の湖を満たす莫大な量の血が隆起する。

 湖の血は瞬く間に血の津波となり、俺の前に紅色の壁が聳え立つ。

 音速を超える速さで迫り来る津波へ【強奪権限(グリーディア)】によって染まった漆黒の手を翳す。



神鳴(しんめい)顕現──【界滅ノ神霆(ケラウノス)】」



 発動を維持したままにしている【強奪権限】の超過稼働能力オーバー・アクティベート・スキル貪欲なる解奪手グリードリィ・デモリッション】の影響を受けて黒く染まった神域の雷霆が解き放たれる。

 黒き雷霆は紅血の津波を貫くだけに止まらず、その背後にある神殿をも破壊する。

 神造物である神殿すらも貫いた雷霆は封神異界〈血獄の封神殿〉の外縁部にまで到達したが、幸いにも異界自体を破壊することはなかった。



「流石は複数の神々によって作られた異界というべきか」



 黒き雷霆が直撃したことで軋んでいる境界から視界を戻し、崩壊中の神殿へと向ける。

 神殿から見下ろしていた血神の右半身が雷霆によって消し飛んだが、視線を境界へ移した刹那の間に殆ど再生していた。

 血神の再生が予想より()()

 やはり、領域系超過稼働能力【災界顕現(ワールド・ディザイア)】による凡ゆる力の強制蒐集フィールドは少なからず血神にも影響を及ぼしているようだ。

 加えて、【貪欲なる解奪手】の力を乗せた雷霆によって間接的に力を奪ってもいる。

 直接俺の手で奪うのに比べたら出力は低いが、雷撃の射程距離と速さがあるので躱わすのは難しくなる。

 試しにやってみた合わせ技だが、まぁまぁ使えそうだな。



[スキル【血改転化】を獲得しました]



 現時点までに二つの超過稼働能力により削った血神の力が、スキルの形となって獲得された。

 血神のような神にはスキルという枠組みに嵌った力は存在せず、巨大な一つの力があるのみだ。

 イメージとしては、スキルは氷を加工して作られた氷像であり、神が持つ力はプールや湖に貯まった水だと思えばいい。

 氷像は氷像で決められた物だが、貯まった水を同じ氷像にしようが飲み水にしようが自由であり、使い道は無数にある。

 そのため、神の力を削り、スキル化して奪ったからといって、そのスキルに該当する能力が使えなくなるわけではない。

 だが、一つの巨大な力で構築されていても、血神を構成する力の一部であることに変わりはなく、このように奪い続ける度に弱体化していく。


 そのことに気付いたからか、ただ単に激怒しただけか、身体を再生させている血神の形相は非常に険しいものだった。



「被造物が生意気なッ!!」



 血神の周囲に舞う神殿の瓦礫が血に変換される。

 おそらくだが、アレがたった今手に入れた【血改転化】の元になった力の使い方なのだろう。

 血の神らしい力だと妙な感心をしている間に、全ての瓦礫が血神の血と化し、そこから更に津波を構成していた血共々、血の刃へと形を変えた。

 レーザーの如き速さで降り注いできた無数の血の刃を抜刀した〈財顕討葬の神刀(エディステラ)〉と〈龍喰財蒐の神刀(アメノハバキリ)〉の二振りの神刀で斬り払っていく。

 斬り払った血の刃は破壊できたが、破壊した血の刃は更に細かい血の刃となって再形成され、襲い掛かってきた。



「これは、数が多いな」



 神刀アメノハバキリを納刀すると、フリーになった左手へと神刀エディステラを持ち替え、【貪欲なる解奪手】状態の右手で血の刃を振り払う。

 すると、血の刃は破壊された後も再形成されず、漆黒の右手に更に細かく分解された上で吸収されていった。

 やはり【貪欲なる解奪手】ならば、この程度の物量は再形成される前に破壊することができるようだ。


 【貪欲なる解奪手】で対処するのを見た血神が、再び血の湖を操り俺の周囲へと殺到させてきた。

 最初のように俺の体内に侵入してくることはなかったが、血の湖は俺の足元を固めて回避できないようにしてきた。

 血の湖は身動きできなくするだけでなく、俺の体力と魔力を吸収している。

 この血神の血に宿る呪いの効果によって転移も封じられているらしく、【瞬身ノ神戯(ヘルメス)】の【転移自在】が発動しない。

 足元の血の拘束を破壊しようとするが、それを邪魔するように血の刃の攻撃密度が増した。

 



「喰い尽くせ、【源喰権限(ヨルムンガンド)】」

 


 神域権能(ディヴァイン)級ユニークスキル【無限源喰の世界龍(ウロボロス )】の内包スキル【源喰権限】。

 その派生スキル【界滅ノ源喰(プライマル・イーター)】を発動させ、凡ゆるモノを喰らう濡羽色の〈源喰〉のオーラを解放した。

 降り注ぐ血の刃も足元の血の湖も全て源喰のオーラが呑み込んでいく。

 全身から無尽蔵に濡羽色のオーラを放出していき、そのまま血の湖の捕喰を行う。

 源喰のオーラにも【貪欲なる解奪手】の力を乗せたことで、オーラの色がより深い黒へと変わっており、紅色の湖が徐々に黒く染まっていく。

 


[スキル【神呪血壊】を獲得しました]



 血神の力の強奪は順調で、特にダメージを負うことなく推移している。

 だが、ここまで来ると血神にも慢心はなくなるようで、先ほどまで激昂していた顔には真逆の冷たい敵意の色のみが浮かんでいた。



「……いいだろう。キサマを妾の敵として認めてやる」



 そう告げた直後、血神の気配が一気に膨れ上がり、封神異界全体を震わせるほどのプレッシャーが放たれてきた。

 血神の手に紅い石があるのが見える。

 あれは此処に入る時に使った〈始祖の血石〉だ。

 扉を潜った後は手元から消えていたので消滅したのかと思っていたが、どうやら血神の元へと移動していたようだ。

 その血石を掲げた血神が、血石に神性存在(デウスデア)固有エネルギーである神力を注ぎ込むと、初めて見るタイプの術式陣が展開された。

 術式陣には大きな空白が四つあり、それがどういった術式陣かは予想がついた。



「我が血潮よ。鍵を(しるべ)に我が身に還れ」



 術式陣の中の四つの空白の中へと外界から巨大な力が流れ込んでくる。

 俺の中からも力が抜け出そうとしているのを感じるが、【強欲神皇(マモン)】の固有特性(ユニークアビリティ)〈強欲蒐権〉によって奪われることはない。

 だが、俺のような対抗策が無い者達、つまりは地上にいる血鬼神器の所有者達はそうはいかなかった。


 【世界と精霊の星主(オーヴェロン)】の固有特性〈妖星神眼〉で地上を視てみると、スキュアクス血国の某所で対アークディア帝国軍に向けた作戦を実行していた血鬼神器所有者達が一斉に苦しみ出していた。

 彼らの全身から血鬼神器が強制的に摘出されているらしく、神器から神力の形態へ変換された上で封神異界の境界を越えて血神の元へと集まっているようだった。


 視界をアークディア帝国へ向け、皇宮にいる皇太后ベアトリクスの様子を確認する。

 ベアトリクスの傍にはレティーツィアや彼女の侍女であるユリアーネの姿も見える。

 今夜、血神との戦闘が起こる可能性が高いと判断して、予めスキュアクス血国の王族の血を引くベアトリクスとレティーツィアには、俺が連絡するまでは一緒にいるように頼んでおいた。


 レティーツィア達が今いる柘榴宮は、ユニークスキル【天空至上の雷霆神(ゼウス)】の【天空神ノ光輝(アイギス)】が展開する絶対防御の光輝結界で守らせている。

 血神の血で作られた血鬼神器という成り立ちを考えれば、今のような状況になるのは予想できたため、事前にアイギスで外部からの干渉を封じておいた。

 遠くにあるアイギスが目に見えない何かを防いでいる感覚があるので、血神による血鬼神器の強制回収の対象にベアトリクスも含まれているのは間違いないようだ。



「ふむ。神器の帰属を解除すれば助かるのか」



 体内に血鬼神器を宿すベアトリクスの無事を確認した後、再びスキュアクス血国へと視線を向ける。

 血鬼神器の強制回収によって神器と契約している所有者達の力も一緒に奪われていたのだが、スキュアクス国王が自分が持つ血鬼神器〈聳え隔つ次元槍(ヘヴリング)〉の帰属を解除した途端、力の強制徴取状態から解放されていた。

 同じように血鬼神器との契約を解除した者は助かっていたが、神器との繋がりを断つのが間に合わなかった者は肉体が灰になるまで搾り取られて死んでいった。



「……妾の血を分割して神器の数を増やしたのか。妾の血から生みし神器を分けるとは不快だが、力を集めるには効率的ではあるな」


 

 血神の姿が紅いドレスから紅色の全身鎧へと変化する。

 感じられる強さは当初の倍以上にまで高まっており、展開した術式陣の四つの空白の半分が埋まっていた。

 埋まった部分には鎧と槍に似た紋様が浮かんでおり、それらが元々の四血神器の形状を現していることが分かった。



「剣と弓が還らぬな。槍も一部無い……いや、槍に関してはキサマが原因か。リオン・ギーア・ノワール・エクスヴェル」


「なるほど。力だけでなく記憶まで徴取したのか。ならば教えておいてやろう。残り二つの神器の回収は俺が封じた」



 剣の四血神器の所有者はベアトリクスであり、スキュアクス血国によって〈天に輝く鬼剣(ヒミングレーヴァ)〉と〈血濡れの鬼剣(ブローズグハッダ)〉に分割されていた。

 〈天に輝く鬼剣〉はベアトリクスの身にあり、〈血濡れの鬼剣〉は俺が元の所有者から奪い、今は神器〈精霊なる魔女の器(モルガン)〉へと変貌している。

 分割されて九血神器となった槍型血鬼神器の一つ〈重なり穿つ螺旋槍(フレン)〉も俺の中にあり、このフレンを奪った時の記憶から俺のことが分かったようだ。


 スキュアクス血国も所在を把握していない弓の四血神器については、俺も何処にあるかは知らない。

 何故血神の強制回収を免れているのか不明だが、ついでに弓の方も俺の仕業であるかのように匂わせておく。


 

「フン。戯れとはいえ、妾の攻撃を防ぎ、逆にダメージを与えるほどならば、予め対策していても不思議ではないか」



 血鬼神器の回収を終えた血神は、最後に〈始祖の血石〉を取り込んでから術式陣の展開を終えた。

 時間にして見れば数秒の間に行われた出来事だったが、その短い時間で血神の力は大幅に増していた。

 源喰のオーラで邪魔をしてみたが、血の湖による抵抗が激しく大して阻害出来なかった。



「六割ほどしか回収出来なかったが、力の大部分は回復できた。これだけあれば十分だ。〈次元隔つ神の爪(ヘヴリング)〉」



 自然体の動きで手を向けた血神から、彼我の距離を無視して次元を断つ一撃が放たれてきた。

 回避行動と防御行動を同時に取ったが、その全てを無視して俺の身体が何十ものパーツに割断され──俺は死んだ。



 

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