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第五話 落ちこぼれ魔道士

お読みいただき、ありがとうございます!

面白いと感じたら、是非とも高評価をお願いします!

「魔法が使える仲間が欲しい!!」


「おい、いきなりどうした?」


冒険者ギルドの酒場エリアでそう叫んだ俺にアルさんが反応する。

何故、俺がこんなことを叫んでいるのか、理由は昨日に遡る。 












〜昨日の依頼中〜


「さ〜て、スライムスライム〜っと。」


昨日、俺たちはジメット湿地帯という場所でEランク討伐依頼の『スライム5体の討伐』をしていた。だが、このスライム、結構厄介なのである。


「気をつけろよサトル。スライムは物理攻撃があまり効かないからな。できるだけ弱点のコアを狙えよ。」


「分かってますよ。」


そう、アルさんが行った通り、スライムには物理攻撃の効果が薄いのだ。

スライムの体はぷるぷるした柔らかい半透明の固体でできている。

一見、物理攻撃がたやすく通ると思うが、蓋を開けてみると、物理攻撃の衝撃を吸収し威力のほとんどを無効化するという厄介な性質を持っている。

そのため、スライムは魔法攻撃で倒すか、弱点であるコアを破壊するしか倒す手段がない。

本当にEランクの依頼なのかと思うほど難易度が高い。


「お、早速スライム発見。」


俺は約7メートルほど奥に青いぷるぷるしたボディを持つ丸い生命体『スライム』を発見した。


「よし、それじゃ、いっちょやるか!」


「はい!」


早速、俺たちはたった一体のスライムに飛びかかった。









〜2時間後〜


「はあ、はあ、はあ……まだ倒せないのか!?」


「ヤベェ……そろそろ疲れてきた……。」


その一体のスライムをいまだに倒せずにいた。


「ホンっと……!いつまで攻撃していたら……!コアに攻撃が当たるんだ……!」 


そういいながら俺ががむしゃらにスライムを攻撃していると、スライムが突然、凍ったようにピタッと静止した。


「あれ……?」


よく見てみると、俺の剣がの先端が、スライムのコアを切り裂いていた。

その直後、スライムはまるでドロドロと溶けるかのように液状化し、そのままコアに入っていた魔石だけを残して消滅してしまった。


「や、やっと倒した……。」


スライムを倒した俺は、あまりの疲れでその場でへたり込む。


(ま、まさか……スライムを倒すのにこんな時間がかかるなんて……。)


「ヤベェなこれ……すげぇ時間がかかるな……こりゃあ徹夜確定だな……。」


「うへぇ…………。」


俺は半ば泣きそうになりながら、結局、依頼を達成する頃には深夜になっていた。

更に、深夜は街の門が開いていないため、その日は野宿することになった。










「あ〜、昨日のスライムの依頼か。ありゃあ大変だったよな〜………。」


「そうですよ!あんな時間がかかるんだったら魔法を使える仲間がいたほうがいいでしょ!」


「そう言ってもなぁ……魔道士は数は少ないし、いろんなパーティから引っ張りだこになるほど勧誘されるんだぞ?そんな都合よくフリーの魔道士がいるわけが「ふざけてんのかお前!!!」おわっ!?」


アルさんが喋っている時、突然隣のテーブルから怒鳴り声が聞こえてきた。


(び、びっくりした……。)


恐る恐る怒鳴り声がしたテーブルの方を見てみると、そこには一組の3人パーティがいた。

だが、恐らくパーティの一員と思われるアップルグリーンの髪の1人の女の子が他のパーティメンバーに責められていた。


「お前本当に何なの!?なんで魔法をろくにコントロールできないんだよ!!」


「ご、ごめんなさいッ……!!」


パーティリーダーだと思われる全身を鎧で固めた目つきの悪い男の怒鳴られ、女の子が怯えるように謝罪する。


「はぁ〜……あんたさ、謝れば何でも済むって思ってるわけ?」


女の子が謝った直後、今度は結構際どい格好をした女剣士が呆れたように愚痴をこぼした。


「あんたが放った攻撃魔法がよく暴走してこっちは死にかけてるのよ?もしあんたが放った攻撃魔法がアタシたちに誤爆したら、どう責任取るわけ?」


「そ、それは……。」


女剣士にそう言われ、女の子へさらに縮こまる。


(なんだよこれ……!こんなのただのイジメじゃないか!!!)


その様子を見て、俺は女の子を責める2人に怒りが湧いてくる。

そして、男が放った最後の言葉で、俺の怒りの沸点は限界に達した。


「いいか、お前は使えないんだよ。俺たちの足を引っ張るだけの役立たずのお荷物なんだ。つまり、お前をこのパーティに入れる価値はないんだよ。」


「そ、そんな……。」


(こ、こいつ……!もう我慢できない!!!)


「お、おいサトル!?」


怒りが沸点に達した俺は、テーブルから立ち上がり、そのパーティのもとへ向かった。


「あ?なんだてめぇ?」


こちらに向かってくる俺に気づいた男は喧嘩腰で俺にそう言った。


「あんた、仲間の1人も大切にできないのか?もしそうだとしたら相当なクズだな。」


「あ!?なんだとテメェ!!」


俺が放った言葉に男が激昂し、俺の胸ぐらを掴む。

だが、俺は言葉を続ける。


「その子はあんたの仲間だろ、それを役立たずとかお荷物とか言ってさ!あんたは仲間をなんだと思ってんだよ!!」


「そんなのテメェには関係ねぇだろ!!役立たずをお荷物って言って何が悪いんだよ!!!」


その言葉に俺は更に怒りが沸騰する。


「あんたはそう思っていただろうがな、その子はその子なりにあんたのパーティの役に立とうと頑張っていたんだろうが!!お前はそんなその子を想いを踏みにじろうとしてんだぞ!!!」


「おいサトル!!流石にもうやめろって!!」


口論がヒートアップする俺たちを止めよう、アルさんが介入してくる。


「どうして止めるんだよアルさん!!こいつらは……!!!」


「お前の気持ちはよく分かる!たが、このまま問題を起こしたらギルドから目をつけられるぞ!!そしたらその子を助けるどころの話じゃなくなるぞ!!お前はそれでいいのか!?」


「ッ………!」


確かにアルさんに言う通りだ。

このまま問題を起こしてしまえば、俺はギルドから目をつけられ、信頼性を失うだろう。

優雅な冒険者ライフを送るつもりの俺にはそれは決して小さいダメージにはならない。

俺は一瞬迷いが生じた。

だが、その時だった。


「あ、だったらさ、こいつをあんたのパーティを入れてやったらどうなの?」


「「え?」」


女剣士からの言葉で俺と女の子は同時に驚いた。


「それだったらこいつをアタシたちのパーティから追い出せるし、あんたたちはパーティに仲間が増える。これほど美味しい話無いと思うんだけど。」


「おお!それだ!!良いじゃないか!!!」


女剣士の言葉に男がナイスアイディアだ!と言わんばかりに目を輝かせる。


「つーことで、お前は俺たちのパーティから追放だ!そんじゃお前ら、こいつを頼んだぜ~!!」


「あ!おい、まだ話は………!」


俺が男たちを咎めようとするが、彼らは女の子を残してそそくさと逃げてしまった。

俺は思わず「はぁ……。」とため息をついた。


「あ、あの……。」


俺がため息をついた後、女の子が声をかけてきた。


「か、庇ってもらってありがとうございます。」


「良いよ別に、俺が勝手にやったことだし。」


(これでこの子はフリーになったけど、あの2人が何かこの子の噂を流したら、別のパーティへの編入も難しいだろうな。)


そう考えた俺は女の子に1つ提案をした。


「ねぇ、良かったら俺たちのパーティに来ない?」


「え?」


女の子は突然のパーティ勧誘に目を丸くする。


「俺たち、魔法を使える仲間が欲しかったんだ。だから君に入ってたもらえると、こっちも大助かりなんだ。」


「で、でも、こんな私が役に立てるなんて……。」


「役に立てるに決まってるよ!」


「ふぇ?」


俺は女の子のネガティブ発言を打ち消すかのようにそう言った。


「君は魔法が使えるだけでも立派な戦力になるんだよ!さっき俺のパーティメンバーのアルさん魔道士は数が少ないって言ってたから、魔法が使える仲間は貴重なんだよ!そんな君を役立たずなんて言うあいつらは贅沢だよ!!」


思わず熱弁してしまったが、俺はこの子を元気づけるためにそんな言葉をかけた。

すると、俺の言葉を聞いた女の子が目尻に涙を浮かべていた。


「こ、こんな私でも……役に……立てるんですか

……?」


そんな言葉に俺は当然のように………


「勿論だ!君は役に立つ人間だ、だから、もっと自信をつけて良いんだよ!」


「うぅ……ひっぐッ……うわあああああん!!」


「え、ちょっと待って、そんなに泣く!?」


そして、俺は女の子が泣き止むまで、必死に声をかけ続けたのであった。














〜10分後〜


「うぅ……えっぐ……すみません……いきなり泣いてしまって……。」


「い、いや……大丈夫だよ……。確かにいきなり泣き出して驚いたけど……。」


泣き止んだ女の子はいきなり泣き出した事を謝罪したが、俺は大丈夫だと返す。


「いやサトル、この子が泣いてる時かなり非難されるような視線を突きつけられたぞ。恐らくお前が泣かしたと勘違いしたんだろうな。」


「全然大丈夫じゃなかったァ!!」


「多分、誤解を解くまで『女の子を泣かしたクズ』ってレッテルを貼られるだろうなwww。」


「ギャアアアアアッ!!そんなレッテル貼られたくないィィィィッ!!というかアルさん!急にそんな話振らないでくださいよ!あいつらとの言い合いで置いてけぼりにした腹いせですか!!?」


アルさんから不安になるような言葉を浴びせられ、俺はアルさんに抗議した。

その様子を見た女の子は「ぷっ!!」と吹き出した。


「ご、ごめんなさい、つい……。」


「そ、そんなにおかしかったかな……?」


「まあ、まるで宝石のような美しさを持つ乙女の笑顔を守る事が、紳士の役目だからね。そうだ、もし良ければこの後お茶でもいかがですか?」


「えッ!?」


「ちょっとアルさんッ!ここぞとばかりにナンパしようとすなァッ!!」


「HAHAHA!冗談だよ。」


「いや、アルさんのナンパは冗談に思えないから!!」


「ふふ、本当に面白い人たち……。」


「あ、そういえば。まだ自己紹介がまだだったね。俺は天野 悟。天野が名字で悟が名前だよ。んで、こっちが……」


「アルフレッド•アレスだ。気軽にアルさんとでも呼んでくれ。」


私は『アメリエール•ロータス』と言います。親しい人たちは『アメリ』と呼んでいたので『アメリ』と呼んでください。サトルさん、アルさん、これからよろしくお願いします!」


こうして、俺たちは新しい仲間『アメリ』をパーティに加えることになるのだった。










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