プロローグ
「お悔やみ申し上げます。天野 悟様、貴方は亡くなられてしまいました。」
「………はい………?」
意味の分からない不思議な空間の中で、
俺は、目の前にいる不思議な雰囲気の女性に
突然、死亡宣告された。
その直後、俺、【天野 悟】はこう言った。
「何かの映画の撮影ですか、これ……?」
「いえ、映画の撮影でも何でもありません。」
即答された。
正直に言うと、俺は物凄く混乱している。
そもそも、俺はさっきまで散らかり放題の
自室の掃除をしていたはず。
なのに、何故こんなところにいるのか、
俺には全く理解できなかった。
「つーか……貴方は誰ですか……?」
混乱して聞き忘れていたが、
俺は目の前にいる女性が誰なのか尋ねる。
「自己紹介が遅れましたね。
私は貴方の住む地球とは違う世界を管理を
している女神、【アリシア】と申します。
以後、お見知りおきを。」
「あ、どうもこれはご丁寧に……え……?」
丁寧な自己紹介に普通に返事を返してしまったが、
明らかに聞き捨てならない言葉を聞いた気がした。
「え?女神?今、女神って言いました?」
「はい、はっきりと言いました。」
(聞き間違いじゃなかった!?)
だが、それでもにわかに信じられない俺は、
更に質問を続ける。
「コ、コスプレですか……?」
「明らかに非現実なこの状況を見て何を言いますか。」
「うぐぅッ!?」
即答されたうえに正論で返された。
確かに俺と女神様が今いる空間は、どこを見ても
先の見えない深淵が続いているだけで他に何も無い。
見事に論破されてしまった俺は、
この状況を認めるしかなかった。
「とりあえず、私の話を聞いてくださいますか?」
「はい………。」
何も言えなくなった俺は、
大人しく女神様(以降、アリシア様と呼ぶ)の話を
聞くことにした。
話を聞くと、どうやら俺はアリシア様の管理する世界に
転生させられるらしい。
アリシア様の世界はいわゆるファンタジーのような世界で、モンスターが存在する。
更に、現在は魔王が世界征服の為にその世界の人間を
滅ぼしにかかっていて、
人間の数が大幅に減少してしまっているらしい。
アリシア様はこの状況を何とかしたいものの、
神は現世に大きく干渉してはいけないというルールが
存在しているため、日々悩み続けたらしい。
そこで、人間の数が有り余っている地球の神に
頼み込み、死んだ者を転生させるという形で許可を
貰い、人間の数を増やしているということだ。
ちなみに、俺がその第一号らしい。
そして、アリシア様は俺に話すことを話し終えると、
俺に一つの麻袋のようなものを渡してきた。
「アリシア様、これは?」
「これは『魔法の袋』です。見た目はただの麻袋です
が、中は魔法空間になっていて、大体、大型トラッ
ク一台分の容量があります。」
(何かいきなりやばいアイテム渡されたんだが!?)
とはいえ、これがあれば荷物の問題がなくなる。
無駄に荷物を背負ったりする必要がなくなるのは
嬉しい。
「それと、この中には最初の所持金として金貨三枚、
単位のゴールドに換算すると、3000ゴールドが
入っています。それで必要なものを買い揃えて
ください。」
(結構な大金入れたなあ……。)
「それでは、もうそろそろ貴方を転生させようと
思います。」
どうやら、俺が転生する時が来たようだ。
アリシア様は、真剣な顔をになり、俺を
真っ直ぐ見つめる。
「これから貴方は、常に危険と隣り合わせの世界へと
転生し、そこで第二の人生を歩みます。
貴方はその世界で生き抜く覚悟はありますか?」
正直に言うと………怖い。
いつモンスターに襲われて命を落とすかも分からない。
そんな世界で生きていくのはとても難しいと思う。
だけど、だからこそ、その世界で生きるという事に
夢中になれるのだろう。
だから俺は今、とても心が昂っているのだ。
なら、俺の答えは勿論………
「はい、覚悟はできています。」
YESに決まっている……!!
「そうですか………。分かりました、
貴方の覚悟、しかと受け取りました。」
俺の返事を聞いたアリシア様は真剣な顔から
元の優そうな雰囲気の顔に戻し、優しく微笑んだ。
その直後、俺の足元が光り輝いた。
おそらく、もうすぐ転生するのだろう。
「それでは悟様、第二の人生をお楽しみください。
貴方の人生に幸あれ………。」
俺の足元の輝きが更に増す。
その時だった。
「あ!そういえばアリシア様、俺の死因って一体……。」
まだ自分の死因が分かっていなかったことを思い出し、
咄嗟にアリシア様に聞いた。
そして、俺の質問に帰ってきた答えは………
「あ、はい。貴方の死因は床に落ちていたパンツで
足を滑らせて、そのまま頭部をタンスの角に強打
させたのが原因です。」
なんともバカらしい死因だった。
「…………なんじゃそりゃあァァァァーーー……………!!!?」
そして、自分の死因のバカらしさに嘆くように絶叫
しながら、俺は異世界へと転生したのであった。
皆さんどうも、作者の秋紅葉リュウです。
まだまだド素人の若輩者で不定期投稿ですが、
今度とも宜しくお願いします!