ep17.交易の街 リリアラ
魔族の森を抜けると、妖精の街がある。リリアラという魔族領と隣接した街で、魔族との交易地点になっており、栄えている。ここは魔族の出入りもそこそこあるが、そこまで争いは激化していない。
森を抜け、街に足を踏み入れると、街は様々なガーランドで彩られ、人々は盛んに交流をして、活気に溢れていた。
「私の出身地なんですよ、リリも同じ出身です」
ルルは故郷の姿をみて少し元気が出たようだった。
「へええ、ルルリリの出身ってここなの」
ミリアがきょろきょろと辺りを見渡す。
「綺麗な街。僕ははじめて」
ヴィオも気に入ったようで、目を輝かせていた。
「私が案内しますよ!まずはお買い物でもしてみませんか?ここは交易が盛んなので、ご飯もおいしいですし、物資も豊富ですよ!」
ルルの提案で、街を見て回ることにした。屋台が並び、いい香りが漂っている。
「これ!おいしそう~ウィッポのしっぽ焼きだって」
ウィッポはこの周辺によく出るモンスターだ。まるくてかわいいマスコット的キャラクター。しっぽが良く生え変わるので、その生え変わったしっぽを焼いた料理が食べられている。
「おいしそうか?もう少し他のでも……ってミリアがすでに買ってるし……」
「おいしいですよ♪私も食べたことがあります。ユウリさんもぜひ」
ミリアはもぐもぐと口を動かしながら食べかけを差し出してきた。
う、うーん……まあ、不味くはないが……昔食べたワニ肉的な味がする。
まさか、この世界の料理を食べることになるとは。企画職として働いていた時には考えもしなかったな……。
「僕、どれも初めて見る……」
ヴィオはずっとあの森の小屋で過ごしていたんだもんな。どれでも好きなもの選びなよ、と俺はヴィオの背中を押した。
「僕はこれにする!」
ヴィオが選んだのは果実のジュースだった。
様々な果実を混ぜたスムージー的飲料。回復効果があるんだったかな。
「いいよ」と言ってポケットを漁るが、そうだ、俺はこのアカウントじゃ初心者冒険者なんだった。ルビーもゴールドも0という悲しき事実。
「あたしが買うわ。ゴールドなんて、あたしクラスになったら腐るほどあるから」
ルルはカカオのパンを選んで少し分けてくれた。故郷にいた頃に好きでよく食べていたそうだ。こんな設定も作ってはないが、ここで生きていてくれていることがなんだか嬉しかった。
「ふふ、ユウリさん、久々に楽しんでますね」
「そうか?そうかもしれないな」
皆でリリアラの街を満喫した。買い物もたくさんして、食料やアイテムなんかを買い込んだ。
その途中、ヴィオがずっと綺麗な花の宝石を見つめていたことに俺は気づいていた。薬草を育てると咲く小さな花を模したブローチだ。
「……なあミリア。気づいているか?」
「何?」
「ヴィオがさ……」
ミリアに話すと、ミリアは「洞察力がすごい!さすが!」なんて言いながら、こっそりとそれを買ってきてくれた。あとでヴィオに渡すらしい。
しばらく街を散策していると、俺の耳にある噂が入ってきた。街ですれ違う人の話に耳を傾ける。
「あの冒険者占い師……不吉な占い結果だったの……」
「やだ……私もよ……怖いわね、今日は家に引きこもろうかしら」
なんと冒険者である占い師がここにいて、何やら街の人々に占いをしているらしい。しかも、結果は皆口々に「不吉な結果だった」と話していた。
これは、俺に伝言を送ってきた占い師である確率が高いか。
ルルたちは街の散策を楽しんでいて、気づいてはいない様子だった。
「ちょっと買い物で抜けるよ、先に宿屋で休んでてくれ」
俺は一つ懸念していることがあった。たしか、シナリオではこの地に毒の魔法が撒かれるというシナリオがあり、リリアラはそれから毒の地になってしまうというイベントの存在だ。このイベントはエルダによって行われるため、エルダがいない今では起きないはずではあるが……この世界が少しずつズレているとすれば、起きてもおかしくないイベントだ。
ルルの死に繋がるかもしれないしな。
占い師の言う「不吉」は、それか……?
俺が一人で抜けようとするが、ルルたちはそれを嫌がった。
「絶対に一緒についていきますよ。ユウリさんが心配ですから。今ちょっと深刻な顔をしていましたよ」
「……わかったよ」
彼女たちは知ってかしらずか、理由は敢えて聞いてこなかった。まあ、隠すほどではないんだが、あまり心配かけたくなかったんだよ。それを察してくれたようだった。
街を回ると、占い師はとあるカフェの地下に潜伏しているだろうとの情報を得た。
カフェ、か。
表向きはカフェだが、設定上でここは魔王の息のかかった者のたまり場になっているんだよな。潜伏しているとしたら、まあ妥当な場所か。
ここに潜入するなら意図を話さないわけにはいかないだろう。
「ちょっとみんなに聞いて欲しいんだが」
俺は皆に説明をした。今日を乗り切れば、ルルの死亡フラグを防げるだろう。
ずっと動かずにいても、毒魔法が撒かれておそらくは事件に巻き込まれる。それならば、今それを止めるしか術はない。
「私、ユウリさんを信じていますから。もう怖くはないです。行きましょう」
ルルがまっすぐと俺の目を見つめ、そう言ってくれた。
さあ、魔族側についた冒険者とやらの正体を暴かせてもらおうじゃないか。
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