四章
あんな首の痕があった時から一週間。
私はやっと手に入れた情報を手に、座敷童子さんのもとへと訪れた。
ちなみにもう片方の手には頼まれていたマンガの続きを持っている。
「座敷童子さん!」
「お、ハナコか。まんがは持って来おったか?」
「うん、持ってきたよ。あと、あの家の情報も」
「ほう、聞けたのか」
「聞きづらいことこの上ない話題だったから、話を切り出すのが大変だったけどね」
座敷童子さんは珍しく大好きなマンガを放り投げ、私が情報をまとめた紙をペラペラと捲る。
「えっと、あの家に住んでたのは父方のお父さんのお姉さん、つまりお父さんのおばさんだね。私にとっては大伯母さんかな。そこに子供が三人で、両親合わせた五人家族で住んでたんだって。だけど、お父さんがどうも厳しいというか、子供を自分の理想通りに育てたいっていう人だったみたい」
「自殺の原因はその父親か?」
「お父さんが言うにはね」
「ふむ……思い悩んだか。やるせんな。して、その名前は?」
「えっとね、渡辺郁子。享年二十三歳だね」
「渡辺郁子?」
名前を聞いた座敷童子さんはきょとんとした顔を見せる。
「え、知ってるの?」
「いや、なんでもない。他に情報は?」
絶対になんでもなくはない顔だったけど、私は空気が読める子供だ。
座敷童子さんの判断を信じて、素直に頷いておいた。
「えっと、少なくとも私や他の親戚の子供たちには秘密扱いだし、暗黙の了解なのか誰もその人の話題を口に出してないね。私は最近まで郁子さんの死因はバイクによる交通事故って聞いてた」
「だがしっかりと供養はされておったのだろう?」
「うん、毎年お墓参りには行ってたよ」
「ならば、存在をおろそかにされたから化けて出ているわけではなさそうだな。ふむ、やはりまだ様子見だろう。りふぉーむの方はどうだ」
「どうだろう。たぶんまだまだじゃないかな。でも今のところ姿も見てないし、最近は食器も割られてないよ」
「そうか。ならとにかく、現状維持だ。決して、無理に関わろうとはするなよ」
「うん、分かった。また何かあったら報告するね」
「何事もなくりふぉーむが終わってその家から出られるのが理想なんだがな」
座敷童子さんの意見に全面的に同意したい。
今日の報告を終えれば次の授業の時間だ。
荷物を片付けて教室へと向かう。
教室に向かう途中には校庭の二宮金次郎が手を振ってくれたし、迷い込んできたらしい妖精が私の周りを楽しそうに飛んでいく。
怪異は悪いだけじゃない。
基本的に好意的な良いモノの方が多いんだ。
「だからこの力は嫌いじゃないけど……たまに厄介だ」
憂鬱な溜息しかでない、退屈な午後の始まりのチャイムが鳴った。




