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序章
とある県の、とある市の、とある町に、ごくごく普通の中学校がありました。
それは町の中心の山の上にあり、それなりの人数の生徒が通っていました。
その中学校には、他とは違うちょっと不思議なものがありました。中学校の小さな中庭に、それは大きく場所をとって置いてあったのです。
朽ちかけている黒い木造のそれは、かつてのこの中学校の玄関。
そう、この学校は昔に火事でなくなってしまった旧校舎の玄関部分を中庭に飾っている風変りな中学校なのでした。さて、そんな中学校にはさらに風変りな噂がありました。
『中庭の旧校舎には、座敷童子が住んでいる』
生徒たちのその親の、そのまた親の代から語り継がれる不思議な噂。
今日も耳を澄ませば、中庭からその声が聞こえてくるはずです。
小さくクスクスと笑うその女の子の声が……。




