3-(38) 勝利の余韻
「義成やるじゃないか。近衛連隊の待機室に覗きに入るだなんて命知らずにもほどがある」
面白そうにいう天儀総司令。俺は一つも面白くない。
ここは国軍旗艦瑞鶴のブリッジは総司令部区画。
笑いかけてくる天儀総司令に対して、俺はつとめてムッとした顔。そして俺の顔面には絆創膏と青タン。これは誰のせいなのか。だが、天儀総司令はわるびれない。
「お、これが名誉の負傷。武勲の証か」
こんなことをいいつつ俺の絆創膏の一つを指でなでてまた笑った。俺はきわめて不快だ。
「レティいわく、慣例に従い今回も不問に付すそうだ。よかったな義成」
「よくありません。軍警に突き出してもえれば、俺も彼女たちの非道な暴力を訴えられたのに、とても残念です」
「近衛連隊は隊長以下、女子隊員は美人揃い。しかも軍の広報から民間メディアまでよくとりあげられる存在。さしずめ人気のアイドルグループだ。そんな彼女たちからすれば痴漢騒動は日常の一コマ。最近は減ったらしいが、隠しカメラや覗き。ストーカーまがいの行為はあるそうだ」
「ですから俺の場合は事故です。痴漢ではありません」
「で、彼女達は捕らえた犯人を軍警に突き出されずに、自分達で厳しく指導。つまり義成。慣例に従いとは、今回お前が体験した顛末というわけさ」
やはり笑っていう天儀総司令に、俺はため息一つ。誰のせいでこうなったのか、天儀総司令はやはりわかっていない。
ことの始まりは、紅飛竜の艦隊に勝利してまもなくのことだ。
――義成。悪いがレティを出迎えてくれ。
という天儀総司令の言葉から。
「レティのやつは、この戦闘でヌナニア軍初のハイスコアを叩き出してきた。部隊での対艦ミサイル命中率10割という化け物記録だそうで、是非とも俺が直接いってねぎらってやりたいんだがあいにくと戦闘後の処理で忙しい。ストライダー部隊のときのように代行を頼む。義成お前が総司令官の代理として、レティを大いにねぎらってきてくれ」
俺は、ハイ、と敬礼。そして天儀総司令は、俺にこうアドバイスしてくれた。
「登場の仕方が肝心だぞ。ノックしたらすぐに入って、すぐに名乗って、やはりすぐに感無量というふうに激賞するんだ。間を開けたら台無しだからな。ほら、近衛連隊のロッカーのパスも教えてやる」
そして俺は、司令部区画のあるブリッジをでて通路を進みつつ、
――やはり天儀総司令は鉄腕レティに特別な気づかいを欠かさないようだ。
と思った。鉄腕レティは、わがままで独尊的でも優秀さは抜きんでている。
帰還したパイロットのいる場所となると……。出撃から帰還したパイロットのおおよその予定はこうだ。まず足をつけるのが機体を収納するハンガーがある格納庫。機体を降りて、待機室へいくか、負傷していればすぐに医務室。待機室でどんな戦闘をしたかなどの報告書の作成。場合によっては整備員から聞き取り。そして順番がまわってきたら医師による健康チェック。二足機のパイロットは母艦に戻ってから開放されるまで時間がかかる。
やはり天儀総司令のいうように、まだ鉄腕レティは待機室にいるだろう。
近衛連隊の機体の収容はもっぱら第二格納庫だ。そこに隣接して、専用のブリーフィングルームと待機室を与えられているので、待機室へいけばいい。
そして到着してみればわかりやすい。
『――近衛連隊――』
と、待機室の入り口のうえには習字ででかでかと書かれていた。いまどき筆と墨なのか? いびつであまり上手じゃないが、それが逆に味がある字だ。
俺は天儀総司令から教えたもらったパスを入力。
扉が音もなく開き、俺は部屋に一歩足を踏み入れつつ、
「失礼します。特命係の参月義成です。総司令官の代理として――」
そう挨拶したが、二歩目を踏みだすときには死を覚悟していた……。
――あ、お着替え中でしたよね。
俺の背後で自動扉が音もなく閉まり、カチャリとロックされる音がした。
音を聞きながら俺、はちょっと考えればわかりそうなことに、配慮をめぐらさなかったことに猛烈に反省。だが、なにもかもがもう遅い。
突然の俺という男の登場。着替え中の近衛連隊の女子隊員達からすれば思わぬ痴漢の侵入だったはずなのに、キャー! とか慌て恥ずかしがるようすもなく彼女たちは恐ろしく冷静なアマゾネスだった。
侵入者(俺)に対して、彼女達の動きは素早い――。
すぐに俺の背後の二人。
左右には適度に距離を保った体格のいい女子隊員が一人づつ。
そしてさらにその外周を数名が固めた。
俺は部屋に侵入して3秒で重包囲をうけた状態だ。
「こうも堂々と覗きをやりにきたやつは始めてだね」
俺の前に立った女子隊員がいった。身長は俺と同じぐらい。くせ毛で糸目。褐色の肌。見るからに野生児といったふうだ。パイロットスーツ越しにもわかる筋肉量の多い肉体。隊のなかでも武闘派といったところだろう。
その奥に見えたのは腕組みした鉄腕レティ。金髪翠眼の美貌も目を引くが、なにより左腕の義手が印象的。メタリックに輝くそれは彼女の美しさをより引き立てていた。
そんな鉄腕レティが少し首を振った。これが合図だったのか。瞬間、俺を囲んでいたき女性隊員達が、きわめて獰猛に素早く動いた――。
近衛連隊の戦力分類は、戦術〝強襲〟連隊。目標施設に二足機で乗り込み、コックピットから降りて、制圧戦をおこなう訓練もみっちりおこなわれている。つまり彼女達は、徒手空拳での殴り合いも得意だ。
襲いかかってくる女性隊員達。俺が人気男性アイドルで、彼女達は女性ファン。しかもとびきりの美人揃い、という状況なら嬉しいかもしれないが、現実は残酷だ。俺はアイドルでもないし、彼女達は黄色い声をあげるだけの少女じゃない。
――反撃を!
と俺は思ったが、やめた。天儀総司令の指示に従ったにしても、間違って入った俺に非があるし、彼女達は重要な戦力だ。ケガをさせてはまずい。とっさに防御姿勢。1発2発と拳が飛んできたが、インパクトをずらし衝撃を受け流した。殴られた衝撃で、そのままよろめいたが、これは効いている、という演技だ。だが、あまり意味はなかった。大ダメージをうけた素振りをすれば、多少は手加減されると思ったんだがな。
そして、俺はよろめいたところに足を払われ、そのまま、いわゆるフルボッコ状態。丸くうずくまった俺に降りそそぐのは、怒りと体重の乗った踵と、トーシュート気味のつま先での蹴り上げ。このときの俺と比べれば、サッカーボールやラグビーボールのほうがまだマシだ。
その後、騒ぎを聞きつけた林氷進介隊長に救出されるまで地獄の後分間をすごし、開放された俺はブリッジで天儀総司令に報告中というわけだ。
「鉄腕レティは、お前を見どころのある青年だといっていたぞ」
「ならば止めてくれればよかったと思います。あの部屋を支配していたのは間違いなく彼女です……」
「まあそうむくれるな。自分の非を認めて頑なに防御に徹したのが、あの気難し屋に好印象を与えたようだ。そして俺もレティと同意見だ。普通ならお前みたいな格闘術に優れたやつが、あんな戦いのプロ集団に襲いかかられたら自己防衛で反撃に転じる。俺はお前が殴り返してしまっていたら、レティとお前を天秤にかけることになったので困ったことになった」
白々しい、と俺は思った。俺と鉄腕レティを天秤にかけたなら、切られるのはだ。撃墜王の地位をほしいままにしている鉄腕レティと、ビギナーの名札がまだ取れないような俺では、戦力としての価値が違いすぎる。だが、腐ってそう思ったんじゃない。これは冷徹な戦力計算だ。……そう。いつのころから俺はいつだって処分される側だ。星系軍士官学校時代の嫌な思い出が、俺の心をチクリと刺した。
――義成。お前が悪い。
成績47番への教官からの審判は、つねに残酷だった。
「……そうですか」
と俺は、むくれていっていうと天儀総司令は、
――ああ――!
と爽やかに笑った。
瞬間、俺は薄暗い心に光が射し、肌に爽風を感じたような感覚にとらわれた
ああ、この人は俺を本当に心配してくれて――。
天儀総司令の表情を見た俺は、あのとき本当に良い選択肢をしたと心から思えた。反撃しなくてよかった。
そんな若干の感動を覚える義成の背後から声がした。
「こんにちはー、こんばんはー。アクセル・スレッドバーン只今到着。お、義成ぃ、負傷してんじゃねーか。小銃でも抱えて銃剣突撃でもしたのかってほどの無様さじゃねーか」
さらにアクセルの後ろから女子2人。花ノ美・タイガーベルとアバノア・S・ジャサクだ。2人は義成の負傷顔を見てから、さもおかしそうに笑った。
「あーら、そういえば顔面打撲して鼻血たらして総司令から〝感状〟(顕彰のこと)もらった男がいるらしいけど。義成あんた。そいつと同じ負傷仲間じゃない」
「おい、クソアマなんかいったか?」
とアクセルが険悪な目で花ノ美を睨んだが、花ノ美は悪びれない。
「あらー、私ってこのシックメタルに、なにかいったかしらーアバノア?」
「さぁ? そういえば花ノ美お姉さまわたくしも聞きましたの。トートゥゾネで傷一つない艦にいたシックメタルとかいう男が一人だけ負傷したという話を」
「おい、クソアマ二匹! それで呼ぶんじゃねえ。そいれは宇宙ゴリラどもが勝手につけたやつだ」
「あだ名ってそいういうもんなのよシックメタル」
「……チッ」
と舌打ちしたアクセルだったが、すぐ気づいたような顔をして、
「あ、そうだ。おめえもタイガーマムとかいうクソだせえのクルー達からもらってたじゃねーか」
攻撃に転じた。だが、この反撃は効果が薄いようだ。いわれた花ノ美は、むしろ誇らしげ笑みを浮かべていた。
「ざーんねん。私はそれ気に入ってるからー」
「クソがッ!」
やいのやいのと騒ぎだす三人。これがヌナニア星系軍のエリート機関である総参謀部所属なのだから情けない。義成はため息をついてから、
「三人とも総司令官の前だぞ。自重しろ!」
と一喝。アクセルは舌打ちし、花ノ美とアバノアはお淑やかにといったふうで黙り込んだ。
「静かになりました。天儀総司令。三人へお言葉をどうぞ」
「義成、俺の側近が板についてきたじゃないか」
「それほどでもありません」
俺は、あえて毅然とした態度いった。ただ俺自身もたしかに最近慣れてきたなとは思っていた。しかし、こうもうまくいくとはな。以前ならアクセルはもちろん。花ノ美もアバノアも俺がいくら怒鳴っても静かにはならなかったろう。
「三人ともご苦労だった。今回の君らの戦いぶりは俺だけでなく軍内でも高く評価されるだろう。花ノ美は、とくに紅飛竜戦での真の立役者だ。お前の戦力誘引が、会戦で決定的な勝利掴むきっかけとなった。感謝する」
「あ、えへへ。ありがとうございます。光栄です。で、そのぉー、厚かましいとは思うですがーお聞きしたいことがー」
顔を赤らめ花ノ美が身をよじらせながらいうさまは、同期生として見ていてみっともない。
――厚かましいと思うならいうな。
と俺は思ったが、こいつ画の強さは宇宙一だ。恐縮するように見せて、平気でいってのけるんだ。
「あの約束の方はー? あ、厚かましかったですよね。すみませんー私ったらー」
「いや、いい。戦果を挙げたら握手だったな。だが、俺は甘くない握手はまた次の機会だ」
「え、あー……。この程度の戦果じゃダメでしたかー。うぅ」
見る見る曇り顔になる花ノ美。見事にしょげかえったさまは可愛そうでもある。
――それにしても天儀総司令は厳しいな。
と俺は思った。口では花ノ美の誘引を絶賛したが、かなり採点は辛いようだ。
「ああ、握手ではダメだな。食事会だ。今夜、応接室に楽隊付きのディナーを用意させてある。予定を開けておけ」
「はい?」
「君の戦果は握手程度では釣り合わない、ということだ」
「え!? うそ! やったぁ!」
花ノ美が飛び上がらんばかりに喜べば、当然げんなりした顔になるのは、花ノ美を愛してやまないアバノアだ。
「ああ、花ノ美お姉さまそんなにお喜びになって……。総司令官さまとディナー。いい雰囲気になって、そのまま夜も一緒。ベッドインなんてことになってしまったら……。アッー! わたくし気が触れてしまいそう!」
「あ、アバノアなにいってんのよ! 私狙ってないからねそんなこと!」
「嘘です! 嘘です! お姉さまは嘘つきです! わたくしにはわかりますの!」
「ちょっとアバノアやめてよ。天儀総司令の前でへんなこというの。警戒されて、ぐっとお近づきになれるチャンスがなくなるじゃない!」
アバノアの口をふさごうとする花ノ美。抵抗するアバノア。まあ、2人と見てくれはいいので、一見すれば女子2人が絡み合う悪くはない絵面だ。だが、
――女子高生かこいつらは……
騒ぎだす2人に、俺はやれやれと心中でため息だ。また一喝して静かにさせる必要があるのか。だが、その必要はなかった。
「なにいってるアバノア。お前も一緒だ。ストライダー部隊でお前も花ノ美と同じぐらい活躍したろ。花ノ美だけだなんてしたら俺はとんでもないえこひいき野郎になってしまうじゃないか」
と天儀総司令がいったからだ。
「え、わたくしも?」
「え、アバノアも? いらない」
「お姉さま!?」
「あ、いえ、なんでもないわよ。嬉しいわ。私、慕ってくれる貴女と一緒に天儀総司令とディナーできるだなんて」
「お姉さまったら、そんな取ってつけたようにいって……。表情に、アンタは辞退しなさいよって、でてますのよ……」
「あらー。まさかー。そんなふうに思ってなんて、これっぽっちないわよー」
「絶対に辞退しませんの。ムキー!」
次に天儀総司令は、アクセルを見た。
「そしてアクセルお前にはだが」
「お、オレにも食事会かー? だが、勘弁してくれよ。その2人と同席だなんてまっぴらだぜぇ」
「安心しろ。それはない」
「へー、じゃあんだ。電子戦科と数人が乗った護衛艦を遠隔操作でつかったことへの叱責か?」
「それも違う」
「あー、なんだ。わかんねーなぁ。オレはてっきり怒られると思ったんだがなぁ」
「アクセルお前の戦果は見事につきるが、今回お前を表立て顕彰すると厄介なことになるので、お前には特別これだ」
そういって天儀総司令はおもむろに立ちあがるとアクセルへ近づいた。その真剣で、褒めようと思っているのか、怒っているのかわからない。
「お、おい、なんだよ!」
たじろぐアクエルに天儀総司令の腕が伸びた。
俺は、いや、俺だけでなく花ノ美もアバノアもアクエルが制裁を食らうと思った。それが拳によるものか、もっと動物的な。掴みかかって引き倒して殴りつけるようなものか、どちらかわからないが、とにかく天儀総司令のアクセルへの急接近の動きはそれほどに鋭かった。まさしく、
――絶対に逃さない。
という決意に満ちた白兵戦をおこなう兵士の動きだ。
が、天儀総司令は、
「よくやった。アクセル――」
といって力いっぱい抱きしめていた。
これには俺だけでなく、花ノ美もアバノアも驚きだ。そして一番驚いているのは熱烈なハグをうけているアクセルだろう。
「キメエ! やめろ! 離れろ!」
と騒いでいる。
そう。天儀総司令が、真剣な顔でアクセルへ肉薄したのは、ハグから逃げられないためだったわけだ。なるほど。まともに抱きつこうとすれ、アクセルは絶対に嫌がって逃げるからな。誰だって簡単に想像がつく。そしてアクセルときたら案の定の反応だったわけだ。
「はは、まるで母親に抱きしめられるのを恥ずかしがる男児じゃないか。よかったなアクセル。とびきり褒めてもらえてるじゃないか。俺はうらやましいぞ」
俺が笑っていっていうとアバノアと花ノ美も続いた。
「微笑ましいですのー」
「ずるいー!」
アクセルは、
「てめえら後でコロス!」
と真っ赤な顔で騒いでいるが、天儀総司令にバンバンと背中を叩かれながらなので、まったく間抜けな姿だ。
一通り抱きしめた天儀総司令は、満足したのか、
「うむ。義成はいいこといったな。アクセル、今後は俺をお母さんだと思ってくれていいぞ。悪いが俺は、お前の履歴はしっている。両親と死別して全寮制の軍の学校に入ったそうだな。俺はいまから君を息子として待遇する。アクセル今後も期待しているぞ。頑張ってくれ」
といってアクセルから離れた。アクセルからは、キメー! シネ! の叫び声だ。
そしてアクセルは顔を真赤にして息を切らせて、
「義成ぃ。てめえがいったことが一番ムカついたから覚えとけよ! こいつにお母さん宣言されたろ! 父親じゃなくてお母さんってなんだヨ!」
と俺にいってきたが、俺は相手にせずだ。そして、
―――しかし天儀総司令は格闘術もできるのか?
と思った。アクセルはかなり格闘術に優れてるのに、そんなアクセルへ抱きついて逃さないだなんて、かなりの格闘術の腕がなければ無理だ。アクセルのことだ。絶対に殴る蹴るで反撃をしようとしたはずだ。だが、天儀総司令は、ハグしつつもそういったアクセルの反撃を未然に制していたはずだ。でなければ、この狂犬に抱きついていることなど無理だ。
そしてアクセルから離れた天儀総司令は、
「三人へ申し伝えたいことがある。ついさっき総参謀部から勝利への祝電と、ある計画が瑞鶴にとどいた」
と伝えた。とたんに花ノ美とアバノアだけでなく、アクセルまでにも緊張の色が走った。
「総参謀部は、アヘッドセブンを司令官として第二戦線の珊瑚洋へ送り込むようにという提案を俺にしてきた」
途端に三人の顔色は険悪なものになった。
「チッ――!」
とアクセルが舌打ちし、アバノアと花ノ美も感想を口にした。
「あらー……」
「体のいい厄介払いね。アクセルあんたが総参謀部でやりたい放題するからよ。留守にしてる間に勝手に外に出されることに決められたじゃない」
「これは左遷ですのー」
「俺は、総司令官としてこれを受けることにした。たしかに、これはお前らの思う通りの意味が含まれたものでもある。だが、お前たちはすでに戦場で優秀さを示した。その優秀さを珊瑚洋でも発揮しろ」
天儀総司令の言葉に、三人が返事とともに敬礼した。アクセルだけは、やる気のない返事だったがな。
「三人とも泊地パラス・アテネには戻らず。ここで序列二位と合流して珊瑚洋へいけ」
敬礼をして花ノ美、アバノア、アクセルの三人が去った。
騒がしい三人がさり天儀総司令と俺の2人きり。少し離れたところでは、クルーたちが軍務をこなしている。その奥では、星守副官房がテキパキと支持をだす姿が見える。
「ところで義成。序列二位はどんなやつなんだ?」
と天儀総司令がポツリといった。もちろん俺と序列二位とは、星系軍士官学校の同期生だ。
「プライドですね」
「なんだそれは」
「序列第二位のジャスティン・スタージュンは、ライオンキングです」
「はー……」
天儀総司令は、俺の言葉にわかったのかわからないか判然としない反応をしただけで、それ以上は問いかけてこなかった。




