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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第7章 いにしえの大魔王編
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 サイファとベッカの駄兄妹もとい、馬鹿兄妹が俺に喧嘩を売ってきた。

 簡単にいうと、「いつものこと」だ。


 軽くあしらって終わりにすればいいのだが、俺たちは揃いも揃って、起源種に進化してしまっている。

 どのくらい強くなったのか、確かめたくなるのは普通のことだ……よな?


「ついでに策を巡らせられれば、一石二鳥だし」

 サイファの金棒を避けながら、そろそろいいかと思い始めた。


 俺を追ってきた跡を見ると、綺麗に木がなぎ倒されている。

「んじゃ、そろそろ反撃といこうかね」


 六角棍で金棒を受け止めて、そのまま押し返す。

「うおっ!?」

 サイファがのけぞった。


 思った通り、膂力は俺の方が勝っていた。

 両腕に魔素を溜めて、反撃をする。


 俺とサイファが打ち合ったら、周辺の木々が大変なことになった。

 いや、木だけじゃない。


 地面に大穴があいたり、岩が遠くにすっ飛んでいったりしている。

 岩なんか、頭に当たったら死ぬな。


「なるほど、今度から相当気をつけて戦わないと駄目だな」

 陣の外に出て良かった。狭い陣内だったら、死人が出たわ。


 さて、俺とサイファの戦いだが。

 見た目は一進一退の攻防に見える。


 だが、俺の方が進化に一日の長がある。もしくは、地力が勝っている。

 必死なサイファに比べて、俺にはまだ余裕があった。


 だからそっと近づいてくるベッカにも気がついていた。


「とったどぉ~!」

「とってねえよ!」


 ベッカがしてやったりの顔で後ろから襲いかかってきたので、馬よろしく、蹴り上げた。


「ぶへり」

 顎を蹴り上げられて、そのまま遠くへ……。


「へへーん」

 行かなかった。

 足と足を絡めて、堪えやがった。こいつも成長しているってことか。


「おらぁあああ!」

 俺がベッカの対処をしているいるうちに、サイファが調子づいてきた。


 扇風機のように武器を振り回してくるが、そうやって使うものじゃないぞ。


 だが、その速度は目を見張るものがある。

 一度当たれば連続攻撃をそのまま喰らってしまうだろう。


 あと、隙が無いので近づけない。

 サイファも俺がいない時に、激戦をくぐり抜けてきたのだろう。


 ただのオーガ族にはツラい戦いだったのではなかろうか。

「だが、負けてやるわけにはいかない」


 二対一を想定していたのだから、これくらいで沈んでいられない。

 全身に魔素を巡らせて、反撃を開始した。




 ここからは特筆することはない。

 ハッキリいって、馬鹿兄妹の猛攻は凄かった。


 そこらの軍団長なんか目じゃないんじゃねーの? と思うほどに強力な攻撃ばかりだ。

 しかもこれまで、俺が相手をしていたことで、戦いのセンスが磨かれている。


 格上を倒し続けてきたことも影響しているだろう。

 起源種へと進化したことも大きい。


 このまま戦い続ければ、「おまえたち、強くなったな」と涙ながらに語る名場面集が出来上がる。

 ……が、それは今回ない。


「死にさらせ!」

 一瞬の隙を突いて、俺の反撃。そして連打連打連打。


「ぐわわっ!」

「ぎゃぁぁぁ」


 存分に痛めつけた。

 やっぱり、丈夫になると違うな。


 俺は二人をボロクズのように丸めて、斜面へ蹴り出した。


「わああああああ」

「わああああああ」


 サイファとベッカは互いに抱き合うようにして、斜面を転がっていった。

 ミッションクリア。模擬戦はこれでお終いである。模擬戦というレベルをはるかに超えているが。


 二人とも下で目を回していることだろう。

 自力で陣に戻れるか分からない。


 まあ、動けなくても回収されるだろう。

 奴らの仕事は終わりだから、どうでもいい。


 俺は手近な岩に腰を下ろし、静かに佇む。

 黙って佇みつつ、周囲の気配を探る。


(うーん、来ないか)


 キョウカ軍の斥候が接触してくれれば儲けものと思ったが、そう甘くはないらしい。

 ということは、次の機会だな。


「くっそー、あいつら。今度会ったら殺してやる!!」


 と大声で叫んでみた。

 聞こえているかなー? 聞こえているよねー? といった感じだ。


 馬鹿兄妹の鍛錬にかこつけて、仲違いを演出してみた。

 これをキョウカ軍の斥候がみていれば、報告が上がるだろう。


 なにしろ山の中腹で大暴れしたのだ。

 敵味方の陣に激しい戦闘音と、舞い上がった土砂が見えたと思う。


「環境破壊だな」

 周囲一面、酷い有り様だ。


 俺はファルネーゼ将軍の陣を見た。

 あそこへ戻らないように移動しなければならない。


 かといって、キョウカ軍の近くに行くのは得策ではない。


(大回りして帰るか)


 斥候に見つからない距離まで離れるのは結構な手間だが、しょうがない。

 俺は両軍に近づかないようにしながら山を下りた。


「しかしあいつら、強くなったな」

 馬鹿兄妹だけでなく、俺もか。


 もしかしたら今、オーガ族の時代がやってきている?



 いや、ないか。



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