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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第6章 魔王際会編
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 蠱毒こどくというものがある。

 さまざまな毒虫を一カ所に閉じ込めて、互いに喰い合わせるやつだ。


「小魔王国群で行われているのは、まるで蠱毒だな」

 生き残るのはどこのだれか。

 そこで頂点を極めた者は、いったいどうなるのだろうか。


 小魔王メルヴィスの国は弱体化しきっている。

 四ヶ国から攻められたら、どれだけ持つか分からない。


「情報がこの国に入ってきた時点で終わっている可能性もあるな。……俺の村はどうなったか」


 考えたくないことだが、国内が蹂躙された可能性がある。

 起こりえる事実であるゆえ、じっとしていられない。


 ここを脱出して、仲間と合流する。そして国に帰る。

 最近、何度もそう考えるようになった。


 許可が得られなければ、魔王トラルザードに逆らうことになる。

 討伐されるか? するだろう。非情になれるからこそ魔王でいられるのだ。


「……よし、決めた」

「何を決めたんだ?」

 ヨルバがいた。


「俺はここを出て行く」

「ここを? おまえ、陛下の許可を取ったのか?」


「いや、だが俺はもうじっとしていられない」

「……それは拙いぞ」


 最近、ヨルバともかなり親しくなった。

 できれば事を荒立てたくない。


「悪いが今の話、聞かなかったことにしてくれ」

「聞かなかったって、どうするつもりだ?」


「魔王に直談判だな。直接会いに行く。それでだめなら強行突破だ」

「そんなことしたら死ぬぞ」


「さあて、それはどうかな。そういうわけで、お前は知らなかった。いいな」



 俺はヨルバの肩を叩いた。こいつはいい奴だ。

 直談判が成功失敗しようが、もうここに戻ることはない。ヨルバともお別れだ。


 俺は部屋に戻り、装備を身につけた。

 竜鱗の鎧と吸魔鉄の盾、武器は深海竜の太刀と六角棍だ。



 塔の周囲は高い壁に覆われていて、入り口には常時見張りが二人立っている。

 ヨルバによると、見張りは二人しかいないが、それを見張っている者もいるらしい。


 城と塔を結ぶ唯一の出入り口。

 鍵付きの重そうな扉をノックした。外側から鍵がかけられているのだ。


「どうした?」

 小窓が開いて、見張りの一人が顔を出した。


「魔王トラルザードに会いたい。ここを出る許可をもらいに行く」


「……話は聞いてない。許可なら、しかるべきときに出るだろう。戻れ」

 うん、予想通りだ。


「すまんが、離れていてくれるか」

「……どういうことだ?」


「扉を破壊する」

「……っと、待て! それは重大なっ」


 ――ドゴォ!


 見張りが扉とともに吹っ飛んだ。起き上がってくる気配がないので、気絶しただろう。

「何があった? がっ!?」


 もう一人の見張りに腹パンをする。


 二人の見張りの意識を刈り取った直後には、俺はもう囲まれていた。

 ヨルバの言った通りだ。ひそかに見張りが監視しているのは本当だった。行動が素早い。


「一応、手加減はするが、本気でいくぞ」

 自分で何を言っているのか分からない。


 多対一の場合、横か後ろの相手を狙うのが上策だ。

「こっちにはこない」と思って、安心している場合が多い。


「ぐふぇ!?」

 斜め後方の奴を蹴り上げ、すぐに走り始める。


「お、追えっ!」


 両足に魔素を流し、広い敷地を走り抜ける。

 魔王の城はいくつものブロックに分かれているため、どこかで止められる可能性が高い。


 まっすぐに目的地まで向かわずに、城内をかき回すように動くことにした。


 ――ピィイイ、ピィイイ!


 後方で、笛が吹かれた。

 俺を追ってくる連中が近づいてきている。


 広い場所を走るのは得策ではない。

「……ここから入るか」


 ここも城の一部だと思うが、みたことのない場所だ。

 ややみすぼらしい。


「これでひとまず撒けたかな」


 建物の中に入ると、自分がどこにいるか分からなくなる。

 その代わり、追っ手も俺を見つけられない。


 広い敷地にいると魔法が飛んでくるので、仕方ないが、あとは勘頼りだ。


「まあいいや。上に向かえばいいだろう」

 よく分からないが、それが正解のような気がする。


 城内をやみくもに走り回り、階段があったらそれを上る。

 さすがに見覚えのある場所はひとつもなかった。


「城の裏から入った感じだな」


 初回は正式な登城だったので、表口からだ。

 今回は、使用人が使う出入り口からだったと思う。


 階段をいくつか上って、笛の音が少ない方へ向かって進んだところ……。

「中庭? いや、空中庭園か?」


 城内の中心部だろう。広い場所に出た。

 そして目の前には……なぜかお目当ての人物がいた。


「魔王……」

 俺が直談判しようとした相手、魔王トラルザードが立っていた。


「セイトリーの手の平で転がされたことに気付いておったか?」

「やはりそうか。タイミングといい、言い方といい、何かあると思ったぜ」


「お前さんが抜け出すのも想定済みでのう。衛兵には動く順番も指定してあったのじゃ」

「……てぇことは、すべて仕込みか。俺はここに誘導された?」


「相変わらず理解が早いのう」

「長話に付き合うつもりはないぞ。俺はここを出て行く。国に帰るぜ」


「そう言うと思っておった。……で、ただでは帰さんと言ったら?」

「売られた喧嘩なら買うぜ」

 どうせそのつもりだろう。


「話が早くて助かる」

 トラルザードは笑った。


 衛兵は俺をここまで追い立てた。

 そして待っていたのは、この国の最強戦力。


 ここで何がおきるかなんて、ガキでも分かる。


「なあ、魔王さんや」

「なんじゃ?」


「結果まで予想通りと思うなよ」

 俺はニヤリと笑った。


 俺と魔王の戦い。第二ラウンドだ。



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