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ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
1章 私ストーカーだけど異世界転移しました
3/86

ストーカーとボロ宿

あらすじ:ここって『地球』じゃないんですか? うわーお(気絶)



前話で転移した場所の名前を「キタルダ領」から「ニシルダ領」に書き換えました。

すまぬすまぬ。




 ナツメが目を覚ますと、少しぼろぼろで腐りかけた木板の天井で作られた部屋にいた。どうやら寝ていたらしく、硬い木のベッドに布がかけられただけの物に横になっていた。


「はぁ、やっぱり夢じゃなかったのね……あー、腰痛い」


 はぁ、まさかここが地球ではないなんてねー……。

 いや、さっきの女の子、ハーミィちゃんが知らないだけで地球なのかもしれないけど……まぁ可能性は低いわねー。


 こういうのなんて言うんだったっけ? えっと、あー、異世界、転移……? そうそうそれね。最近本屋によく置かれてるやつねー。はは、こんなことになるんなら食わず嫌いならぬ、読まず嫌いせずに読めばよかったかも。私の本よりも売れてるからって、嫉妬に駆られて手を付けて無かったのが痛いわ……。


 あー、いや、あれは妄想の世界の話だし、読んでいたところで役に立つとは言い難いか? まぁ気にしないでおこう。うん。


 はぁ、そんなことより日本に帰りたい……。いつも通り公園でヒノリちゃんの柔らかな髪に包まってハスハスしたいわー。したことないけど……。

 というか私、そんな異世界にお出かけ服一つだけで放り出されたのツラ過ぎない? 生粋の日本人に生き残れるの? この世界の常識とか国の法律とか知らんよ?


 私の小説家として鍛えた細腕でどうすればいいって言うの? 一応、ある程度運動はしてたけどさ……やっぱりもう誰かに頼るしかないよね? 道端を歩く石油王に娶ってください! とか言うしかないよね?

 うん……てかハーミィちゃんは? もしや、こんなボロ宿に置いてかれたっ! うそっでしょ!?


 ナツメが焦って周囲を見渡すと、部屋の扉から声が聞こえてきた。


「ああ、起きたか」


 そう言って、ハーミィが部屋のドアを開けて入ってくる。


「ハーミィちゃん!」


 そんなハーミィにナツメはベッドから飛び上がって走って抱き着く。


「な、何いきなり飛びついてんだ!?」


「はぁ~、今の私にはハーミィちゃんしかいない事が分かったの~。ハーミィちゃんハーミィちゃんハーミィちゃ~ん。一生一緒に居てくれや~。そして私を養ってー、養女にしてー。いやむしろ、ハーミィちゃんが幼女になってー!」


 ハーミィの無い胸に頬を擦りつけて甘えた声で擦りつく。私はなりふり構ってられないのだ! 今の私にはハーミィちゃんしかいないのだよ!


「意味が分からんことを言うなよ! ……それよりナツメ、家はどこなんだ? ヒダカという家名を軽く調べたが、この周辺には無かったぞ。ナツメはどこから来たんだ?」


「え? どこからって……」


 ど、どうしよ……たぶん、ここは異世界で、私は日本から来たの! なんて言ってもたぶん信じないよね? 頭がおかしい女って置いていかれるかも……それは困る! だからと言って嘘を吐こうにも、この世界の地名も分かんないから安易に嘘も吐けない。ばれたら見捨てられるかもしんないしー……と、とりあえずここは!


「わ、忘れたー……っぽい?」


 忘れた事にしてこう! これなら若い女の子一人で危ないからな、って感じで記憶が戻るまで養ってくれそう! とっさに思いついたけどいい案かも。


「そ、そうなのか、記憶喪失ってやつか? それなら仕方ないな、ナツメの身元は調べてやるよ。私は探偵だからな」


 き、きたー、記憶喪失最強説! 困った時は記憶喪失。後でそれを題材に論文提出しておこう。いや、しないけど。でも記憶喪失と騙っておけば、たとえ私が浮浪者だとしても丁寧に扱ってくれそうね! よし、今度からも困ったらこの手を使おう。


 ふっふっふー、ではさっさとハーミィちゃんの自宅にご招待して貰おうかな! このボロ宿では碌に休めないしね。あー、腰痛かった。


「ありがとうございます。ハーミィちゃん! じゃあ――」

「じゃあナツメはこの宿で待機しててくれ、金は払ってあるから心配しなくていいぞ」


 ――えっ……?


 え? 待って!? え!

 私をこんなところに置いておくつもり? ダメだよハーミィちゃん、日本人はフカフカじゃないと生きていけないんだよ!? フカフカのモフモフのロリロリじゃないと生きていけないんだよ!? 私を、私をお家に連れてってー!


「ハーミィちゃんダメだよ! ここに居たら私泣いちゃう。寂しいし、硬いし、怖いよー。ハーミィちゃんのお傍に置いてー、連れてってー!」


 必死にお願いする。

 こんな怖い宿で夜を過ごすなんて無理だろ、常識的に考えろ! 絶対幽霊でるぞコレ、絶対隙間風寒いぞコレ、ハーミィちゃん様どうか御慈悲をぉぉおお!


「あー、それは無理だ。ナツメはこの宿に居ててくれ。あんたの家くらいすぐ見つけてやるさ。ナツメは家名も姿も特徴的だからな。たぶんすぐ調べられる。だから安心して待っててくれ」


 いやいやいやハーミィちゃん、そんな笑顔で言われても全然安心じゃないよ! こんな可愛い女の子(25)をこんな廃ビルよりも危険そうなボロ宿に置いておくなんて、それでも貴様探偵かー!? ドS級の悪魔じゃ! 鬼じゃ! ツルペタじゃー!


 くっ……、こうなったら致し方なし! 私の秘儀、『駄々を捏ねる』を使わざるを得ないようだな……。やたらと締め切りで脅してくるワンパターンな編集者たちを困らせた私の秘儀を今!


 ナツメはハーミィを逃がすまいと脚を抱え込むように掴む。脚は細くてスベスベしているけど、今はそんなことを気にしている暇は無し!


「ハーミィちゃぁあん、この宿に嫌だー! お家につーれーてってー! 暖かい布団でお寝んねさせてー!」


「ダ、ダメだって! 私の所属ギルドは場所が秘密で、部外者を連れて行くことは出来ないんだ! すまないがこれは規則だ」


 くっ! 強情なやつめ!

 この私の駄々捏ねが通じないとは、私の今の担当編集者と同レベルの頑固さだ……じゃなくて!


 くそー! 私とハーミィちゃんを困らせる秘密主義ギルドめー!

 ん、てかギルド? ってあれよね? 最近のファンタジーとかに出てくる組織みたいなやつ。

 フェ○リーテイルとかモンスターをハンターするのに出てくるそういう組織って本当にあるのね……ハーミィは探偵って言ってたし、探偵ギルドって感じかな? 探偵事務所ではないよね? 毛利小○郎じゃないよね?


 じゃなくて!


 とりあえず今ハーミィちゃんと離れちゃダメだ。だってこの世界家族いないし、永遠に身元なんてわからない! ヘタしたらずっとこのボロ宿で暮らすことになっちゃうよ! それだけはマジで勘弁。


 ナツメはハーミィの服の袖をがっちり掴んで懇願する。


「おーねーがーいー! 一生のお願いだからー!」


「だー、もう! 我儘が過ぎるぞ、少しは大人しくしてろ」


 ハーミィがナツメの身体を掴んでベッドに投げ飛ばす。ふわっとした感覚がした。中に浮いている少しの間、わーお、ハーミィちゃん力持ちだぁー、とか思った。その後の硬いベッドにドスンで腰打った。超痛い、泣く。


「まったく、また来るからそれまで大人しくしててくれよな!」


 そう言ってハーミィは扉を閉めて部屋を出ていった。


「やだー! せめてもふもふベッドじゃないとしぬー、あっ……」


 ハーミィが居なくなったので、駄々捏ねを止める。知らない土地に一人見捨てられた感ありまくりで、凄いショック……。


 だがまだ負けたわけではない! そう意気込んでナツメは次の作戦に移る。ナツメちゃんは諦めない子なのだ。そしてただの何も出来ない女の子(25)ではないのだ。


「よしハーミィちゃんを追いかけよう! ギルドまで尾行して無理やり押し入ってギルドで預かって貰おう。お手伝いとか雑用すれば、たぶん大丈夫、なはず! よし、そうと決まればすぐ出発だーい」


 そんな傍迷惑な考えを実行に移すべく、ナツメは部屋の扉を開いて宿屋の外まで勢いよく飛び出した!




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