生き方、ものまね、旨いもん
私は猫である。名はミケ。
冬越の家をさがし歩き、夏目家にたどり着いた。家主は碧という青年1人で、作家の後追い自殺を試みている最中だった。
「絶対に死なせないからにゃ」
憧れの作家が自殺して、ぽっかり空いたであろう穴に「にゃん」と入ってやろうと企てたのだ。どうせ碧の行動は衝動的なものであろう。なら、救ってやって良かったのだ。
……しかし。人の覚悟には、それなりの理屈があるもので。
両親の離婚や財産分与の話など、訊けば訊くほど難解な問題ばかりが出てくる。
「文章読み書きしてる暇なんて無いのではにゃぁか?」
私がそう言うと碧は、
「先生の文章で消えたい毎日を堪えていたんだよ」
と答えて溜息をつく。碧の書いた小説ノートも発見した。分厚いのが数十冊くらい。栞や付箋がたくさん挟まっている。
なるほど、私は教養猫なのですぐに理解した。文章には人の気持ちをどうこうする力がある、と。
しかしながら。
「下手な文章にゃん、ホントに先生の文章参考にしてるのかぁ?」
頁をめくるたびに出てくる平凡な文字の羅列にあくびが出た。優等生の書いたつまらなそうな毒のない文章だ。
例えば『君の心が澄んでいるから空は青いんだね』みたいなのがずっと続いている。
「んにゃー、結局何が言いたいのか伝わんねぇにゃん」
「うるさいな。猫には解らんよ」
「純文学ってこんなつまらんもんなの〜?」
喋っていたら噂好きのおばちゃんがご飯とミルクをしこたま持ってやってきた。
「うま! うまいにゃん!」
◇
……、
成り行きは話した。
無事に私は冬を超えることができた。碧の自殺を食い止めているうちに、お互いに情が湧いてきたのだ。
これからもずっと仲良くね! 碧!
ちょっとよろしくないテーマだったかもしれないと思い、強制的に終わらせました。失礼しました!




