詰んだ
無惨に倒れた緑小鬼の前でそいつは剣を振る動作を繰り返していた。
その時だった。
死体から黒いモヤモヤが出て来た。
その黒いモヤモヤがそいつの中にゆっくり、ゆっくりと入っていった。
黒いモヤモヤが入ってく中でそいつの姿は少しづつ変わっていった。
骨の周りに肉が生えていき、髪が生えてきた。
そして体は強くなり思考能力と自我を得た。
これはいわゆる進化だ。
一定以上の生物を殺すことと、条件を満たせば魔物は進化するのだ。
全てにおいて前の体を上回ることができる。
目は赤色になり髪はグレーになって言った。
そしてそいつは魔物の喰屍のような姿になっていった。
いや、違う。
そいつには元来の喰屍の特徴が無かった。
体が大きくないのだ。
そいつの体は細く華麗である。
そして喰屍は理性だけで動く。
食欲を満たすという目的で生物を襲う。
ベテラン冒険者だとしても一撃貰えば即死だ。
しかし攻撃が読みやすく分かりやすい反応をする。
そいつは思考能力を得たが同じ動作を繰り返していた。
体に慣れていないとしても喰屍だとしたら、すぐ死体を食いに行くだろう。
新種の魔物だ。
それもそうだ。
最弱の存在で他に生き残ることができるのはまずいない。
それにスケルトンで他に進化する奴など他にいるだろうか。
否、いないだろう。
そもそもダンジョンがスケルトンを作るのは稀だ。
雑魚だからだ。
いるだけ邪魔である。
そいつの生まれたダンジョンは様子見で生成しただけだ。
すぐに飽きていたが。
これだけ劇的に変化したというのにそいつは同じ動作を繰り返すことなどあるだろうか?
思考能力を得たのなら何かしら動きに変化はあってもいいのではないだろうか?
思考能力を得たとしても使えないのだろうか?
たくさんの疑問が湧いてくる。
普通の魔物が進化したら、それ相応の思考能力が可能になるはずだ。
そいつは新種であると同時にイレギュラーでもある。
しかし魔物という枠組みにいることは明白でもある。
進化時にはしっかりとした変化があるし、ダンジョンで生まれた存在だからだ。
思考をしてない。
なんでだ。
思考の仕方が分からないのか?
思考能力は考えようとしなかったら発動しない。
そいうことか。
自我が幼いんだ。
スケルトンは最初から自我がなかった。
つまり自我が0の状態からある状態に変わった。
殆どの魔物はもとから自我がある状態であり、そこから進化して自我というものがよりはっきりとする。
だから自我が幼く思考能力が使えない。
つまり詰みだ。
また、馬鹿な緑小鬼が目の前から襲ってくることがあるだろうか?
ない。
そんな幸運あるはずが無い。
体が肉に覆われたことにより様々な魔物が襲ってくるだろう。
しかもここは森の中。
多種多様な魔物がいる。
終わりだ。




