哀れなゴブリン
そいつは魔骨だった。
魔物社会の底辺の中の底辺。
『最弱』、その言葉が最も適している。
考える脳もなく、ただ持っているボロボロな剣をゆっくり振るう動作を繰り返す。
そいつはダンジョンで生まれた。
ダンジョンは自衛のために魔物同士で殺し合わせる。
進化を促し駒として人間から身を護る。
そんな場所でそいつは過ごした。
1年、2年どんどん月日が過ぎていった。
だがそいつは死ななかった。
なぜならダンジョンはまだ人間に発見されていなかったのと、ダンジョンは強い魔物同士で殺し合わせてより強い魔物を作っていたからだ。
スケルトンになんて興味を示さなかった。
そんな中、そいつはダンジョンの最上層でずっと同じ動作を繰り返していた。
そして動作をしていくに連れて少しずつ、少しずつ微妙に位置がずれていった。
幸運なことにずれて進んだところはダンジョンの外だった。
薄暗いダンジョンと大きく違う景色に動揺すること無くただ淡々とそいつは同じ動作を繰り返していた。
何も考えることなく進んでいった。
ダンジョンはそいつが出たことに気づいたが、何も思わなかった。
たかがスケルトンだ。
ダンジョンにおいてさほど痛手ではなかった。
そいつはどんどんと進んでいった。
進んでいくごとに動作は少しずつ変わって行き、前へ前へと動くたびに微妙に前進する速度が上がっていった。
その頃にはそいつはゆっくりな動作ではなく早く剣を振るような動作に変わっていた。
ある日のことだった。
緑小鬼がそいつを見つけた。
そして緑小鬼はそいつに攻撃した。
本来だったら勝てることなどなかった。
緑小鬼は魔物の中では弱い。
しかしスケルトンよりかは幾分ましな強さだ。
緑小鬼はそいつが剣を振り下ろした瞬間を狙った。
スケルトンより強いといっても、横や後ろから攻撃をするという知恵がない。
そいつは幸運だった。
この緑小鬼が特別馬鹿だったからだ。
攻撃するタイミングを間違え、剣を振る下ろすだけの動作によって死んだ。
哀れだ。




