絶望の力
無理だ・・・・勝てっこない・・・・
わかってしまった
理解してしまった
こいつには今の俺たちでは絶対に勝てない
それどころか傷一つつけることはできないだろう
今の俺たちにできることは死ぬまであがくことだけなのだ
「ナナシ・・・・」
ヒカリが心配そうにこちらを見ている
タウラスはゆっくりと、だが確実にこちらに歩いてきている
「ヒカリ・・・・」
俺は今なんと言ったのだろうか?
自分でもわからなかった
だが、それを聞いたヒカリはにっこりと微笑むと
「大丈夫、ナナシだけは私が守るから」
そう言ってタウラスの方へと視線を向ける
(やめろ!)
そう叫びたかった
しかし、声が出なかった
そして、俺は今から始まる絶望的な闘い・・・いや、一方的な蹂躙を想像し更に震えてしまった
※ ヒカリ視点
弱々しい目でこちらを見るナナシが
「ヒカリ・・・・ごめん」
という言葉を発した
その言葉で私は察してしまった
ナナシはタウラスと自分との圧倒的な差に気づいてしまったのだと
そして、心が折れてしまった
そして、私とナナシの死を確信して謝ったのだ
逆に私はその言葉で覚悟した
ナナシだけはなんとしても助ける
例え私が死んでしまったとしても
ナナシだけを助けるなら勝算はあったから
だから私は無理やり笑顔を浮かべ
「大丈夫、ナナシだけは私が守るから」
とナナシに言う
まだ、何か言おうとしているナナシ
でも、私はこれ以上何かを言われる前に奴を、タウラスを見据えた
これ以上話していると私自身の覚悟が揺らぎそうだったから
私はタウラスの方へと素早くファイアーボールを放つ
タウラスは動きを止めてこちらを見る
「お前自らが来てくれるとは手間が省けた」
お前自ら・・・・ということは狙いは最初から私だったということか・・・・
それならやはり勝算は高い
もし私が死んでも結界ギリギリのところまで奴をおびき寄せればナナシのことは忘れてくれるかもしれない
私はその一縷の望みにかけるしかないのだ
私はタウラスに向かってファイアーボールを放ち続けた
残りMPはもう残り3割をきっている
ファイアーボールでいうと約10発
だが、十分距離は引き離した
後はタウラスに向かって全力をぶつけるのみ
私はマジックブーストのアクティブスキルを使用し威力を増加したファイアーボールをタウラスにぶつける
少しだけ傷がついたタウラスが
「流石だな」
と呟く
「ああぁああぁあああ!」
私は残った魔力を全てこめてファイアーボールに込める
マジックブーストのレベルが上がって使えるようになったスキル魔術暴走を使い撃ち込んだ
「むっ!」
残り1割程度の魔力だったが並の魔物相手なら爆散する威力だ
流石のタウラスも少しばかりは手傷を負ったらしい
「くっ、ククククク面白いではないか」
「こっ、これで倒れてくれるとは思わなかったけど少し自身無くしちゃうわね・・・」
もうMPもないし、私の耐久力ではタウラスの1撃に耐えることは難しいはずだ
タウラスは私を持ち上げると一つ聞いた
「最後に言い残すことはあるか?魔王様にもお前だけはなるべく苦しまないように殺せと言われている」
どういうこと?
まぁ、それも関係ないか。私はもう死ぬんだから
「さっきあんたが打ち倒した彼だけは・・・・助けて・・・・・」
「良いだろう・・・・あの者の命を今回に限り奪わぬことを約束しよう」
所詮口約束だがそれだけでも心が少しだけでも軽くなった
「では・・・・去らばだ・・・・」
その言葉と共に私は目を閉じた
※ナナシ視点
ヒカリがタウラスに捕まった
このままじゃ・・・・・ヒカリが・・・・
俺の脳裏にヒカリがぐちゃぐちゃになってしまう光景が浮かぶ
嫌だ!そんなの嫌だ!
でも、俺には・・・・ヒカリを助けるだけの力がない
「嫌だ・・・・嫌だ・・・・・絶対に・・・嫌だ!!」
俺はヒカリを助けたい
そう呟いた時に視界の右下に何かが浮かんだ
条件クリアにつき絆力上昇のレベルが上昇
新アクティブスキル
『絆共鳴』発現
条件
絆を繋いだ相手を失うことの拒絶
圧倒的実力差を持つ者に対しての戦闘経験
絆共鳴
絆を繋いだ相手と共鳴を起こし相手の力の一部を自分の力として使用が可能
俺は目の前の画面を見て最後の望みをかけた