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転生最弱ポメラニアン、魔王を倒す  作者: キサラギトシ
第七章 ポメラニアンの苦悩
131/144

131 サバトラ VS ロイエン

 グシャバリガゴーン! と鎌倉の早朝に大音声が響き渡った。

 僕はちょっとビクッとしたけど、くーちゃんさんが派手に門をぶっ壊してくれたんニャと思って、すぐに塀に飛び乗ったニャ。


 いちいち頭の中でもニャーニャー言うのはめんどいから、ここからは普通に言うニャ。


 見ると、玄関から数匹の犬たちが飛び出してきている。進化してサモエドになった大型犬のモフが、簡単に犬たちを蹴散らすのを横目で見ながら、僕は隙を見て玄関から屋敷に侵入した。


 この屋敷は、以前に2度侵入したことがある。間取りは頭の中に入っているし、どこにロイエンさんがいるのか、大体予想はついていた。だから僕はまっすぐにその部屋に向かう。


 途中、慌てた様子の真王教の信者たちが数人、玄関に走っていくのが見えた。どうやら人間たちは4〜5人程度しかいないようだ。

 まあ、どうでもいい。モフとくーちゃんさんが負けるなんて想像できないし、それは人間が相手でもまず間違いない。


 俺はただ、愛するロイエンさんを探して助け出すだけだニャア!


 真王教のマークが掲げてある大広間を抜け、奥の部屋へ。そこは以前、僕とモフが電話をした、事務室みたいな部屋がある。ロイエンさんが信者と一緒に寝ているわけはないから、きっとその部屋にいるだろう。


 ドアノブに飛びつき、部屋を開ける。冬の早朝ということもあり、中は真っ暗で冷え冷えとしていた。


「ロイエンさん、いますか? サバトラです。助けに来ましたよ?」


 動物の気配は、ない。猫はその気になれば、気配を消すことができる。太古の昔から狩りをして生き延びてきた猫たちは、闇に乗じて狩りをするのはお手のものだ。


 だけど、甘い二ャ、ロイエンさん。

 僕は、君の大ファンだぜ? 君のニオイ、完璧に覚えているぜ?

 気配はまったくないけど、ロイエンさんのニオイがこの部屋からしているぜ?


 と、顔を背けたその時。


「グミャアアアア!」


 攻撃の声と共に、爪が僕の顔を掠める。気づくのが一瞬遅かったら、片目を(えぐ)られていただろう。

 僕は急いで近くのテーブルに飛び乗ると、同じようにソファに飛び乗る影が見える。


 暗闇に光る黄色と青色の目は怒りで吊り上がっている。全身の毛は逆立ち、尻尾もピンと上を向いている。間違いなくロイエンさんだった。


「ロイエンさん、サバトラです!」

「ブミャアア!」


 答えは動物語ではなかった。これは……完全に意識がない。というか、やはり操られているようだった。美しいオッドアイの目はそのままだが正気を失っているかのように釣り上がり完全に臨戦体制の怒りの顔になっていた。それでももう一度だけ呼びかけてみる。


「ロイエンさん、あなたを助けに来ました!」


 ロイエンさんは短く体を溜めると跳躍し、左足で目元を狙って攻撃してきた。僕が想像していたより、ずっと速い。避けられない、と僕は咄嗟に右足でロイエンさんの足を払う。

 だけど、失敗だった。すぐに右足で僕の左目を狙ってきた。目をやられるよりは、と僕は頭をロイエンさんの右足に当てる。

 ザクッ、という音と激痛がして、僕の頭から血が吹き出した。ロイエンさんは一旦後ろに飛び退き、再び体勢を低くして唸る。


 ダメだ、スピード勝負じゃ地区のリーダーを任されているようなロイエンさんに叶うはずがない。

 ならば、と僕は首に巻かれている黄色のバンダナをチラリと見る。汐田師匠、僕に力を! と僕は次の作戦を考えた。


 だけどロイエンさんの次の攻撃は僕に考える隙を与えない。飛びかかって来ながら、今度は両手を大きく開き、両足で僕の目を狙ってきた。


 よし、今だ! 僕はロイエンさんの両足を挟むように手を合わせながら、頭をスウェイさせる。


「ロイエンさん、ごめん!」


 僕はそのまま両足をつかんで、体を捻りながら一本背負いをした。僕に飛びかかった勢いが残っていたロイエンさんは綺麗に宙を舞うと、背中からビターンと床に落下した。


 普段、高所から落ちてもバランスをとって着地できる僕たち猫は、このように背中から落ちることに慣れてはいない。ロイエンさんは床で苦しそうにもがいている。

 ロイエンさんをこれ以上苦しませたくない。こんな時は、汐田師匠に教わったあの技だ!


(スピ公と猫ちゃん。もし相手の気を失わせたいなら、この技だ。本来は合気道で使う技でないんだが、タイマンの実戦で相手に隙ができた時には、意外と使えるから覚えておけ!)


 僕はロイエンさんの後ろに回り込み、首に両足を回すと頸動脈を締め付けた。プロレスの技ではチョークスリーパーと言うらしい。

 ギニャー! と僕の両足の間でもがくロイエンさんだけど、僕は構わず頸動脈を閉め続ける。すると15秒ほどでロイエンさんはぐったりと気絶した。


「……ハァ、ハァ、や、やったニャ」


 ゆかりぐったりと横たわるロイエンさんは、不謹慎かもしれないけどすごくセクシーだった。それにいま気づいたんだけど、すごく良いニオイがしている。僕の心をとろけさせる、素敵な香りだった。僕はフラフラとロイエンさんに顔を近づけるけど……


「ハッ、こんなことしてる場合じゃないニャ」


 念のためにロイエンさんの4本の足を僕のバンダナで縛り、目が覚めても動けないようにしたあと、僕は屋敷の庭に向かう。


「モフとくーちゃんがいて負けることなんて、絶対ないと思うんだけどニャ」


 だけど屋敷の玄関から飛び出した僕が見た光景は、驚くべきものだったのニャ!

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