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転生最弱ポメラニアン、魔王を倒す  作者: キサラギトシ
第七章 ポメラニアンの苦悩
130/144

130 因縁の対決

 50メートルほど先には、真王教が所有する豪邸。庭と屋敷の周りは高い壁に阻まれ、まるで大名屋敷のような威容を湛えている。

 その門は自動開閉式のシャッターになっていて、中は全く見えない。以前にこの屋敷にこっそり侵入したときとまったく変わりはない。


「さてくーちゃん、どうしようか?」

「しょうめんから がつんとぶつかる ぶっこわす」

「はっ、力任せだねぇくーちゃん。作戦も何もあったもんじゃないけど、逆にいいよ!」

「いっぱつで ぶっこわす」

「サバトラはどうする?」


 サバトラは普段のおちゃらけた雰囲気と違い、厳しい眼差しだ。その頭の中はたぶんロイエンさんを助け出すことしか考えていないだろう。


「モフたちが正面突破するタイミングで、塀からこっそり侵入するニャ。魔王軍の目を引きつけて欲しい二ャ」

「意外に冷静だな。わかった、せいぜい派手に暴れてやるよ」


 そこから俺たちは二手に別れる。門には防犯カメラがあるため、サバトラは手前から姿を隠し、俺とくーちゃんは堂々と正門と対峙する。

 俺は大きく息を吸い込み、防犯カメラに向かって声を張り上げた。


「魔王軍! 湘南第4地区の仕返しに来たぞ!」


 朝4時と言うタイミング。きっと襲撃で疲れて眠っている動物や信者も多いだろう。先手必勝だ。

 くーちゃんは門から一旦3メートルほど下がると反転し、全力で門のシャッターに向かい突進。グシャバリガゴーン! と闇を切り裂く大音声と共に、シャッターはひしゃげて原型を無くしていた。久々に見るぜ、くーちゃんのフルパワー!


 その間、俺は『進化の秘宝』を口に咥えていた。

 体の奥底が熱く(たぎ)り、内側が燃えるように熱くなり、体の表面全体の皮膚が破れるように痛む。そして。


「ギャオーーーーーーン!」


 俺は小型犬のポメラニアンから、大型犬「サモエド」へと進化した。3度目ともなると、この感覚にも慣れたものだ。

 シャッターが鉄屑と化した瞬間、サモエドの体をした俺は門から屋敷の庭に突入する。


 シャッターがぶち破れた音で慌てふためいて目覚めたのだろうフラフラと頼りない走り方の動物10匹程度が玄関から出てくる。魔王軍もまさか襲撃したその夜のうちに襲われるとは思ってもいなかっただろうし、大チャンスだ。


 俺は全力でその動物たちに突入する。1匹目の茶色い犬の突撃を(かわ)すと、振り向きざま左足で胴体にパンチをくらわす。


 ギャン! という声を上げて1匹目が地面を転がった。すかさず白犬と黒犬が両サイドから口を大きく開けて俺の胴体を狙っているのを確認すると、直前で体を躱しつつ尻尾で黒犬の体の向きを白犬に向けた。


「キャインッ!」「キャン!」と互いの顔をぶつけてふらつく2匹の犬に飛びかかり、両足で次々と蹴り出して2匹を沈黙させた。

 よし3匹完了だ、と横目で辺りの状況を見ると、玄関から堂々と尻尾を立てて歩いてくる茶色と白の犬が見えた。


 やはり間違いない。元は俺たち動物軍の仲間だった、豆之助だ。


 その豆之助の姿を認めたか、門の方向から黒と白の小さくて可愛らしいチワワが尻尾をふりふりしながら悠然と歩いてくる。

 もちろん俺たち動物軍の『戦士』くーちゃんだ。


 2匹の犬は互いを敵と認め、悠然と近づいた。間隔が1メートルほどで動きを止め、睨み合う。


 あと5匹程度残っていた犬たちは一旦戦うのをやめ、俺と距離をとった。俺もこの2匹の対決を見届けるべく、その場に座る。

 やがて言葉を発したのは、くーちゃんが先だった。


「ひさしぶりだ おまえ なぜまおうぐんに いる?」


 そうか、くーちゃんが豆之助に会うのは六本木のペットショップ以来なのか。

 豆之助は睨みを利かせた顔をフッと緩めると、くーちゃんに答えた。


「懐かしいんだよ、乱暴チワワ。お前とモフが来ること、僕は知っていたんだよ」


 知っていた、なぜ? と思ったが、そういえば。豆之助の奴は魔王のチカラのひとつで『予知夢』を持っていたと言っていたことを思い出す。

 待てよ、だとするならば。

 今回の襲撃のこと、豆之助は知っていたことになる……罠か?


「ねぇ、知ってる? 僕、乱暴チワワくんのことがこの世で一番嫌いなんだよ」

「……わからない なぜだ?」

「お前、ペットショップで弱かった俺を散々いじめてくれたよね? 僕はすごく悔しかったんだよ。子犬だったけど、お前を殺したいと毎晩思ってたんだよ」


 そうだ、確か知り合った時、豆之助はそんなことを言っていたことを思い出す。


「だから、僕はカールの誘いに乗って魔王軍に入ったんだよ。お前を殺すために、魔王のチカラを与えてもらったんだよ」

「待て、豆之助」


 俺はそこで口を挟んだ。何か、辻褄が合わない気がしたのだ。


「お前、動物軍横浜支部でカールにやられた後、操られて俺と戦ったことを覚えているか?」

「うるさいんだよ、モフ。そんなの覚えているに決まってるのだよ。お前は相変わらず頭が弱いんだよ」

「だったら、なぜ今、魔王軍にいるんだ? お前の話し方を聞いていると、カールに操られているようには見えないぞ?」


 豆之助は済ました顔で答える。


「あの時はともかく、今は自分の意思で魔王軍にいるんだよ。理由は頭の悪い君でもわかるよね。さっき言ったからね」

「くーちゃんを、倒したいのか?」

「正解なんだよ。だから予知夢を見ても、誰にも報告してないんだよ。コイツを殺すのをカールに邪魔されたくないんだよ」


 言うなり、豆之助は大きく息を吸い込んだ。


「くーちゃん、豆之助の声は危険だ!」


 直後、周囲に豆之助の遠吠えが響き渡る。


「ウォーーーーーン!」


 俺ですら、耳を塞がないと危険な、超音波のような大音声。だが横目で見たくーちゃんは、直撃を間一髪で一回転して躱すと、豆之助に向かってダッシュした。


 豆之助もすぐに応戦体制を取る。くーちゃんは頭を低く下げ、豆之助に突進した。くーちゃんのパワーで豆之助がぶっ飛ぶ、と思いきや、豆之助はその場で大ジャンプをして突進を躱す。


 くーちゃんはザザーッと音を立てて止まり、向き直る。豆之助は着地するなり低く構え、牙を剥き出しにして唸り声を上げる。


 くーちゃんはパワーこそ誰にも負けないが、突進以外の攻撃は見たことがない。対する豆之助も、超音波のようなあの声以外の攻撃を俺は知らない。


 豆之助があの超音波攻撃をする前には、息を吸い込むという予備動作が必要だ。その間にくーちゃんに突進されたらひとたまりもない。


 だがくーちゃんの突進はスピードがそれほどあるわけでもなく、さっきのように躱されてしまうとどうしようもない。

 つまり、2匹とも決め手となる攻撃が無いのだ。


 だが豆之助は低い体勢をとったまま、ニヤリと笑った。


「やはりこの犬、力だけのアホ犬なんだよ。次の攻撃で、お前は死ぬことになるんだよ」


 身構えるくーちゃん。

 次の瞬間、俺の視界から豆之助が消えた。

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