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おおかみちゃん  作者: 功野 涼し
過去も未来も夢見て

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4.ひび割れた傷口に潤いが染み込む

 初めてのメッセージが来てから約に2週間。


 あの日返信が来て以来、毎日メッセージをやり取りしていてる。


 メッセージの内容は他愛のない会話が中心だが、つまらない毎日に潤いをもたらしてくれ仕事にも活力的に打ち込め、定時で帰るときに上司から言われる嫌味も家族から冷たくされることも苦にならない。


 今は早く家の物置へと帰り、寝袋の中でメッセージのやり取りをするのが楽しみで仕方がない。あの狭く暗い空間が心地良いくらいだ。


 夕食は牛丼屋で済ませて家に帰ると、リビングにも行かずにシャワーを浴びるとすぐに寝袋の中へと潜り込む。


 スマホにメッセージありのアイコンを確認し、(はや)る気持ちを押さえながらタップする。


 ここ最近のやり取りで分かったことは、相手の名前は春日井沙耶(かすがいさや)、18歳の高校生で大学受験を控えているらしい。

 大学受験の不安や、高校生活の悩みなんかを聞いてくれる人を探していたらしいが、周囲に頼れる大人はいないし、人生経験豊富な年上を探してパパ活のアプリに登録をしたらしい。


 悩みを聞いてもらうついでにお小遣いも稼げればなんて下心もあったが、体目的のメッセージばかりでうんざりしていたところに俺からメッセージが来て、この人がダメなら辞めようと、最後にしようと思っていたらしい。


 何度かのやり取りで、春日井沙耶は俺が信用できる人だと言ってくれた。


『信用できる』なんて言葉を、他人から言ってもらった言われたのはいつ以来だろうか? いや、そもそも言われたことがあっただろうか?


 家庭で必要とされず、職場でも特別な存在という訳でもなく、俺がいなくなっても会社は困らないであろう。その程度の存在俺はその言葉を受けて心の中が熱くなった。

 体の中に血が通っていることを思い出した俺は、春日井沙耶のやり取りが楽しくて彼女の他愛のない日常や、センター試験(大学入学共通テスト)や大学生活への不安に対して古い記憶を引っ張り出してメッセージを送る。


 今日はどんな会話になるのだろうかと、楽しみにしながら開いたメッセージを読む為に動かしていた目が止まる。


『直接会って話しませんか?』


 ここ数年間低速で一定のリズムしか刻んでいなかった俺の心臓が大きく、あり得ないくらい速く鼓動を打ち始める。

 駆け巡る血が俺の体を熱くして、噴き出す汗は自分が生きているんだってことを思い出させてくれる。


 春日井沙耶とのやり取りは、俺に生きてる実感を与えてくれているのだとこのとき知るのだった。


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