表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼天英雄  作者: 小波
24/73

第二十四話

「このような、人間として生きられぬ人々が何故懸命に生きるための努力をするのか」

 弦之介は打ちのめされた気がした。

 所詮己は将軍の弟。何不自由なく生きてきた人間だ。

 己の苦労などここで生活する人々の苦しみの万分の一にも満たぬ。

「若君、このような者達もいるということです。民の目線となって考えるべきです。今すべきことは国の内に潜む憂いを払うことではないのですか」

「お侍さま」

 声をかけてきたのは幼児かと思うほど小さく痩せて腹の膨れた少年だった。

 割れて汚い器を差し出し、何かお恵みをと言う。

 顔は目鼻がどこにあるのか分からないほど黒く汚れ、纏っているのは襤褸のような着物である。

 無邪気な笑顔でお恵みを、お恵みをと言うのがたまらなく憐れであった。

「あいにく食べ物は持ち合わせていない。これで何か買いなさい」

 そう言って弦之介は多少の銭をやった。

「こんなもの食えん!やぱっり侍は人でなしじゃ。おらたちを扱き使うだけ使ってっ!あんたらのせいで父ちゃんは死んでしもうたっ!!」

小千太(こせんた)おやめ!あんた、お武家様になんてことを」

 甲高い声を出して走ってきたのはこの少年の姉であろう。

「ああ、お武家様。弟がご無礼を・・・どうぞ私の首を斬ってくださいませ」

 犬のように這い蹲って泣き叫ぶ少女を見やり弦之介は当惑した。

「別によい、俺の方に非がある。どうか頭を上げてくれ」

「首はいらぬと言うのですか!ならば何でも致します故弟を見逃してくださいまし。畜生のように這いますから!泥だんごでも馬糞でも食べますから!どうか、どうかっ!!」

 少女は半ば狂ったように叫び続けた。そんな姉の姿を悔し涙を流しながら見続ける弟。

 弦之介は気が遠くなりそうになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ