第二十二話
城に程近い料亭に五人はいた。
弦之介は響四郎、右近の二人に聖花を紹介した。
言葉の不便はあるだろうが、そんなものは時間をかけて少しずつ学べばよいことであった。
「右近、花妹は俺が支那にいる時から世話になっている娘だ。これからも何かと行動を共にするだろう。どうか彼女を仲間と認め君の素顔を見せてやってほしい」
「それは命令でございますか」
右近は切れるような視線で弦之介を見た。
「命令が良いと言うのなら命令だ」
彼女は小さく頷くと、ついと立ち上がり奥へ入っていった。しばらくして戻ってきた彼女は鮮やかな紫苑色の着物を纏い黒髪をきりりと後ろで結った姿であった。
冷たい目元が美しい娘だ。
自分の席に静かに座ると聖花の方を向き、改めて己の名を告げた。
お会いできてうれしい、と聖花もにっこりと笑って応えた。
史との私闘から大陸での生活を経て今に至るまでを弦之介は簡単に語って聞かせた。黒田と右近は静かに聞き、響四郎はこまめに相槌を打つ。ここ数年来感じることのなかった安らぎであった。以前と異なっている点は支那人である聖花がいることである。
「この町も外国人が目立つようになった。これも史殿のお陰なのだろう。他国の文化を取り入れることは良いことだ」
ふっと目を和ませ外を見やる弦之介を黒田や右近等はためらいがちに見た。
「弦之介様、ご入城なされませ。史およびその一派を野放しにしておくおつもりですかっ」
右近はたまりかねて叫んだ。