第二十一話
その時、鳥声とともに一羽の鷹が飛んできた。
大きな鷹であった。あまりの大きさに少年は逃げてしまったが四郎は見えぬ目を空に向け、鷹が降りてくるのを待った。
手頃な枝に留まった鷹は甲高い声で叫ぶ。
目の見えぬ彼に文など送っても無駄なので鳥が直に伝えるのだ。
だが、彼は鳥の言葉を解することができるわけではない。正確に言えば感じるのだ。彼の目となってくれるものは自然界に存在するすべてである。
鳥の言葉を感じとった響四郎はしっかりした足取りで港に向けて駆けだした。
盲人とは思えぬほどの速さで彼は駆けた。
友であり兄であり主君と思い定めた人が帰ってきたのだ。知らずに出てくる笑みも急いてしまう足取りも仕方のないことであった。
巷はやはりたくさんの商人や外国船を見に来る人々でいっぱいだった。
響四郎は人とぶつからないようにしながら弦之介らを探した。
「響四郎」
耳朶をくすぐる懐かしい声だった。
「若君・・・」
彼は声のした方を見た。
懐かしい、温かな感覚がそこにあった。
「若君っ!!」
飛び込んできた小柄な若者を弦之介はしっかりと抱き留めた。
「響・・・すまなかった、心配かけたな」
「ああ・・・、一瞬とはいえ若君を死んだものと思ってしまった僕が情けない」
「若君が死ぬはずなかろうが小僧」
黒田はにっと笑ったがいきなり
「おっ」
と言った。
「右近か」
いつの間にそこに現れたのか、白髯の老人が静かに立っていた。
「お久しゅうございまする若君」
しわがれてはいるが低く落ち着いた声で老人は言った。
「皆揃ったようだな」
弦之介はにこりと笑った。




