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みんなで仲良くおやすみ


「おー結構広い部屋だのう!」


 夜。もはや外は日を落としている中、俺は三人に引きずられるようにして宿までやってきた。

 リーラの言う通り部屋はかなり広い。そして中心には四人がなんとかギリギリで入るかと思わせる大きさのベッドが一つ。

 ……本当にベッドが一つしかない。

 と言うかこの部屋、本当に宿か? 宿って、無駄に広い部屋の中心に巨大なベットが鎮座しているようなものだったか?


「で、並びはどうするのだ?」


 俺の悩みなどどこ吹く風。リーラが寝る並びについて問うが、正直三人で仲良く寝てくれたら良い。


「俺は端っこでいいぞ……」


 なんなら床でも構わない。


「マスターは真ん中ですから、後は両隣ですか」

「聞いてる?」


 勝手に話を進めないでくれ。


「我はみんなで寝るのが楽しみだからな、最悪どこでもいいぞ」


 現状唯一の救いだと考えるリーラは、別段俺の隣などこだわりが無さそうで助かる。


「ロロはご主人さまと一緒ー!」


「おっと」


 元気いっぱいにロロが抱きついてきて、ぽふん、とベッドの中心へとロロを抱えたまま倒れ込む。

 そう言えば、ロロも力の調整には大分慣れたようだ。

 頑張ったんだろうな。そう考えると、ついベッドの中心で横になったままロロの頭を撫でてしまう。


「……これは良いですね」


 それを見ていたミオンが、瞳をキラリと光らせ不穏な呟きを漏らした。


「え……?」


 そうして、そそくさと俺の右側へと横になる。


「なるほど、完璧な布陣であるな」


 それに対し、リーラも左へと続く。


「ちょっと……」


 完成したその光景は、両隣をミオンとリーラ。上にロロを抱き抱える構図。


「おい! 寝返りどころか身動き一つ取れないぞ!」


 これでは手足を伸ばすどころの話じゃない。俺の存在意義が抱き枕と変わらないじゃないか。


「大丈夫です」


「何が?」


 横で、満足そうに腕へと絡みついているミオン。どう考えてもまともな返答が来るとは思えないが、一応聞いてみる。


「これでみんな幸せになれます」


 ……そうか、それは何よりだ。だがなミオン。


「俺は動けずに辛いんだが」


 その幸せの中に、俺は入っているのか?


「この状況が不幸なんですか?」


 そ、その聞き方はずるい。美少女に囲まれて不幸だと主張する男が、果たして存在するのか。


「いや……そこまでは言わないが……」


 でも、この寝辛さだけは如何ともし難い。


「今日は諦めろ主。明日以降は我が飽きたら一人減るぞ」


「そ、そうか」


 一人リーラだけが、俺へと助け舟を出してくれる。

 もしかしたら明日からは、多少マシになる事もあるかも――。


「まあ、この心地よさに飽きが来るとは到底思えないがな」


「……」


 助け舟は泥舟だったようで、リーラも頬を軽く染めミオンの真似をして腕にしがみついた。

 これにて、完全に俺を捕らえる布陣が完成する。

 両腕をガッチリホールドされて、上ではロロが胸に顔を埋め気持ちよさそうに喉を鳴らしていた。


「にゅふー♪」


「……ロロさん気持ち良さそうですね」


 そんな光景を見て、ミオンが少しだけ興味を示してしまったようだ。


「ご主人さまあったかいー」


 ……なんだか、嫌な予感がするんだが。


「明日は私がそこでも良いですか?」


「えー」


 やっぱりと言うか、予想通りミオンは場所の交代を願い出た。


「……」


 俺は黙って成り行きを見守る。しかし心では、頼むから拒否してくれと願うばかり。


「うーん……いいよー」


「やった」


 そしてこれまた予想通り、俺の願いが叶うことはないのだ。


「なぜか本人に通さず話が勝手に進んでるんだが」


 諦め半分でぽつりと漏らした一言だったが、それはミオンの耳に届いたようで視線が途端に不機嫌なものへと変わる。


「……私が上に乗るのは嫌ですか?」


「へ?」


 まずい。何か変なスイッチを入れてしまったか?


「私が重いからですか?」


「いや……」


 まあ正直それはある。ロロでさえ結構圧迫されているのは事実なのだから。

 しかし、この状態でミオンが上だと重すぎる……なんて言ったら、どうなるかは馬鹿でも分かる。


「それともロロさん以外は嫌ということですか?」


「……お好きにしてください」


 黙っていたらいつまでも追求は続くだろう。それならもう、認めよう。

 さようなら、俺の安眠。


「主よ。この手の話題の時はどうせ認める事になるのだから、黙って受け入れていた方が墓穴を掘らずに済むぞ」


 横ではそのやり取りを半眼で見つめるリーラが、良い加減学べとばかりに言う。


「そうだな……」


 仲間になって浅いリーラでさえ、もう分かっているのだ。俺は喋れば喋るだけ不利になっていくのだと。

 もう口を閉ざそう。俺は何も知らない。早く寝て明日がさっさと来てしまえば良い。


「と言うわけで、明後日は我がそこだな」


 そう考え瞳を閉じた俺の耳には、何故かリーラまでも参戦している声が届く。


「……」


 あれ? リーラさん?

 もしかして、俺に横槍を入れさせない為に喋るなと言いました?


「ローテションにしましょうか」


「いっそ全員で、主の上でも良いかも知れないぞ」


「そうですね」


 リーラとミオンが、不穏な計画を立てているような気がする。


「あれ、ご主人さま泣いてるー?」


「……うん。嬉しくて涙が出るんだ……」


 みんなに好かれている。こんな嬉しいことはない。

 なのでこの涙は、恐らく感涙の涙なのだ。決して、明日以降の絶望に身を震わせている訳ではない。



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