二十レベル、到達
あの後、しばらく抱きついていたロロが落ち着くのを待ち、ようやく歩みを進める事ができた。
そんな俺達は三人並んで歩いており、俺とミオン、その中心には俺たちと手を繋いでご機嫌な様子のロロ。
「それにしても、このままだといつ獣人の着くかわからないな」
これから先も、あんな連中にいちいち絡まれて足を止めていては、時間を浪費する一方だ。
つい、そうぼやいてしまう。
「そんなに、目的地は遠いんですか?」
隣を歩くミオンは、こちらに顔を向けてそう聞いてくる。
「直線距離で言えばそうでもないんだ。ただ、国境の境にデカい山があってな」
「なるほど」
人間の国であるここと、獣人の国は意外にも隣り合わせになっている。
しかしその道中には巨大な山脈があり、越えて進むのはかなり骨が折れる。
「まあ、だからこそ戦争が起こらず助かっているんだけどな」
とくに人間は、他の種族と比べ遥かに戦闘能力が低い。その上彼ら獣人は、山や森といった環境でこそ力を発揮できる種族だ。
そんな状態で山脈を挟み戦争をしたのでは、人間達に勝ち目はほとんど無いと言ってもいいだろう。
「では、そこの山を突っ切ってしまえばいいのでは?」
「そう簡単に言うけどな……」
そこまで考え、ふと、足を止めた。
「いや待て、ロロ」
少し、気になる事があった。
「なに―?」
「ロロが誘拐されたのはいつだ?」
思い出そうとしているのか、ロロは何もない上空を見つめる。
「わかんないけど、おなかがすくぐらいのじかん」
「……そうか」
やはりそうだ。先程の奴らは、国境を越え誘拐をするには明らかに軽装過ぎた。それに子供とはいえ、人一人を目立たないように運ぶには軽く三日はかかるだろう。
しかし話を聞くに、ロロは誘拐されてここまで来るのに一日と経っていないことが窺える。
「多分、抜け道があるな」
ショートカットか、抜け穴のようなものがあるに違いない。
「山道を探そう。隠されていたら、審美眼が見つけてくれるはずだ」
懐からモノクルを取り出し、街道を逸れ、山道の方へと進路を変更する。
「わかりました」
「わかったー」
元気に返事をするロロの手を、離さないようにしっかりと握り直して、茂みへと入っていった。
♢
「……あいつ、死んだか」
怪しいと思う場所を探し回っていると、頭に電気が走るような痺れが起こる。……これは、スキル獲得の感覚。ようやくレベルが二十へと上がった。
今は特に魔物を倒していた訳でもない。なのに何故、レベルが上がったのか。
恐らく先程の誘拐犯の男が、死んだのだろう。それが原因でレベルが上がった。
……決まりだ。人を殺しても、レベルは上がる。
「マスター、なにか言いましたか?」
「いや、なんでもない」
こんな事、わざわざ二人に言うべきことじゃない。
それより、早くスキルの確認をしよう。
そう思い、探索を一旦二人に任せ俺はその場で目を閉じる。自身の中に眠るスキルを確認するために。
「新しいスキルは……【絶対防壁】だと?」
目を開け、今感じたスキルの気配に疑問を持つ。
「どういうことだ?」
【絶対防壁】は、魔王戦の時にも使った俺の切り札とも言っていいスキルだ。しかし。
「これは、前回六十レベルで手に入れたスキルだぞ」
そう。前回の世界では、かなり後半で獲得したはずのスキルが、今回は二十レベルで入手できてしまった。
「防御を極端に跳ね上げるこのスキルは、【反撃】と相性が良い……」
【絶対防壁】と【反撃】。これを同時に併用してしまえば、ほとんどの魔物は敵無しになる可能性すらある組み合わせだろう。
「それはありがたいが……」
何故、こんな低レベルでこのスキルを入手できたのか。
【反撃】の時にも思ったが、もしかするとスキルの入手にはレベルが上がった時の心理状態が影響するのだろうか。
あの時は、勇者達への復讐を誓い攻撃手段を望んでいた。そして今は……。
「まあ悩んでても仕方ない。今は抜け道を探そう」
首を振り、顔を上げるとちょうどミオンとロロが戻ってくる所だった。




