誰がために
一か月後。俺は運気を養うためにとある島で療養していた。
「あ、うんこさーん!」
「あぁ……今日もきたのか」
彼女の名はリリィ。付近に住んでいる幼女。
うんこである俺にも分け隔てなく接してくれる数少ない人間族だ。
「えへへ。つんつーん。つんつーん」
「あはは。こらこら。つっつくのはいいけどひっくり返すのはやめなさい」
「うふふ。つんつーん。つんつーん」
「こら。くすぐったい。あはは。あはははは」
彼女とは特にとりとめのない話をした。
「おじいちゃんね~。バカなんだよ~。こないだなんて風邪ひいてないのに「ワシ風邪ひいたかもしれんのぅ」とか言い出してね~。バカなんだよ~」
「お、おぅ……」
「〇〇〇って言うお店行った事ある~?」
「いや、行った事ないな。どんなお店?」
「あのねー。〇〇〇はリリィが考えたお店なんだけどね~」
「そ、そうか。じゃあまだ出来てないんだな……」
いつもみたいに幼女特有の会話が成立してんだかしてないんだかよくわからんやり取りをしていると、彼女が急に悲しそうな顔になる。
「あのね。ママが言うんだけどね。ここにもこわーいまおーぐんって言うのがくるんだって。だからね、今度お引越ししないといけないの」
「…………そうなのか」
「ねぇ、うんこさん。リリィがお引越ししてもうんこさん会いに来てくれる?」
ちょっと泣きそうな顔をしている。
会いにいくのは簡単だ。でも俺は出来ればこの砂浜で会いたいんだ。
だって、こんなに海も空も綺麗なんだもの。
「………………リリィちゃん」
「なぁに?」
「リリィちゃん、この島好き?」
「うん。好きだよ! お友達いるしねぇ。砂浜でいっぱい走っていいんだよ!」
ニコっと歯の欠けた笑顔。
「そっか。じゃあ俺がそのまおーぐんやっつけてやるよ。そしたらもうお引越ししなくていい」
「ほんと!? ほんとにそんな事できるの!?」
表情を作れないのが残念だ。だがきっと伝わってるだろう。
それに……カッコつけたところで所詮うんこだしな。
「出来るさ。なんたって俺は……世界一強いうんこなんだぜ」




