第四章6 『作戦会議』
【2017年10月30日改稿。読みやすく改良致しました】
勇者一行はウィズダム古城の魔王の配下を倒すべく、現地で交戦準備を進める義勇兵団と合流した。
そこで名前のやたら長い団長と出会い、彼とも打ち解ける。
テントを借りて一夜を無事に過ごし、明朝、勇者一行は団長に呼ばれ、一際大きな作戦会議用のテントにやって来ていた。
「――というわけで、勇者様が我らの作戦に加わることとなった」
会議の開始に先立ち、長い人は僕たちを紹介する。
すると、他の連中も声を上げ、興奮しているようだ。
「さすが勇者様ですよ」
隣に座るモルちゃんが猛り狂う連中を見て口にする。
けど、まったく嬉しくない。
野郎に好かれても需要ないしなぁ……。どうせなら、もっとピチピチの町娘とか……。
「ほんと、こんなのに期待するなんて馬鹿ね」
「エリカちゃん、小声でも聞こえてるよ」
「あっそ……」
エリカちゃんは相変わらずだった。
その後、少しばかり騒がしい状況が続いたものの、ようやく落ち着きを取り戻して作戦会議が始まった。
「であるからして、やはりウィズダム古城の歴史は古く、一昔前までは堅牢な城砦としての機能もあり、今回の作戦でも――」
「……」
しかし、長い団長の話が長すぎてなんのこっちゃわからん。
他の団員たちは頷きながら聞いているようだが、こちらの勇者一行はあまり真剣ではない。
「モルちゃん、内容わかった?」
「簡単ですよ。今はどうでもいい古城の歴史を話してますが、作戦の内容を要約すれば明日にでも仕掛けようとのことです」
「あ、明日ですの?!」
「「……?」」
僕とモルちゃんが話していると、シュネーさんが突然驚いた。
連中は気付かず馬鹿に長い会議を続けているようで、僕らしか反応しない。
「シュネー、どうしたの?」
エリカちゃんが話しかけると、シュネーさんは少し焦った雰囲気を醸し出し、目を泳がせている。
「あ、あの、明日というのは遅すぎる気がして」
「どういうこと?」
「その、魔物相手に悠長では……」
シュネーさんは見るからに変だ。
そして、嘘をついている。僕には見え見えだったが、それはきっと他の二人から見ても不自然だった。
「シュネー、詳しく話してくれないと……」
「そ、そうですね。なんといいますか、その――」
「勇者様」
「……?」
シュネーさんとエリカちゃんが話しているのを見て、モルちゃんが小声で話しかけてくる。
「あの人、嘘ついてるです?」
「え?」
「いつぞやの夜、勇者様は女性の嘘は見抜けるって自慢げに言ってたです」
「自慢げにって……」
「で、どうです?」
そういやモルちゃんに言ってたか……。まいったなぁ。
「いや、どうやら本当みたいだよ」
僕がそう言うと、モルちゃんは驚いて目を丸くする。
そしてチラリとシュネーさんを見てから呟くように一言。
「……意外ですよ」
この言葉からして、モルちゃんから見ても黒だろう。そんな彼女をかばったとなれば、こういった反応になるのかもしれない。
別に今回はシュネーさんを庇ったわけじゃないけど……なんか、あの感じの嘘は無視できないんだよなぁ。
「よし。僕が何とかするよ」
「は? あんた、何言って――」
ガタリ。
エリカちゃんの言葉は最後まで聞かず、わざとらしく音を立てながら席を立つ。
すると、延々と王国史を教授していた長い人は話を中断し、こちらを見てくる。当然、他の連中も僕に注目した。
「勇者様、どうなされた?」
「提案がある。今から攻め落とそう」
「え……?」
僕の言葉に、会議は一気にどよめいた。けど、関係ない。
「相手は古城にいるんだろう? しかも、まだ攻めてこないときた。なら、先にぶっぱなせばいいじゃん!! 外に大砲もあったし、こっちには優秀な魔法使いもいる。古城の外から一気に仕掛ければ混乱するだろ」
「勇者様、勝手にわたくしを作戦に加えないでほしいです」
「い、今はそうするしかないんだって。後で言うこと聞くから、我慢してよ」
「……ふふ。了解ですよ」
言い過ぎた気がする。
でもまぁ、いいか。今はとりあえず、連中を説得するしかないってな。
「大砲と魔法……いや、しかし……そう簡単に」
長い人も含め、連中は考えているようだが、ここに一言付け加えればいいんだよな。
「勇者がついてるんだ。負けるはずないだろ?」
そう言ってニヤリと笑って見せると、全員が目を丸くしていた。
「……! そうだ。何も恐れることはなかったか。みな、それでいいな!!」
『おう!!』
よし、簡単に引っ掛かったな。
彼らは言葉通り、準備を開始する。
「あんた、勝算あるの?」
「ないけど、言った通り」
「魔物の罠かもしれないわよ。わざと噂を流して、攻めさせようとする。連中は狡猾だから、考えられる」
え、マジ? それは考えてなかった……。
「あんな無策で魔物と戦うように誘導して……あんたのせいで何人もの死人が出るかもしれないのよ? あんた、責任とれるの?」
責任……とれるわけないじゃん。でもそれって、負けなきゃいいってことだよな。
「あれぇ? もしやエリカちゃん、自信ないの? あんなに魔王倒すって息巻いてたのに?」
簡単な挑発を試みると、エリカちゃんは顔を真っ赤にしてあからさまに怒る。
「は? んなわけないじゃない! いくわよ!!」
やっぱ、こういう所はチョロいなぁ。
「勇者様、いいんです?」
「ああ……。シュネーさん、これでいいかな?」
シュネーさんを見ると、彼女は頭を下げてくる。
「ありがとう、ございます。勇者様……」
「ま、いいってことよ」
モルちゃんはジッとシュネーさんを見てから、こちらもジトッとみてきたが、あえて無視する。
彼女の礼の意味なんか知らん。
だけど、女の子が困ってたら助ける。それは僕の信念だからね。
――と、カッコつけていると、長い人がこちらへと駆け足でやってくる。
「勇者様、一つお願いがあるのですが」
「ん? どったの?」
「今回の作戦、勇者一行様に、先陣をお願いできませぬか? そうしていただければ、士気も上がるでしょう」
「は?」
こうして、クズ勇者はレベル上げもせず、魔王の配下との戦いにおいて先陣を任されることとなった。
今更、断ることもできず、頷くしかなかった。
「勇者様、報いをさっそく受けたです」
「ぐぬぅ……」




