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社畜魔王とクズ勇者  作者: 新増レン
第六章 「社畜魔王、愛を知る」
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第六章23 『舞踏会の告白』



 魔王としての役目をルシファーから聞いた社畜魔王。

 自身をこの世界に呼んだ天界の存在を知ったわけだが、今はまだ、どうすることもできない。

 まずは、魔界を統一する。

 そう意気込み、社畜魔王はルシファーに堕天使の悲願の成就を約束した。




 サタナキアの交渉が終了し、数日が経過した。

 俺達は魔王城に戻り、デュラハンさんとミノ子さん、そして大勢の魔物の歓迎を受け、無事に魔王城へと帰ってくることができた。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 そして現在――延期されていた舞踏会が開催され、魔王城の大ホールは大賑わいだった。大ホールは元々、このようなパーティーなどの催しのために作られているらしく、華々しく飾り付けられた空間はシャンデリアの明かりを伴って輝いていた。


 かなりの広さを誇る場所なのだが、参加者がサタナキアとの交渉後から増えたらしく、どこを見ても魔物というカオス。

 しかしながら、皆、ドレスアップして出席し、賑やかに踊ったり話したり食べたり飲んだりと、大勢が参加してとても雰囲気が良い。

 こうして見ると、ほとんどが人間と変わりなく、魔物であることを疑いそうだ。

 もしかすると、堕天使たちは人の協力を得やすいように、あえて人に似せた魔物ばかり生み出したのかもしれないな。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「では魔王様、ありがとうございましたぁ」


「ああ。楽しんでくれ」


 人形サイズの人型の魔物、コロボックルが戻っていくのを見届け、肩の力を抜く。


「魔王様、お疲れ様です」


 そう言って黒のドレスに身を包んだサキさんが飲み物を持ってきてくれた。スレンダーな体系と足の長さ、金色の髪がマッチしていて、とても綺麗だ。どう見ても令嬢感が漂っている。


「サキさん……ありがとう」


 舞踏会も魔王にとっては仕事場だったけれど、それはそれで楽しくて、今のコロボックル族で参加している全種族と話したことになる。

 こうして話す機会はなかったから、舞踏会を開催して正解だと思った。


 しかし、さすがに疲れてきたな。


「少し休もうかな」


「それでしたら、あちらの隅に護衛衆も控えていますし、そちらに移動しましょうか?」


「うん、そうするよ」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 サキさんと共に舞踏会上の隅に移動する。そこにはおなじくドレスアップした護衛衆の面々が揃っていて、ホームに戻ってきた感覚だった。


「お疲れ様です、魔王様」


「うん、ありがとうセイレちゃん」


 半人半魚のセイレちゃんはいつものような半裸に近い姿ではなく、貝殻の胸パッドや透明な羽衣を脱ぎ捨て、綺麗な桃色のドレスを着ており、スカートから見え隠れする下半身の尾びれと鱗はいつも以上に光っていた。


 他のメンバーも、舞踏会ということもあってドレスアップしている。


 フェニちゃんは真紅の衣装、雪女さんは白無垢ではなく花の模様が入った山吹色の和服、ミノ子さんはホルスタインビキニではなくて、ちゃんとした水色のドレスで相変わらず迫力のある胸の谷間を携えている。


 何より驚いたのは、首無し騎士のデュラハンさんが、いつも大事そうに抱えている頭を持たずに甲冑を脱ぎ捨てて俺と似たようなタキシードに身を包んでいたことだ。

 それを見るだけでも胸板の厚さや腕の太さなどから、恐ろしく屈強な戦士だとわかってしまう。


「これ美味しいね、ミノタウロス様」

「そうだね、フェニちゃん。こっちも美味しいよ?」

「久しぶりに魔酒を味わったな」

「あらデュラハン様、グラスが空よ?」


 護衛衆の面々も、どうやら舞踏会を楽しんでいるようでなによりだった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 舞踏会は自由に盛り上がり、俺はセイレちゃんと一緒に食事をしていた。

 魔王の身体は食事を必要としないって以前魔王本人が言ってたが、味覚はあるらしく、意味はなくとも美味しいものを食べると幸せになる。


「これ、美味しいね」

「はい。人魚好みです」

「なにそれ、ふふっ」


 そんな風に二人で楽しく話していると、唐突に雪女さんが話しかけてくる。


「そういえばサキュバス様、何か話したいことがあると仰っていませんでした?」


「え?」


「ちょ、何言ってんのよ!」


 雪女さんの言葉にサキさんは顔を真っ赤にして怒った。


「チャンスだと思ったのですけれど。そんなふうにセイレーン様を恨みがましく見つめているようですし」


「……そ、それは」


 そう言ってサキさんはこちらを見てくる。

 そして咳払いを一つすると、こちらを真剣に見てきた。


「ま、魔王様……セイレーンの発言は承知の上で、どうしても、申し上げたいことがありまして」


 そう言ってサキさんはこちらを真紅の瞳で真剣に見つめてくる。

 雪女さん達の視線を受けながら、サキさんは口を開いた。



「私も魔王様のことが……好きです。どうか、私を妻にしてください!!」



「え……」



「まあ、サキュバス様ったら、大胆ですわね」


「さ、サキュバス様まで……ど、どうしたら」


「ふむ。魔王様を不幸にするようなら許さんが……」


「これって告白? わぁい! 告白だお!」


「サキュバス様……」


 護衛衆たちから漏れる感想を聞き、俺は頭が混乱してきた。

 既にセイレちゃんから告白を受けた身でありながら、サキさんからも告白されてしまった。


 間違いなく、人生で一番モテている。

 モテ期の到来だ……。


 そうして慌てふためいていると、雪女さんがこちらにやってくる。


「魔王様、これは決める必要がありますわよ?」


「ど、どういうこと?」


「あなた様は今、サキュバス様とセイレーンから求婚されていますの」


「求婚……って、え!?」


 ただ告白されただけで、魔界では求婚になるのか?!

 聞いてないよ、そんなの!


「ど、どうすればいいのかな」


「魔王ともなれば、妻を娶ることは当然の行い。何人でも可能ですわ。ですから二人を選ぶのも問題ありませんわよ」


「本気?」


「本気ですわ」


 なにそれ、完全に魔王じゃないか……。

 あ、魔王だった。


「しかし、決める必要があるのは順位……正室となれるものは一人のみですのよ」


 正室って、時代劇のまんまだな……大河ドラマとかで聞いたことのある単語だ。

 ん、待てよ?


「つまり俺は、セイレちゃんとサキさんの二人から正室……を選ぶってこと?」


「ええ。お気に召さなければ――」


「そんなことないよ! で、でも、二人はそれでいいの?」


「はい。魔王様の妻になれるのであれば。その、出来れば正室を希望したいですけど、妻にしていただくだけで、これ以上ない喜びです」


「えと、自分はその……ずっと一緒にいたいだけ、です。えっと、できれば、正室がいいです」


 二人とも……。

 彼女たちの想いは本物だ。俺が怖気づくわけにはいかない。

 しかしどうすればいいんだ。完全にハーレムを形成しようとしている。

 これじゃあ勇者と変わらないじゃないか。


「……」


 でもまあ、いいのかな。

 あいつもそうしてたし、なにより魔王の特権だよな……。人間だったころは、一夫多妻なんて不可能だし。いや、こっちの世界では普通なのか?


 とりあえず、ここでいますぐに決めることは出来そうになかった。


「ちゃんと考えて決めるってことで、いいかな? 必ず、結論は出すから」


「「はい!」」


 そう言うと二人は頷き、納得してくれた。

 こうして俺は人生でのモテ期を逃し、第二の魔王生でモテ期が到来した。






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